初ライブ1
喫茶店やすらぎには様々な人が訪れる。
あの料理は作ってもらえるか、パーティーをしたいから貸し切りは可能か。そういった事を聞いてくる人は意外と多く、今回もその類だった。
「はい?」
彼女たちの問いに、マナは思わず変な返答をしてしまった。
「ですから、お店で歌わせてほしいんです」
彼女たち三人が現れたのは数分前。揃ってカウンター席に座り、コーヒーやジュースを注文した。そしてそれを飲み干した頃マナに、お店で歌わせてほしいと話しかけたのだった。
「駄目ですか?」
駄目かどうかより、喫茶店で歌を歌う姿が浮かばなかったマナは、ただただ困惑した。
しかし、彼女たちにはマナの表情が拒否に見えたのだろう。もう一度お願いします。と頭を下げた。
その会話に、テーブル席で酒盛りをしていた男性プレイヤーたちが食いついた。
「そういや、昔の居酒屋は【流し】が居たよな」
「いたなぁ。ふらっと来て一曲歌って次の店へ。って感じだったな」
「妙に情緒があるんだよな。悲恋の演歌なんて最高だったよ」
それを肴に盛り上がる彼らの話しを聞いたマナは、
(そんなシステムが有るんですねぇ。何事も最初はありますよね)
と、考えを纏めて彼女たちに結論を言い渡す。
「解りました。此処で歌っていただいて構いませんよ」
笑顔を向けるマナに釣られるように彼女たちも笑顔になる。
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「やったね!」
「うんッ!」
三人のキャッキャと喜ぶ姿をマナは温かく微笑んだ。しかし、気になった事もあるので三人に聞いてみる。
「あの、バンドだったら実際に現実の方では行えないんですか?」
「ウチら三人は住んでるところがバラバラなんです。だからゲームの中だけでバンド組んで練習してるんですよ」
マナはなるほど、と頷いて日にちなどの具体的な話を始めた。
そして二日後、喫茶店やすらぎで流しというよりはワンマンライブが開かれた。




