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お化け屋敷2

 立ち尽くしたマナは、あることを思い出した。

「確か、テーマは【家族の思い出】でしたね」


 一家に訪れた恐怖。ある日突然に命を奪われた理由は? 誰が何のために。

 そんな凄惨な現場である家に、未だに一家が暮らしている。例え肉体は無くとも住み続け、両親は子供たちを守る。

 

(ストーリーを盛り込むことで、より身近な恐怖になるんですね)

 単純に物陰から飛び出して脅かせるより、脅かす幽霊が誰なのか理解している方が恐怖は増す。

 そんな事を考えているうちに十分が経った。

 コクリと喉を鳴らし、玄関に手をかける。引き戸は軽く、カラカラと音を立てスライドする。


「おじゃましまーぁす」

 小さい声で挨拶し、家の中を覗く。当然辺りは暗いが真っ暗ではなく、遠くに漏れる明かりが足元は見える程度に照らしていた。

 回るルートは決まっているわけでは無い。目的を遂行すれば玄関から出ることが許される。

 その目的とは、家の中にある、家族四人分の名前が入った四つのお守りを集める事だ。


 玄関からまっすぐに伸びる廊下。その先には部屋があり、そこが光源だった。

「行くしかないですよね」

 ゆっくりと足を前に出す。一歩二歩と前に進むと、時折ギィィと床がきしむ音が恐怖をあおる。


 恐怖と戦いながら、光の漏れる部屋の襖を開ける。そーっと中を覗くと、そこは客間のようで十畳ほどの畳の空間と座卓。壁には振り子時計もあった。

 状況が状況でなければ、落ち着いた寛げる空間だがここは残念ながらお化け屋敷。マナも、何かあるのだろうと慎重に室内に入ろうとした時。


「入らないの?」


 突然背後から声をかけられ、小さな悲鳴とともにマナは後ろを振り向く。しかし真後ろには声の主はおらず、視線を右に移すと長い髪の少女が遠ざかっていく姿だけが暗闇に浮かんでいた。

「こ、怖い」

 これがまだ序盤なのだから、ツライものがあった。気を取り直して前を向くと、座卓の上に一枚の紙が置いてある。

 それを覗き込むと、

【私たちの事は放って置いて】

 そう書かれていた。

 放って置きたいがそうはいかない。しかし、客間を調べるが何もないので、仕方なく客間を出る。


 次の行き先を考えると、先ほどの少女が消えていった方に意識が向く。彼女をヒントとして見ると、追いかける事を選ぶ。相変わらず薄暗い廊下、そこをヒタヒタ、ギシギシと歩き、突き当りを右に曲がる。

「――ッ!」

 曲がった先の突き当りには鏡があり自分が写っていた。薄暗いために最初は判らなかったが、冷静になれば自分だと気付けた。

「鏡ですか。最初はびっくりしましたけど、ネタがばれるのは早いですね」

 無意識に独り言も増える。


 そして鏡をよく見れば、その端っこにお守りがぶら下がっていた。

 ようやく目当てのものを見つけ、そのまま鏡に近づき手を伸ばす。すると自分の後ろに、もう一人が迫ってきているのが見えた。


 放って置かなかった罰なのか。もはや、声を出す事より行動を起こすことを意識せずにやってのけるマナ。

 逃げる事とお守りを掴む事を同時にやり遂げ、反射的に近くの部屋に入り襖を閉める。和室の襖には鍵が無いので開けられる可能性もあるが、今はこれで落ち着いた。

 二度三度深呼吸して辺りを見回す。そこは居間で、広い部屋だった。奥は台所であるようで、料理をする彼女にとっては見慣れた場所だが、今は状況が違う。この数秒後に恐ろしいことが起こるかもしれないという考えが襲う。


 どうするべきか、と悩んでいると、奥の台所にある冷蔵庫が突然空いた。冷蔵庫の中の光が部屋を照らす。居間の座卓の上に二つ目のお守りが置いてあるのを見つけ、足早に取りに行く。すると、冷蔵庫の方から視線を感じた。見たくないと思いながらも、視線をお守りから冷蔵庫に移す。

 そこには先ほどまで無かった傷だらけの頭が冷蔵庫の中に納まっていた。

 

 

 その後も様々な個所で脅かされ、嫌になりながらも懸命にお化け屋敷に挑み、ようやく四つのお守りを見つけ出してヘトヘトになりながらも玄関から出る。

 思わず、両膝を地面に下ろしてしまうくらいにマナは疲れ切っていた。


「お疲れさまです。大丈夫ですか?」

 その声は先ほどのリーダーである青年だ。

「だ、大丈夫ですよ。こういうものに慣れていないので少し驚きましたけど、大丈夫です」

 そして集めた四つのお守りを青年に渡す。

「はい、確かに四つありますね。……それで、どうでしたか? 違反に当たるような箇所はありましたか?」

 そのセリフを聞いて、マナはヨロヨロと立ち上がりながらも、しゃんとした姿勢で告げる。

「私が体験した限りでは問題はありませんでした。しかし、当日は皆さんもやる気に溢れていると思います。そうなると、何かトラブルが起こりやすくなるので注意してください」

 今日のように脅かせば大丈夫ですよ。と付け足してから、何気なしに個人的な感想を述べる。

「あの、廊下に鏡が置いてありましたよね? 私が鏡の前に立っていたときに、後ろに人が居たことが一番驚きましたよ。あれ怖いですね」


 青年は『?』を顔に浮かべながら、

「そこには誰も配置してないですよ?」

 と、言った。

「…………。え?」


 そのマナの硬直具合に、悪いことをしたと感じた青年はすぐに訂正する。

「すいません。冗談です」

 マナは、一瞬本気で出店禁止を言い渡しそうになったが、何とか思いとどまった。

 そこから、少しばかり彼らと話をして自分の店に帰る事を伝え、別れを告げる。

「では、当日も頑張ってください。何かあったら連絡を下さいね」

「はい。今日は有り難うございました。マナさんが驚いてくれたから自身が付きました」

 それは良かったと納得しながら、マナは喫茶店やすらぎに帰るために、フィールドを出る。

 

 彼らはそれを見送ってから、集まり気合を入れる。

「当日は節度を守って楽しくいこう!」

「「「おーー!」」」

 自分たちのお化け屋敷を成功させるために気合を入れたのだった。


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