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職業体験2

「三人には、キッチンでのお手伝い一人。ホールでの料理運びと、片付け等が二人です。それをローテーションで皆さんに体験してもらいます」

 注文を受け、料理を運び、空いた皿は下げる。厨房の方では、小鉢などの料理の盛り付けや、マナのサポートを中心とした仕事をしていた。


「ご注文の生姜焼き定食とビールです」

「いらっしゃいませ。こちらの席にどうぞ」

 元気な声が店内に響く。

「アルバイトでも雇ったのかい。マナちゃん?」

 カウンター席の男性が、マナにそう話しかける。

「ふふふ。今日は職場体験なんです。皆さん一生懸命頑張ってくれてますから、スゴイ助かってるんですよ」

「店長さん、もうそろそろポテトサラダが無くなりそうです」

「わかりました。では、ジャガイモ十個・ニンジン五本・キュウリ五本を冷蔵庫から取り出して水洗いをしてもらえますか?」

「わかりました!」

 元気に返事をして冷蔵庫に向かっていく。

「確かに勤勉だな。このまま雇っても良いんじゃないか?」

「ふふ。それも良いかもしれませんね」

 

 もの珍しさや、元気に働く三人に釣られてか、いつにもまして活気がある喫茶店やすらぎ。

「こっちにイカリングを二皿」

「はーい。ただいまお持ちします」

「お待たせしました。焼肉定食です」

 マナは、テキパキと働く彼女たちの姿を見守っていた。

 普段は一人で喫茶店を切り盛りしているマナにとって、今日は作業が減るとか増えるとかではでなく、楽しいものだった。


 そして、休憩を挟みながら働き、時間は終了時間の午後三時になっていた。

 少女たち三人は、ぐったりとイスにもたれ掛かっている。

「疲れたねぇ」

「うん、働くってやっぱり大変だよね」

「でも楽しかった」

 疲労困憊ひろうこんぱいな様子だが、心地良い疲労感が勝っていた。満足そうに笑う彼女たちに、マナはお疲れさまの意味も込めて、チーズケーキと紅茶を振る舞う。

「お疲れさま。良かったら食べてください」

 ぐったりしていたのが嘘のように、目の前に出されたケーキと紅茶に目を輝かせ、早速フォークを手に取る。

「「「いただきまーす!!」」」


 フォークをケーキに入れる。しっとりとしたケーキの下には、タルトがサクリと音を立てる。

 一口食べると、チーズそのものの風味とほんの少しの酸味。それをタルトのほのかな甘みが和らげる。そして、チーズケーキ特有の柔らかさも、タルト生地のサクサクがマッチしていて、とても美味しい。

 ケーキに染まった口をリセットしてくれるのが紅茶だ。

「ふぅ、疲れた身体に紅茶が染みるねぇ」

「お父さんがビール飲んで同じこと言ってた」

 あははは。と笑う少女たち。


 そこにマナが、

「今日の体験学習はどうでしたか?」

 と、聞いてみた。

 その一言に、全員が目をキラキラさせて答える。

「楽しかったです! 料理のお手伝いも、運ぶのも、片付けるのも!!」

「最初は緊張したけど、だんだん慣れて来て楽しかったです!!」

「お父さんの大変さが、ちょっとだけ解った気がします!!」


 それぞれの感想がありながらも、きちんとお店の楽しさや大変さが体験できた様だった。その答えを聞いたマナは、嬉しそうに頷く。

「良い体験が出来たようで、私もうれしいです。本当に今日はお疲れさまでした」

 少女たちも、慌てた様に頭を下げ礼を述べる。

 

 そして、今日一日だけの店員たちは、とても充実した職業体験を終えた。


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