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華味庵~かみあん~3

「やっぱり上手いわねぇ。料理系のお店出すには必須なスキルなの?」

 やることのない叶は水を飲みながら、マナに感心の声をかける。

「そんなことないですよ。ただ、出来ないより出来た方が、作れる料理の幅は広がりますね」

 コツは躊躇わずに一気にひっくり返すことです。と付けたして調理に戻る。

ソバをほぐしながらイカを焼く。ソバが十分にほぐれ、イカに火が通ったら、その二つを混ぜ円形に敷く。

 その上に、先ほどの生地とキャベツが一体になったものを、生地が上に来るように乗せる。そして、上からヘラで押さえつける。 

 次に卵を二つ鉄板に落とし、黄身を軽く潰す。白身が固まった段階で、卵の上に生地を乗せる。

 そして最後に全てが重なったものをひっくり返し【お好み焼きヒロシマ】の出来上がり。


 【お好み焼きオオサカ】の方も焼き具合も良く、ふっくらと出来上がった。


 しかし、まだ完成ではない。マナはテーブルに備え付けてある、ソースなどの調味料を手に取る。

「もうすぐですからねぇ」

「子供じゃないから待てるわよぉ」

 マナはクスクスと笑い、ソースをたっぷりと塗り、マヨネーズをかける。鉄板に零れ落ちたソースとマヨネーズがジュージューと煮立ち、食欲がそそられる。

 その上から青ノリとカツオ節をかけ完成。


「出来ましたよ。さぁ、食べましょう」

 其々のお好み焼きをヘラで器用に切り分け、叶の皿に乗せて渡す。

「有り難う。いただきます」

 まずはオオサカのお好み焼きを箸で一口大にして口へ運ぶ。

 お好み焼きは当然熱く、はふはふと食べる叶の感想を待つマナ。

「うん、美味しい! 外はカリッとしてるし、中はふっくら。そして、このソースの少し甘い感じが堪らないわね」

「確かに辛口のソースも良いですけど、甘口のソースも美味しいですよね」


 そう言ってマナも一口食べる。叶の言う通り、外はカリっと中はフワっとしていた。生地の中のキャベツの甘味、桜えびの香ばしさ。焼いた豚肉、ソースやマヨネーズ。その全てが合わさる美味しさ。


 温かい料理を、温かいうちに食べる幸せは何物にも代えられない。その幸せを噛みしめるように食べ進める。


「こっちのも美味しいわね。ソバとイカが良いアクセントになってる」

「ヒロシマの方ですね。確かにこちらのソバの食感は良いです。焼いたことでパリパリになった部分と、もっちりとした部分。そして噛みごたえのあるイカとキャベツ、目玉焼き、生地。一度に多くの食感が味わえますね」

 

 そして十数分後。

「はー、美味しかった。満足だわ」

「そうですね。どちらもボリュームがありましたから」

 二人はぺろりと平らげ、何もなくなった鉄板を眺める。

 しかし、満足だと言ったはずの叶は、不意にメニューの書かれた紙に手を伸ばした。

「あれ、満足したって言ってませんでしたか?」

「んー? もんじゃ焼きって美味しいじゃない?」

「それは知ってますけど、……食べるんですか?」

「あら、要らないの?」

「いえ、お付き合いします」

 彼女たちの食事会はまだ始まったばかりだ。


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