年越し男子会?2
二十時。全員が腹いっぱいになり、食べるより飲むか喋るかになっていた。
「若い時には家を継ぐことは決めていたし、ガキの頃から畑の手伝いは当たり前。高校も農学部しか考えてなかった」
食べる事にも落ち着き、現在高校生であるワイルと十兵衛に進路相談をされている西郷がアルコールを傾けながら話していた。
「迷うのも良いが、迷いすぎるのも良くない。結局見えなくなるだけだからな。何で迷うのかを理解しなきゃ、何で迷ってるのか解らなくなっちまう」
ゲームの中で現実の話し、特に自分の年齢や職業などには触れないのが一般的なマナーだといえるが、美味しい料理と気心の知れた仲間、そして進路に迷う若者がいるなら話は別だ。そしてそれは、店に居る全員が感じていることだった。
「説教くさいオッサンは嫌われるぞ?」
隣のテーブルの大宜都比売のギルドメンバーから、からかいの声が入った。
それに合わせ、店全体が笑いに包まれる。
「お待たせしました。」
と、店主がワイルの注文した飲み物をテーブルに置いた。通常なら、注文の品を届けたら直ぐに厨房に帰るのだが、店主はそのまま独り言のように口を開いた。
「僕も今、料理系の専門学校に通ってるんですが、進路を決めるまで随分と迷いました」
ワイルも十兵衛も黙ったまま店主を見つめていた。
「ウチの家系で、料理を生業にしている親戚は居ませんから、誰も先が見えないのが現状でした。普通科の学校に行くことも考えてたんですけど、結局料理が好きだし自分のお店を持つ夢も捨てきれないしで、専門学校を選びましたよ」
店主は恥ずかしそうに笑って厨房に戻っていった。
「自分のやりたい事を理解してるって大事なんだな」
「やりたい事かぁ、子供のころ学校の先生に憧れてたけどなぁ」
悩む二人に西郷は、
「見えてるうちは、いくらでも悩んで良いんだよ。わからなくなりそうなら、親や学校の先生に相談すればいいんだ」
ぶっきら棒に言って酒を飲んだ。
時間は二十三時を回ったところ。誰かが新年の花火を見に行こうと言い出した。面倒との意見もあったが、最終的には全員が外に出る事になった。
大宜都比売・ワイル、十兵衛・店主の男連中が連れ立って、近くの広場にやってきた。
そこには大勢のプレイヤーが新年を祝おうと集まっている。
新年まであと十秒。全員がカウントダウンを始め、ついに新しい年になる。
花火も上がり、一層の盛り上がりが辺りを包んだ。
「今年はどんな年になるのかね。空梅雨も大雪も困るが、それは神のみぞ知る、か」
花火を見ながらの西郷のその言葉は、誰かに届く前に新年の歓声に消えたのだった。




