イベントクエスト【見つける見つかる】2
まず、朝姫の後ろからビュン、と風切り音がしてモンスターの目に刺さる。ヒットポイントの減りを見るに、ダメージはそれほどでもないが、敵はノックバックした。当然進撃も止まり、朝姫まであと一メートルを切ったところで足踏みした。
瞬間、朝姫は目を見開き右手を振るう。その切っ先は、敵の丸太の様に太い左足を捕らえる。
しかし、ヒットポイントはあまり減っていない。
「やっぱ居合じゃダメージ少ないな」
朝姫は小さく愚痴る。
居合は、抜刀から切りつけるまでの時間が短いのが特徴のスピード型。その代りダメージ量が少ないのも特徴といえた。
しかも、通常の大きさであれば、足でも頭でも切っ先は届くのだが、大型種ともなれば足くらいしか届かない。それが戦いづらさを高めていた。
隙を見て逃げることも考えるが、その隙が無い。
矢がモンスターに刺さり、ターゲットが夜姫に移った瞬間に朝姫が居合で切りつける。そうすると、また朝姫にターゲットが移り彼女への攻撃が開始される。
「大丈夫? 逃げるなら煙幕張ってみるよ」
夜姫の問いに、朝姫が答える。
「このまま倒しちゃわない? 倒せばいいアイテム出るかもよ」
その言葉に双子の腹は決まった。逃げる事を捨て、全力で倒す事に専念する。
コンビネーションで相手を翻弄し、朝姫のヒットポイントが削れた瞬間、夜姫が回復アイテムでカバーする。そして、一時間かけて何とか敵のヒットポイントを半分まで削ったとき、攻撃パターンに変化が生まれた。
単純な薙ぎ払いと振り下ろし以外にフェイントが加わり、スピードも若干ではあるが上がった。
どんなプレイヤーでも、変化が生まれた瞬間は完全な反応はできない。朝姫も当然スピードについて行けず、ガードも回避も間に合わなかった。
攻撃を食らう。はずだったのだが、敵の頭が爆発した。敵はモーションを崩しながらも攻撃を止めない。しかし、その崩れたモーションが最大の好機だった。朝姫は横に転がるように無理やり回避し、難を逃れる事に成功した。
爆発の理由は判る。夜姫の射った弓だ。弓の特殊スキルで使用できる爆砕の矢だ。しかし、振り返って礼を言っている場合ではない。態勢を立て直し間合いを取る。
回避でも攻撃でも行ける間合い、敵は打ち下ろしの予備動作を見せた。朝姫は右にステップし紙一重で避ける。避けた先で右足を前に出し、居合の構えから抜刀し瞬間に納刀する。
打ち下ろしの左腕にダメージを与えると、夜姫の弓矢が襲う。それを繰り返し、更に二時間を費やして残りのヒットポイントを一割にまで削った時、敵の動起きが止まった。
それは、ダンジョンにいるボスがよくやる予備動作だ。デカい一撃、つまりは必殺技を出す時のガードなり回避なりをプレイヤーに促すサイン。
しかし、朝姫は迷わずに相手の膝を踏み台にして肩に乗った。その狭い足場目一杯に足を開き踏ん張る。深く息を吸い止める。奥歯を噛みしめ刹那に五回、抜刀と納刀を繰り返す。
その全てが顔面にヒットする。
そして、そのまま肩から飛び降りる。
何も言わずとも通じるのが双子の最大の特徴。当然、夜姫も火力最大の爆砕の矢を顔面に撃ち込む。一際大きな爆発が起き、そのままズシンと大きな音を立てて後ろに倒れた。
ヒットポイントも完全に空になっており、次にはポリゴンになって消えた。残ったのは宝箱が一つ。
二人は両手でハイタッチを交わす。
「「イェーイ!! 私たち最強ーー!!」」
ひとしきり喜んだ後に宝箱を開けると、そこには【攻撃力大幅アップのブレスレット】が入っていた。
「うそ。レアリティが最高値なんだけど」
「本命のモンスターじゃないのにドロップアイテムが良すぎる。中身よりオマケが人気の雑誌みたい」
あまりの出来事に、信じられない程の衝撃を受けていた二人だが、夜姫が宝箱のそこに何かあるのに気付いた。
「何だろこれ」
手のひらサイズの巾着で、中身がパンパンに詰まっている。見たことも無いアイテムなので、口を解き二人で中を覗いてみる。
中身は一口サイズの固形物が大量に入っていた。
クエスチョンが頭を巡る中、一つのポップが立ち上がる。
《これを撒き餌にすれば特定のモンスターが寄ってきます》
特定のモンスター。それは当然今回の目的のモンスターを指していることは明白だった。試しに草むらに放り投げてみる。数分と経たないうちにガサガサと音が鳴り、目的の小型モンスターが寄ってきた。 それを倒し、また呼び寄せる。それを繰り返すとアッという間にクエストクリアまで至った。
「方法は二通りあったんだね」
「コソコソ探すか、大型を倒してしまうか」
彼女たちは結果的に巻き込まれて大型を倒した形だが、結果的には良しと言えた。
そしてクエスト終わりには、必ずと言っても良いほどのお決まりで、喫茶店やすらぎでのご飯タイムである。
「何食べよっかな。がっつり系の丼とか無いかな」
「かつ丼はあるんじゃない?」
「もっとコッテリが良いなぁ」
等々、二人で仲良くやすらぎへ歩き出したのだった。




