ステーキとウイスキー2
無言でカウンター席、レイアの二つ横に座りウイスキーのロックを注文した。
注文の品はすぐに出て来て、受け取った女性はそれを一気に煽る。
(リアルだったら速攻で酔っぱらう飲み方ね)
システム上、未成年は注文すらエラーが出るので、彼女は成人なのだろうが、普段飲まないのか、飲み方を知らないのか、どちらにせよ無茶な飲み方をするなとレイアは横目で見ていた。
女性はもう一度ウイスキーを注文し、同じように煽る。
グラスをゴトリと置くと、見られている事に気付いて、視線を下に向けたままレイアに話しかける。
「私お酒弱いんですよ。ビールはコップ一杯、日本酒なんて一口でもう駄目なんです」
「なるほど。ゲーム内では酔わないからね」
「はい、現実でソフトドリンク飲んでも詰まらないし、自棄食いはしたくないですし」
何を飲み食いしても影響のないゲームの中。それを活かして自棄飲み自棄食いは珍しくない。
彼女もその一人として、この喫茶店に訪れていたのだった。
「すいません。ウイスキーのロック」
マナは再度ウイスキーを渡す。彼女はそれを受けっとって一気に飲み干そうとして、止めた。
小さくため息を吐き、グラスの中の氷を眺め始めた。
「私でよかったら話聞くよ」
レイアは食器ごとその女性の隣に移動する。
「別れ話ですよ?」
面倒な話だと念を押してきたが、レイアにはもう覚悟はできていた。
「良いわよ。一人で自棄酒より誰かに話した方が建設的よ」
女性、【ある乃】は礼を言ってからポツポツと話し始めた。
付き合っていた彼氏が浮気をし、問い詰めると開き直った。しかも理由は《お前は誠実過ぎる》だった。
「意味わかんないですよ。誠実過ぎって何ですか。正義感の強い小学生ですか」
「浮気性があるなら体の良い言い訳よ。相手のせいにして自分の罪から逃げてるのよ」
そんなもんですかね。と、ある乃は言ってウイスキーを少し飲む。
そこから愚痴を聞く事三十分。言いたいことを吐きだしてスッキリしたある乃は、
「ところで、何食べてらしたんですか? 折角ですから私も何か食べようかと思うんですけど」
と、レイアの鉄板を指さし尋ねる。
「ステーキよ。三百グラム、ミディアムレアでニンニクソース」
「ヘヴィーですね」
「私も仕事のストレスを食事で晴らしてるの」
ある乃は、なるほどと頷いてマナに注文する。
「ステーキ下さい。三百グラム。ミディアムレアでニンニクソース」
「かしこまりました」
マナは注文を受けて冷蔵庫に向かう。
料理が出来るまでの間、愚痴では無く普通の会話をしていた。そして、二人がにこやかに話せるようになったところで、
「提案なんだけど、たまに二人で女子会でもしない? お互い愚痴もあるし」
レイアがある乃に尋ねる。
「良いですね。一人で飲むより断然良いです」
「でしょ? 私も一人より二人のほうが楽しくて良いわ」
ある乃も二つ返事で賛成し、女子会の結成が決まった。
それから頻繁に女子会を開く二人の姿が、喫茶店やすらぎで見られるようになった。




