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謎解きイベント

 ある日の喫茶店やすらぎ。その日は朝からドアに【Closed】の看板がかかっていた。

「ふふふ、計画は完成しました。これで今回のイベントも成功ですよ」

 彼女は満足げに頷いていたが、ふとテーブルに手を置き優しく微笑む。

「この子たちも、店のオープンから随分と頑張ってくれましたもんねぇ」



(私は世界を知りたくなかった。

固く閉ざした世界に居たかったが、知性を持って外に出る。

私は双子だった。

しかし、それも昔の話。

私の子供たちも双子となる日も近いだろう)


(謎を解き、褒美と引き換えに、一つだけ捧げよ。八組の賢人を待つ)



これが、公式謎解きイベントとして、プレイヤー全員のメールボックスに届いた。

そこからプログルブオンラインの中では、謎解きの話題で持ち切りになった。

やすらぎでも、客の大半はこの話題だった。


「掲示板にもまだ攻略成功は載ってないよ。後は、八日後にメンテナンス予定。バグで樹木で道が塞がってる所があるから迂回したほうが良いってさ」

 朝姫と夜姫の双子がいつものカウンター席で悩んでいた。

「夜姫はどう思う? やっぱり【ガルグ】かなぁ」

「うーん、どうだろ。ガルグは最近アップデートで追加されたボス級モンスターで目立ってるから、それっぽく見えてるだけかも」


 世界を知りたくなかった=討伐されるガルグの心情?

固く閉ざした世界=ガルグがいるダンジョン。

知性を持って外に出る=謎を解いて討伐に向かうパーティ。

私は双子だった=ガルグは双頭。

一つだけ捧げよ=ガルグのどちらかの頭部。

しかしそれも昔の話=どちらかの頭が捧げるべき頭。

私の子供たちも双子となる日も近いだろう=一度失敗すると再挑戦に時間がかかる。


 これが朝姫と夜姫の現在の推理だ。

「やっぱり微妙な理屈だよ、朝姫。頭が二つあるからって双子かなぁ」

「大学生二人の脳味噌でも解けないのかっ!」

 朝姫はカウンターに左の頬をくっつけ脱力する。

 暫くそうしていたが、

「もう一度、情報を集めなおして整理しよう」

 そう言って起き上がった。

「お、今回は復活早いね」

 タブレット端末を操作していた夜姫が微笑む。

 朝姫が脱力している間に、夜姫は再度情報を洗っていたらしい。

「最新の情報だと、ガルグじゃないみたい。何人ものパーティが討伐したらしいけど、通常の討伐アイテムしか出てきてないってさ」

「見落としてる情報があるってことだよね。何か些細で重要なこと」

 ゲーム内でのイベントなのだ。ヒントがないわけがない。イベントが始まる前か、同時に何か変化があったはずだ。

 今のプログルブオンライン内の事象を考える。


「ねぇ夜姫、バグでなにがあったんだっけ?」

「バグ? ……あぁ、掲示板に書かれてたバグ? あれは樹木で道が塞がってるらしいよ」

「何の木だろう」

そう言って朝姫も自分の端末で調べ始める。

 掲示板の中に、道を塞いでいる木の写真が上がっているのを見つけた。

 朝姫はその写真を拡大し、覆い茂った葉の部分を凝視する。


「ねぇ、この葉っぱの合間にある茶色っぽいの何だと思う?」

 言われて覗き込む夜姫は、その可愛らしい顔に似合わないほどの皺を眉間に作る。

「この木の実じゃないかな」

「そうなんだけど、どっかで見たことない?」

 返答のない夜姫に代わって、朝姫が喋る。

「これ、胡桃くるみに見えない?」

 その言葉に夜姫は目を細めて再度画面を凝視する。

「確かに見えなくもないけど、これが胡桃だったとしてどうしたって言うの?」

 朝姫はチッチッチ、と右手の人差指を振り説明する。


「今のタイミングでバグがあったら、五~六時間メンテナンスに当てて速攻で直すと思わない?」

「確かに。メンテナンス予定はこのイベントの後……ってことは」

 双子は同時に端末のインターネット回線を使用する。

 検索ワードは勿論【胡桃】。生体をはじめ、ありとあらゆる事を調べ上げる。双子ゆえの能力か、示し合せることもなく互いに違うページを漁り、ポイントを付けていく。

 十分を過ぎたところで、同時にため息を吐く。

「めぼしい情報はあった?」

「当然! でも、ここからはプライベートチャットで話そう」

 そう言って二人は黙り込む。プライベートチャットは、周りに聞こえないようにするための機能で、脳内で直接話あっているような形になる。

 そして、二人がそれぞれに調べたことをすり合わせる作業が始まる。



 私は世界を知りたくなかった。固く閉ざした世界に居たかったが、=胡桃の実は硬い殻を持っている。

知性を持って外に出る=胡桃の花言葉は【知性】

私は双子だった。=双子ふたごではなく、双子そうし。胡桃は双子葉植物そうしようしょくぶつ

しかし、それも昔の話。=芽から木への成長

私の子供たちも双子となる日も近いだろう=実の発芽を指す



『確証は?』

『百パーセント!』


 プライベートチャットを終了させ、立ち上がる。

「ご馳走様。二人分のお金置いとくね」

 朝姫がカウンターに料金を置いて出ていく。

「ありがとうございました」

 皆には見えない位置で管理者用のページを見ていたマナは内心で笑う。

(ふふ、朝姫さんと夜姫さんは三着ですね。一着は大宜都比売でしたか、流石は農業ギルド。今回の謎は強かったですね)



 後日、胡桃の木で新調されたテーブルやイスが店内を飾り、来客を迎えた。


最後まで読んでいただき有り難うございます。


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