渓流釣り1
サラサラと流れる渓流。そこにマナはいた。ベストを着こみ、サングラスをかけ、釣り糸を垂らしていた。
ここは【渓流釣り】で有名な【サリア渓流】。釣りが解禁になったので、岩魚を釣りに人が集まっていた。
マナも朝早くからこの渓流に訪れてリールを巻いていた。
渓流に限らず釣りの基本は我慢。幾度もフライという虫を模した針を投げ込み、リールを巻いて手元に針を戻す。この時の動きが、魚から見ると水面に落ちた虫に見えるため、魚が釣れる。
魚が喰い付くまで何度も何度も投げては巻くを繰り返していた。
しかし、朝から糸を垂らしているにも関わらず一匹も釣れない状況が続いている。
「針の種類がいけないんでしょうか」
そう判断し別の形の針を付けてみる。そして、また投げてみるが一向に魚は釣れない。
さすがに諦めかけた時、
「お嬢さん、それじゃ魚は釣れないよ」
と、一人の男性老人が話しかけてきた。
「お嬢さんはリールを巻くのが早すぎるんだ。魚の気持ちになるんだよ」
「魚、ですか?」
「そう、魚だ。フライは虫を模してるだろ? だから水面に落ちてもがく様を演出するんだ」
そう言って、自分の釣り竿でお手本を見せる。針を投げ入れ小さく動かしながら巻いていく。すると不思議な事に、魚は喰い付き竿がしなる。
「どうだい。魚に魅力を伝えられれば釣れるわけだ」
手元には釣り上げた魚がピチピチと跳ねていた。その後、色々なコツを聞き再度挑戦してみる。
刻むように、緩急をつけてリールを巻く。すると、今まで当たりもしなかったのが嘘のように、クンッ、と当たりが来た。
「焦ってはいけない。ゆっくりと確実に手繰るんだ」
アドバイス通りにリールを巻くが、魚が予想以上に暴れたため針が外れてしまった。
「あーあ。外れちゃいましたね」
「そんなこともあるさ。それもまた釣りの醍醐味だよ」
朗らかに笑う老人とマナは少しの休憩を取ることにした。
「釣り暦は長いんですか?」
マナが、持参したお茶を渡しながら聞く。
「おお、すまないね。……釣りは子供のころからやってるから、かれこれ六十年以上はやってるかな」
受け取ったお茶を啜りながらそう答えたが、どこか寂しそうに話しをつづけた。
「でもね。最近は足腰が弱ってきているせいで、川は危険だからやめてくれ、って家族に止められてるんだよ」
一呼吸置き、お茶を啜る。
「でもね。そしたら孫がこのゲームを勧めてくれたんだよ。このゲームならリアルな釣りが体験できる、ってさ。最初は慣れなかったが、慣れりゃ楽しいもんだ」
一転、楽しそうに笑う。




