イベントクエスト【見つける見つかる】1
「んーーッ!」
女性は、だるい身体をベッドから起し、大きく伸びをする。
まだ眠いという欲求を堪え、リビングに向かう。リビングのドアを開けると、彼女の妹が朝食を食べていた。
「あ、おはよう。お姉ちゃん」
「おはよう。パンと目玉焼きか」
そのままキッチンに向かい、自分の朝食を用意する。パンをトースターに入れ焼き始める。そして、冷蔵庫から卵を取り出し、フライパンに火を付け卵を割り入れる。
「あ」
フライパンの上に落ちた卵は、黄身が破けドロリと流れ出た。こうなってしまえば出来る事は一つ。箸で混ぜ、スクランブルエッグにする。ハムも一緒に焼き、皿に乗せて完成。
焼きあがったパンも皿に乗せテーブルに着く。カップにコーヒーを注ぎ朝食を始める。
コーヒーを一口飲んでからパンをかじる。 サクサクの食感と小麦の味。
スクランブルエッグにはケチャップをかけ食べる。スクランブルエッグにはスクランブルエッグの美味しさがあり、目玉焼きにはないフワフワを楽しむ。
そしてハム。これがあるだけで、朝食の彩が華やかになり、満足感が格段に上がる。
朝食を食べ終え、一息ついたところで、この後の事を話す。
「昨日掲示板を確認したら、やっぱり足音に反応するみたいだよ」
「クリアした人いた?」
「まだいないみたいだけど、時間の問題かなぁ」
コーヒーを啜りながら答える姉。
姉妹二人でハマっているゲーム、プログルブオンライン。
そのプログルブで今開催されているイベントクエスト【見つける見つかる】は、ある特定の新種モンスターを倒すだけの簡単なものだった。
発表された際は手ぬるいものだと言われていたが、実際は違った。イベントクエストに向け、十人ほどのパーティーを組み挑んだものの、目的のモンスターに出会う前に確実に別の強力なモンスターに襲われた。
不具合かと言われたが、実は目的のモンスターは大人数の足音で逃げ、代わりに強力なモンスターが寄って来ていたのだった。
気付いたプレイヤーたちは少数精鋭に切り替え、その人数での訓練を急ピッチで進めていた。
一方彼女たちは、元々二人で行動していたこともあり、訓練は必要とせず作戦とアイテムに重点を置きクリアを目指していた。
「さて、お腹も一杯になったし、ゲームするか!」
朝食の片付けも終わったところで、今日の本題に入る。
「そうだね。そろそろ始めようか」
お互いに自分の部屋に戻りプログルブオンラインにログインする。
意識をゲーム内に転送し目を開ける。慣れ親しんだ自分のもう一つの身体、【朝姫】の金色の髪を靡かせ、拠点である姉妹で購入したログハウスに居ることを確認する。
そして、まだログインしていない妹を椅子に座って待つ。
五分もしないうちに室内に光が現れ、妹が転送されてきた。
「お待たせ、お姉ちゃん」
【夜姫】の黒髪を靡かせ、姉に笑顔を向ける。
「じゃあ、クエストにいこうか」
二人は早速、イベントクエストが行われているフィールドで目的のモンスターを探す。
「ここの平野にはいないらしいから、向こうの森林に行こう」
足音に寄ってくるモンスターが、近づいて来ていないかを辺りを見回しながら歩く。
暫く歩いていると、遠くの方で衝撃音が連続し、木がなぎ倒されるバキバキという音が聞こえてきた。
「向こうでヤバイのとエンカウントしたみたいだね」
「だね。向こうを避けて遠回りする?」
「……。いや、迎え撃つよ」
朝姫のセリフに対し、どういう事なのか聞こうとした瞬間、巨大な咆哮が響いた。
思わずそちらを見ると、朝姫の言葉の意味が解った。
恐らく戦っていたパーティが全滅したのだろう。そのままどこかに去ってくれれば良いものを、律儀に近くにいる朝姫と夜姫を発見し、こちらに向かって走ってきたのだった。
巨大な体躯が迫ってくるのは恐怖だが、自分たち二人が揃っていれば何とかなってしまう気がする。
いつもなら二人で前衛を張り、気が付いた方が回復薬を使用するスタイルだが、今回の戦闘では、朝姫が前衛、夜姫が後衛に徹する事にしていた。
「夜姫、後衛お願いね」
「任せといて。でも無茶はしないでよ。回復が追い付かなかったら意味ないからね?」
そう言い残し、夜姫は後方へ二百メートルほど離れ、最近レベルを上げまくっている弓を取り出す。
一方の朝姫は、日頃から使っている片刃の剣を取り出し、左腰に帯刀する。そして右足を前に出し、腰を落とし鯉口を切り、構える。
所謂居合の構えで、向かってくる敵を見つめる。
十メートル、五メートル。近づいてくるが、朝姫はまだ動かず構える。
三メートル、二メートル。朝姫まで、あと一・二歩というところで双子はほぼ同時に動いた。




