年越し男子会?1
「へぇー。年末にそんな事やるのかい」
「そうなんですよ。その日はお店は休みなのでご了承下さい」
カウンター席で、農業ギルド・大宜都比売のリーダー、西郷が唐揚げを食べながらマナと年越し女子会の事を話していた。
「と、いうわけで、俺たち男も年越しで騒ごうじゃねーか!!」
西郷は酒の入ったコップを掲げ、高らかに宣言した。
マナたちが喫茶店やすらぎで年越し女子会を開催している同じ日、大宜都比売の男性メンバーと、同じギルドメンバーが女子会に参加している【ワイル】【十兵衛】が、西郷が主催の【年越し呑み会】に参加していた。
場所はお好み焼きをメインで提供している店、【華味庵】。そこを貸し切りにしてもらっていた。
そして、西郷の宣言で男たちの年越しが始まる。
全てのテーブルは埋まっていて、鉄板もフル稼働していて、様々な種類のお好み焼きが並んでいた。
「遠慮しないで食えよ。今年の鬱憤は飲んで食って忘れちまえ!」
西郷はそう言って、自分の目の前にある【お好み焼きオオサカ】の【豚玉】をコテで切る。
ソースとマヨネーズが鉄板に落ちて焼ける。その匂いが食欲を更に掻き立て、堪らなくなる。
「いただきます」
手を合わせ一口。ソースとマヨネーズが口に広がり、生地の中にあるキャベツ・桜えび・豚肉も加わる。
特に感想を言うでもなく、黙々と食べ続けた。
西郷の目の前、ワイルと十兵衛もそれぞれコテを手に取る。彼らは【お好み焼きヒロシマ】の【海鮮】と【モチ】を注文しており、どちらも良い音で焼きあがっていた。
ゴクリ。と喉を鳴らしコテで切る。覗く断面からは湯気が立ち上り、キャベツや麺が顔をのぞかせている。
一口。ワイルの口の中に広がるのは海鮮。イカの強い弾力とエビのプリッと感と独特な旨み。そして、それにソースの味が加わる事でより複雑な味に変化する。
十兵衛も一口。噛むと、良いしんなり具合のキャベツとカリカリに焼きあがった麺、そしてモチ。モチ自体にはさほど味は無いが、それがあるだけで食感が全く違った。
「なぁ、そっちの一口くれ」
「おう」
ワイルは十兵衛のお好み焼きを、十兵衛はワイルのお好み焼きを貰う。
自分のお好み焼きには無い魅力を感じながら食べる。そして一玉を食べ終え、次の注文をするためにメニューを開く。
「次は【もんじゃ焼き】いきたいな。作ったことないけど」
「俺、食べた事すらないわ」
そんな若者の会話を聞いた西郷は、
「じゃぁ、おじさんが作ってやろう」
と、もんじゃ焼きを注文した。
「良いんですか? ありがとうございます」
ワイルの礼に西郷は豪快に笑って、気にすんな。と軽く手を挙げた。
注文したのは普通のもんじゃ焼き。運ばれてきたそれを西郷が受け取る。
ボウルには少し厚く切った千切りキャベツ、天かす、桜えび。そして液体状の生地が入っており、それを軽くかき混ぜ鉄板に具材だけを落とす。それをコテで細かく刻む。
カタカタと軽快にコテを動かし、ある程度細かくなったところで、ドーナツ状の輪を作る。最後に輪の中に生地を流し入れ、少し煮詰める。グツグツと煮立ち始めると、とろみが付き始める。そうなってから輪を崩し全てを混ぜる。
「ほら、出来たぞ。食う時は、コテでもんじゃ焼きを鉄板に軽く押し付けるんだぞ」
西郷のそのセリフに、ワイルと十兵衛が嬉しそうにコテを持つ。
そして言われた通りの方法で口に運ぶ。
トロッとした生地の中に桜えびや天かすのコクがあり、ほんのりとキャベツの甘味もあった。
「もんじゃ焼きってこんな味なのか、美味いな」
「だろ? あの、是非西郷さんも食べてください」
「そうか? 悪いな」
そんな話をしながら、彼らはもんじゃ焼きをパクパクと食べた。
周りの席も、笑い声が終わることは無く、飲めや騒げやで大賑わいが続いている。




