華味庵~かみあん~1
「お好み焼きですか?」
「そう、お好み焼きともんじゃ焼きの店。今日この近くにオープンするみたいよ?」
雑貨店うさぎの里の店長、叶は喫茶店やすらぎのカウンター席に座り、コーヒーを啜りながらその話題を出した。
プログルブにおいて店の出店は簡単で、出店する店舗での販売物。出店者のブラックリストの有無。犯罪等の行為を行わないという誓約書。以上で店舗を開くことができる。
許可の有無はマナが管理しているので、当然お好み焼き屋の出店は知って入るのだが、ここの近くに出店するとは知らなかった。
「ねぇ、食べに行ってみない?」
「いえ、私はお店がありますから。というか、叶さんはお店はどうしたんですか?」
「私は今日は休業日。やすらぎは不定期休業なんだから午後から休めないの? 敵情偵察は大切だと思うけどなぁ」
途中から芝居口調になった事を不審に思い、マナは叶を半目で見つめる。
「本音はなんですか?」
叶はコーヒーを一口啜り、観念したようにため息を吐く。
「本音? 本音はね。食べに行きたいけど鉄板料理に一人で行く勇気なんてないのよ!
友達も皆予定があるって付き合ってくれないの!」
カウンターに突っ伏し、ワンワンと泣き始める叶を目の前にしたマナは、友人の頼みと思って店を午後から休業することにした。
「ここですか」
叶と一緒に訪れた、お好み焼きともんじゃ焼きの店。【華味庵】。外観は木材を使用し、和の雰囲気を出しているので、庵と言う名前が似合っていた。
店に入ると、店長と思しき男性が一人で働いていて、
「いらっしゃいませ! 座敷の方へどうぞ」
と威勢のいい声を響かせた。
新装開店で認識している人が少ないから、客足はまばらに見える。
店内は、カウンター席と座敷席の二種類。座敷席は畳で、靴を脱ぎ鉄板を囲むスタイルだった。
靴を脱ぎ、畳に足を乗せる。フローリングなどと違い、植物の柔らかさが心地よい。そのまま、鉄板を挟むように二人は座る。
座って気付いたことは、掘り炬燵になっているため、ゆったりとした寛げる空間になっていた。




