苦手なもの2
彼女は、目の前に置かれた料理を眉間に皺を寄せて凝視している。美味しいだろう事は理解していても、子供のころの強烈な思い出とイメージが先行しているのだろう。なかなか手を付けられずにいた。
「冷めるよ?」
友人の指摘に余裕なく答える。
「わかってるから、ちょっと黙ってて。今集中してるから」
食事をするだけとは思えない覚悟を見せている彼女は、意を決してフォークを握る。
一つ深呼吸をしてから、ピーマンの肉詰めにフォークを刺し口元に運ぶ。数回口をパクパクさせてから目をつぶって食べた。
デミグラスの濃厚な野菜の旨みと、肉汁が混ざり合う。そして次は苦手なピーマンの食感が伝わってくる。火を通していてもパリパリとした食感は失われてはおらず、味も出てくる。噛むほどに全てが混ざり合うが、そこで気付く。
「大丈夫……かも?」
自信なく咀嚼して飲み込み、もう一口食べてみる。
飲み込んだ彼女は改めて、
「大丈夫だ! 食べられる」
感激したように三口四口と食べ進め、四つあったピーマンの肉詰めを一つまで減らした。
「案外食べられたなぁ。むしろ美味しかった」
「良かったじゃない、克服できて。きっかけを作った友人に感謝してよね」
からかうように言う友人に対し、彼女もまた大げさに頭を下げて礼を述べる。
そしてマナや、カウンターの男性にも礼を述べた。
「いやいや、俺はギルドで野菜をメインに作っていてな。野菜を好きになってくれりゃ嬉しいね」
「私も、私の料理を美味しいと言ってもらえて嬉しいですよ」
やはり、自分の料理を美味しいと褒めてもらえるのは、料理を作る者にとっては最高の喜びと言えた。それが、苦手なものの克服に繋がったとなればなおの事だ。
彼女はにこやかに残り一個のピーマンの肉詰めを食べていた手が、はたと止まった。
「そういえば、ナス苦手って言ってなかった?」
目の前の友人に向かって彼女がそう言った。
それを聞いたマナは、
「ナス田楽なんていかがですか?」
と、笑顔で勧めた。




