夏料理1
料理を生業にするマナにとって、古今東西の料理情報と言うのは欠かすことはできない。
現実世界の日本もプログルブも季節は夏。以前からやってみたい料理を試す時が来た。
「セッティングはこれで大丈夫なはずです。角度も傾斜も試算では問題なしでしたしね」
腕を組み、満足気に目の前ものを見ていた。
場所は、喫茶店やすらぎから少し離れた空き地。偶然にも建物も無く適度に広い空間。そこを一時的に借り、プチイベントを開催した。
《喫茶店やすらぎ出張版。【流しそうめん】会場》
そう書かれた立て看板を空き地に設置し、空き地の真ん中には、三メートルほどの竹を半分に切った半月状のものを組み、そうめんを流すレーンを作った。
スタートは地上二メートルほどの高さ。そこから広さの関係上、数メートル先で一度右に曲げてゴールとした。
立て看板を設置してから十数分。会場には多くの人が集まっていた。
現実でも流しそうめんは、簡単に出来るものでは無い。初めて体験する人も多いようで、始まる前から盛り上がりを見せていた。
「予想以上に集まりましたね。やっぱり、そうめんが流れてくるというのは楽しいものなんですね」
マナはそうめんを流すために、脚立を使いスタート位置まで昇り、脚立の上に座りながら呟いた。
時間的にも集客人数的にも丁度良いころだと判断し、流しそうめんの開始を宣言する。
「ただいまから、流しそうめんを始めます。皆さん用意はいいですかぁ」
脚立の上からの声に対して、
「おーーッッ!!」
と、事前に渡された麺つゆと薬味の入った器と箸を掲げて彼らは答える。
「最初の一回は様子見なので、誰も取らないでくださいね」
そう言ってマナは、水が流れる竹のレーンに一口大に纏めたそうめんを一つ流す。
そうめんは、水の流れに乗り下っていく。始めはゆっくりと、しかしレーンのつなぎ目で一段下がり、それを繰り返すうちに次第にスピードを上げていった。
そして右に折れ曲がったカーブ。そこを超えてゴールとなる。もちろん、ゴール下にはタライとそうめんを受け止めるザルを置いている。
そうめんは見事にザルにぱちゃりと落ちた。
そうめんを流しても大丈夫な事を改めて確認し、ほっとしてから彼らに声をかける。
「大丈夫そうですから、どんどんと流していきます。皆さん美味しく食べてくださいね」
こうして流しそうめんが始まった。
「あーッ。私のぉ」
「次が来るよ」
「夏にはそうめんだよな」
「確かにな。夏以外には食う機会がない気がするわ」
「夏の終わりには飽きてるけどな」
何時もの喫茶店やすらぎとは違った雰囲気。青空の下で食べるというのは、それだけでシンプルなそうめんも美味しくなった。
マナも、そうめんを流すのが楽しくなっているようで、取り損ねる人が現れないように、絶妙なタイミングで流していた。
流しそうめんは予想以上に楽しいものです。




