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温まるには

 秋も過ぎ、寒くなってきた今日この頃。プログルブにも冬の気配が近づいてきた。喫茶店やすらぎも、冬仕様のメニューに変える時期なった。


 ドアベルが鳴り、ヘトヘトに疲れている様子の女性三人組が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

「どうも。今日のおススメ何ですか?」

 常連になると、いつでも食べられる通常メニューよりも、マナの気分で変わるおススメを選ぶ人が多い。

 彼女たちも常連なので、今日のおススメを三人とも選ぶことは決まっていた。

「今日はクリームシチューですよ。」


 寒くなり始める時期のクリームシチューは、身も心も温まることのできる食べ物の代名詞。彼女たちは一回顔を見合わせてから、シチューを三人分注文した。

 テーブルに着くと全員が一息をついた。

「クリームシチューかぁ、丁度良かったね」

「あのマップ寒すぎなのよ、ヒートアイテムの効果が半分になるくらい寒いなんて」

「そのくらいのデメリットがあるから、良いアイテムが眠ってるんじゃない」

 彼女たちは、モンスターを倒して得られるレアアイテムを狙うのではなく、ダンジョンに眠るレアアイテムを狙うプレイヤーだ。


 今回のマップは極寒の地【コルフ】。永久凍土が覆い尽くし、草木も生えずモンスターすらも特定の者しか生き残れない。アイテムの効き目にすら影響を及ぼす場所だった。

 その大地の裂け目にあったレアアイテムをやっとの思いで取ってきた帰りに、やすらぎで温まろうとなったのだった。


「お待たせしました。クリームシチューです」

 マナが三人分のクリームシチューとバターロールを置く。

 彼女たちは早速いただきます、と合唱し、ホカホカと湯気を上げるシチューをスプーンですくって口に運ぶ。

 牛乳のまろやかでコクの深い味と、丁度いい加減の塩分が口の中に広がる。

「あ~、生き返る~」

 シチューには、ニンジン・タマネギ・ジャガイモ・鳥肉・コーンが入っている。

 ジャガイモはホクホクと柔らかく、鶏肉は程よい弾力がある。とろけたタマネギ、味のしっかりとしたニンジン。そして甘いコーンがアクセントとして効いている。

 一旦スプーンを置き、バターロールを手に取る。それを一口大にちぎり、シチューに軽く浸し食べる。

 噛めば、香ばしいパンに染み込んだシチューがじゅわりと出てくる。しかも、パンに含まれるバターがシチューを一味違うものにしていた。

 その美味しさに、三人は黙々とシチューとパンを食べ続け、空になってから会話が始まった。


「温まったわね。温かい料理最強だわ」

「アイテムで温かくなるのとは訳が違うもんね」

「アレ、たいした味も無いから美味しく無いしね」

 冒険メインの彼女たちにとって、生き延びるためのアイテムは重要だ。そこで不味いアイテムはうんざりしてくるが、でも飲まなければならない。そして飲んだ後は口直しが必要だった。


「アイテムって自分たちで調合できたよね。味、付けてみる?」

「シチュー味とかコーヒー味とか?」

「コーヒーは良いと思うけど、シチューは……」

 後日、彼女たちの作った味付きのアイテムは大人気商品となった。


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