年越し女子会1
現実ではあと十数日もすれば新しい年が始まる次期。現実では師も走っているだろうが、ゲームの中は関係は無い。
「何でこんなに疲れるんだろうな。年末くらいゆっくりしたいよ」
「年末は全国的に忙しいもんよ。それこそ朝から晩までな」
「遊ぶ時間があるだけマシ、か」
愚痴りながら酒を飲む人。
「じゃ、三十一日は皆で亜弥の家で呑んで騒いでして、初日の出を見る。で決定ね」
「ウル子は大丈夫? 親戚の集まりがあるんでしょう?」
「大丈夫大丈夫。そんな大層なものじゃないし、言い訳並べて逃げられるから」
五人の少女たちは新年を友人たちと過ごす事を計画していた。
「年末も年始も独り身の私は、ただただ今日が昨日になるだけなのよねぇ」
カウンター席で管を巻くのは【雑貨店うさぎの里】の店長、叶。彼女は二時間ほど前からこの調子だった。
「今からでもお友達を誘って、お食事会をすればいいんじゃないでしょうか?」
「うーん、友達かぁ。今からじゃ無理かもなぁ」
と、ため息を吐いていたが、ハッと顔をあげマナを見つめる。
「ねえ、私たち友達よね。年末を一緒に過ごしてくれるくらいの友達よね?」
マナに取って叶は間違いなく友人だった。そして叶はマナの反応を見る前に、ある提案を持ちかけた。
「三十一日に【女子会】、やらない? リアルだと集まるのも一苦労だし、此処でできたら嬉しいんだけど」
女子会、その言葉にマナは心惹かれるものがあった。以前、カウンター席で女子会の話をしている女性プレイヤーがいた。その時は女子会と言うものが解らず調べてみると、女性だけで行う集会で、仕事や恋愛、その他愚痴まで話すと書いてあった。気の置けない友人たちとそのような事をしたことが無いマナには、今回は絶好のチャンスとも言えた。
「女子会、ですか。……楽しそうですね」
「でしょ! 楽しいわよ」
そして三十一日の十八時に【年越し女子会】の開催が決定した。
女子会のメンバーはマナが声をかけることになったので、常連さんを中心に誘っていった。
そして、メンバーがマナと叶を含めた八人に決まり、後は三十一日になるのを待つだけだった。
女子会当日、喫茶店やすらぎは年末休業にして、マナは夕方から皆に振る舞う料理を作っていた。
「まずは【フライ】の下ごしらえからいきましょうか」
マナはフライの準備を始める。
【白身】、【肉】、【エビ】の三種類の下ごしらえ。
エビは殻を剥き背ワタを取る。そして熱を加えた時に丸まってしまわないように腹に数本切れ目を入れる。
肉は筋を切り軽く叩き、白身魚は骨が無いかをチェックする。
そしてそれに塩コショウをして小麦粉、溶き卵、パン粉の順に付ける。
「揚げるにはまだ早い時間ですね」
それをパッドに重ね入れ冷蔵庫に仕舞う。
次は【キッシュ】を作る。
キッシュの生地は、パイ生地とタルト生地のどちらかで作るのだが、今回はタルト生地で作ることにした。捏ねたタルト生地を型に貼り付け、フォークでまんべんなく穴をあける。
それを一旦冷蔵庫に入れ休ませる。その間にホウレンソウを茹でて一口大に切り、同じく切ったベーコンをフライパンで炒め塩コショウで味をととのえる。次にボウルにタマゴと生クリーム、それにチーズを加えて混ぜる。冷蔵庫から生地を取り出し、炒めたホウレンソウとベーコンを敷き詰めボールの中の液も注ぐ。
そしてそれをオーブンに入れて焼く。焼きあがるまでは三十分。
「一先ず、仕込みは終わりですね」
女子会が始まるまで後二十分ほどある。せっかくお店を休日にしたのだからと、マナはコーヒーを淹れテーブルに着く。
今年の事を思いながらカップに口を付ける。
ゆっくりとコーヒーを飲み、ゆったりとした時間を味わう。そしてコーヒーを飲み終わるころに、陽気な雰囲気で叶がやってきた。
「マナちゃーん。ちょっと早いけど来ちゃった!」
語尾にハートでも付ける勢いでドアをくぐる。
「料理はまだですけど、コーヒーくらいなら出しますよ」
「うーん。コーヒーよりお酒よね」
そう言って端末から大量の酒を取り出してテーブルに並べた。
「今日のために色んなお酒集めたんだー。今日で全部空にするんだぁ」
一人で酒盛りを始めようとする叶にコップを渡し、
「女子会が始まる前に飲み過ぎたらだめですよ」
と釘を刺す。
「皆が早く来てくれると良いなぁ」
叶は、そう言って一杯目をコップに注いだ。




