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紅葉の森1

 一年に一度、喫茶店やすらぎが一日を通して閉店している日がある。

「良い天気ですねぇ」

 伸びをしながら、同時に肺一杯に空気を吸い込み、吐き出した。

 毎年、同じ時期に一日だけ終日閉店として、一人で紅葉狩りに出かける事を楽しみにしていた。


 現在マナは、紅黄こうこうの森という紅葉の名スポットに来ていた。遠くから見れば赤色や黄色に染められた楓と銀杏の葉が辺り一面を埋め尽くしていた。

 十分ほど歩き、その色の下に入る。

 見上げると、遠くからでは色としか認識できなかったものが、形を持って主張していた。だがしかし、それだけではない。下にも色鮮やかになった葉が敷き詰められていて、どちらが上でも下でも可笑しくない景色と言えた。


 紅黄の森は有名でも、今マナの居る地点は端末マップの端、現マップと次マップの丁度境目にあるために、はっきりとは映りづらい。なおかつ、遠くから場所が見えても少し入り組んだ所に入口があるために、たどり着くことはほぼ不可能に近い。

 誰も立ち入ってこないマナの独り占めスポット。そこに居るだけで特別な雰囲気が、最高に気持ちが良かった。


 ただ眺めるだけではなく、座って眺めたり、仰向けに寝転がってみたりしながら、大いに満喫した。


「はぁ、今年も良い景色に染まりましたね。それにしても、お腹が空きましたかね」

 景色を眺めながらの昼食を食べるために、眺めの良い場所を探し、シートを広げてバスケットを出す。


 パカリ、と蓋を開ける中には【サンドイッチ】が敷き詰められていた。

 自分で作ったとはいえ、この蓋を開ける瞬間はいつも楽しみだった。

「いただきます」

 マナはサンドイッチに手を伸ばした。

 両面をこんがりと焼いたパンに、ゆで卵を荒く潰したものにマヨネーズとピクルスを混ぜ、塩コショウで味を調えて挟んだ、【たまごサンド】。

 それを一口食べる。

 カリッとしたパンの後に、マヨネーズの酸味を卵の黄身が適度にまろやかにしつつ、ピクルスが良いアクセントになっている。そして白身のぷりっとした食感がパンの食感と合う。

「美味しい」

 手前味噌ながら自分の料理を美味しく堪能する。


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