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苦手なもの1

「え、アンタ、ピーマン駄目なの?」

「うーん、唯一食べられないんだよね」

 夜、喫茶店やすらぎで女性二人が話し込んでいた。


「なんか、おばあちゃんが家庭菜園で育ててたピーマンが異常に苦くてさ。子供のころ美味しいから食べてみろっておばあちゃんが言うもんだから、食べたら、ね」

 行儀が悪いとは思いながらも、右ひじをテーブルに付き、手の甲に顎を乗せる。

 二人の目の前には、それぞれ注文したパスタが半分ほど食べ進められていた。

 時間的に夕食には遅い。彼女たちの目的はダンジョンでの冒険では無く、今日あったことの愚痴などがメインであり、女子の敵である寝る前のカロリーもゲームの中であるならば、いくら食べても問題は無いので便利だった。


「でも、市販のヤツだったら大丈夫じゃない? そこまで苦いってことはないでしょ」

「うーん」

 どうも乗り気ではない友人のために思案を巡らせる。

「じゃあ、此処で食べてみれば? 味の再現率は百パーセントなんだからさッ」


 そう言って、さっそく注文を入れる。

「すいません。ピーマンを使った料理ってありますか?」

 右手を上げ、マナに告げると、彼女は少し考えてから一つの料理を提案した。

「【ピーマンの肉詰め】はどうですか? ソースにはハンバーグ用のデミグラスソースを使いますから、味が濃い分そこまでピーマンの味はしないと思いますよ?」


 それでもまだ決心がつかないのか、うーん、と悩んでいる彼女に対し、カウンターから声がかけられる。

「悪いな。盗み聞きするつもりは無かったんだが、聞こえちまったんだ」

 そう前置きをして、カウンターに座る巨躯の男が椅子ごと彼女たちに向く。

「恐らく、その苦いピーマンってのは、家庭菜園だから出来た代物だろうな。一概には言えないが、化学肥料の与え過ぎが招いたんだろう」

 それに説得力があったのか、ピーマンが苦手な彼女がマナに向かって注文を言う。

「ピーマンのに肉詰めを下さい。……できればソースの味濃いめで」

「はい、少々お待ちください」


 マナは笑顔で承り、冷蔵庫に向かう。

 冷蔵庫からピーマンを二つと、ハンバーグ用に作っていたひき肉のタネを取り出す。

 ピーマンを洗ってから縦半分に切り、種を取って内側に薄く小麦粉を付ける。

そして、タネをピーマンに詰める。この時、焼き上がりにはかさが減っている事を想定して、少し山になるように盛る。


 フライパンに油を敷き火を付ける。肉の面を下にして焼いていく。

 肉の焼ける香りがマナの鼻孔をくすぐる。


 デミグラスソースは、必要な量より少し多めを小さなフライパンに移し、弱火で煮詰めていく。そうすることで、水分を飛ばし味を濃くする。

 肉詰めの方はひっくり返し、蓋をして蒸し焼きにする。

 十分ほど経って蓋を開け、火が通った事を確認してから皿に移し、上からデミグラスソースをかける。


「お待たせしました。ピーマンの肉詰めです」

 マナはテーブルに皿を置く。


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