初来店1
夕方、喫茶店やすらぎのドアベルが鳴り、ドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
マナは声とともに出入口を見る。
するとそこには、少女が頭だけを店内に入れて覗いていた。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ。此処って料理を出してくれるんですよね?」
「そうですよ。喫茶店やすらぎです」
すると少女は、おずおずと左手の指を三本伸ばし、
「三人なんですけど大丈夫ですか?」
と、告げた。
「大丈夫ですよ。お入りください」
それを聞いた少女はいったん扉を閉め、改めて三人で入店した。彼女たちは丸テーブルに腰掛ける。
「攻略サイトを見た限りだと、アミルの丘が低クエストみたいだよ。そこでレベル上げようよ」
「そうだね。レベルもそうだけど、武器と防具を良いものにするためにお金も稼がないと」
「それより何か食べてみない? このゲームでの初の食事だから、楽しみで楽しみで」
【茜】【イーク】【うさうさ】の三人は同じ学校の同じクラスで、仲良くなったのを機に、自由度が非常に高く冒険に重きを置かずとも遊べるプログルブで遊んでみようと話になり、数時間前にアバターを作成した。
プログルブの事を事前に調べた時、掲示板で【喫茶店やすらぎ】の事を知り、初めての食事はこの店にしようと決めていたのだった。
三人は賑やかにメニューを眺めている。
「和食に洋食もある」
「ほんとに何でもあるんだね」
そして彼女たちが選んだものは【ロールキャベツ】だった。
注文を受けたマナは、調理を始める。
その様子を見る三人は改めて感心する。
「噂通りの感じだね」
茜がサイト見ながら呟くのを二人は頷きながら賛成する。
「私が前にやってたゲームなんて、地球上に居ない空想上の生物ばっかりで、誰も捌けないし食べたがらないしで酷かったよ」
と、うさうさ。
「プログルブってクエストの難易度も丁度良いらしいし、自由度も高いから人気が落ちないんだってね」
イークの言葉に茜が案を出す。
「じゃあ、これから色んな事にチャレンジしていこうよ。私、ギルド作って秘密基地っぽいの作りたい」
「何にしても、レベルと資金だって」
そんな会話をしているうちに、三つの皿が同時に運ばれてきた。
「お待たせしました。ロールキャベツです」
この世界で初めての料理を目の前にして歓喜の声が上がる。
「他のゲームの三割くらい上だね」
「ゲームじゃないみたい」
「早く食べようよ」
フォークとナイフで一口大に切り、口に運ぶ。
噛めばまずは肉汁。しかし、油を用いて焼いたり揚げたりしたものとは違う旨さ。あっさりとしていながらも肉の味はしっかりとしている。そして、その肉には、スープのコンソメが染みてもいる。
噛めば肉だけではなくキャベツも美味しいことに気付く。いい具合にしんなりとしているが、溶けているわけでは無い。
三人はゴクリと飲みこんだ。




