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渓流釣り2

 マナもお茶を飲んで一息つく。

「良いお孫さんじゃないですか」

「でも妻には怒られっぱなしさ。長時間のゲームなんて今まで無かったからなぁ」

 恥ずかしそうに頭をかきながら、ハハハと笑うのを見たマナは、一つの提案をしてみる。

「では、奥様をゲームに誘ってみてはいかがですか? 私、喫茶店やすらぎと言うお店を開いているんです。他にもいろいろな人が色々なお店をやっているので、見て回るのも楽しいですよ」


「確かに、そういうのもいいかもしれないね。今度進妻にも進めてみるよ。お茶を有り難う」

 そういって立ち上がり、最後に一つ。と人差指を立てる。

「釣りは忍耐力じゃない。リラックスだ。肩の力を抜いて、慌てず騒がずゆっくりと楽しむことだ。六十年越しに気づいた事だよ」

 気楽に手を振りながらログアウトする男性にマナは頭を下げる。


 そして、教えてもらったアドバイスを元に釣り糸を垂らしてみる。

「小刻みに、弱った虫を演出。ゆっくりと落ち着いて」

 一回目、魚は喰い付かなかった。すぐさま二回目を投げる。同じようにリールを巻いていると、クンッと竿がしなった。

 針が外れないように、魚の動きに合わせ竿を左右に動かす。リールを巻いていくと魚影が確認できる。


 そしてついに岩魚を釣り上げる事に成功した。

「やったー!!」

 ピチピチと跳ねる岩魚をバケツの中に入れ、もう一度挑戦する。だんだんとコツを掴んできたのか、二匹目を釣り上げた。

「もっと釣りたいですけど、食べきれないですね」

 釣った魚は食べる。食べきれない量は釣らない。それを守り、早速二匹の岩魚を調理する。


 まず初めに端末から完成品の【たき火】を取り出し、火を付ける。

 そして、端末からまな板と包丁を取り出し、大きく安定した岩の上にまな板を置く。そしてバケツから岩魚を一匹取り出し、うろこを落とし内臓とエラを取り出す。それに串を打ち塩をまんべんなく振る。もう一匹も同じように捌き串を打ち塩を振る。

 下ごしらえが終わったので、たき火で焼き始める。

 火に近すぎると、皮だけ焼けて身が生焼けになってしまうので、遠火でじっくりと火を通していく。


 パチパチと薪が燃えるのを眺めて落ち着くマナ。魚の方も皮が部分部分に焦げ、脂がにじみ出てくるほどに焼けて来た。

「そろそろ良いでしょうかね」

 一つを手に取る。湯気が立ち上り香りが鼻孔をくすぐる。

「美味しそぉ。いただきます」

 岩魚の背中からかぶりつく。皮はパリパリで中身はふっくら、皮に付いている塩が淡白な白身に味を付けてゆく。


 背中側を食べ終え腹側を食べる。腹側は脂が多いので、背中の肉質とはまた違う美味しさがある。

 あっという間に一匹を食べきり、もう一匹に手を付ける。

「ふぅ、美味しかった」

 岩魚を二匹とも食べ終えたマナは、満足感に満たされる。一応やすらぎは休業にしてあるが、渓流釣りも楽しかったし、塩焼きも美味しかった。何となく、その楽しさを引きずったまま、店で働きたくなったのである。


 まだ日は高い。急に開店しても大丈夫だろうと考え、ゴミを片付け帰り支度を整える。

「今度、お店に来てくれたら嬉しいなぁ」

 いつの日か、夫婦そろって喫茶店やすらぎに訪れてくれる事を思いながら、渓流を後にした。


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