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不変に偏在せし不在の夜

R15作品です。ご注意ください。

多少、暴力的な表現、性的な表現が含まれています。

Chapter1「ごく平凡な初夏の庭における情景」


 実直かつ勤勉、公明正大にして温厚篤実。

 聡明にして博識、文人の側面を持ちつつも、武を(おろそ)かにせず、街道を荒らす賊の掃討においては三公爵家随一の手並みの良さを見せる。

 血統において非の打ち所がないのは言うまでもなく、引き締まった体躯(たいく)怜悧(れいり)な面差しは、ひとびとの溜息を誘わずにはいられない。

 むろん、領主が領主であるための(あかし)とも言うべき祈りのちからも、彼の地位にふさわしいだけのものを持っている。

 領主を(いただ)くだれしもが「こうであってほしい」と思い描くであろう理想像を現実のだれかに仮託(かたく)するなら、それは、ウィンチェスター公爵家現当主ミオである……というのは、衆目の一致するところだろう。

 世に名高き三公爵の当主だけを較べたとしてもウィンチェスター公爵の世評は抜きんでている。

 しかし、だ。

 ひととは贅沢な生きものだ。

 欠点がないというのも、ときとしてもの足らなくなる。

 あるいは、欠点がないと崇敬(すうけい)の対象にはなり得ても、親近感が湧かないとでも言うべきか。

 そう……ごく些細(ささい)で自分の身に害が及ぶようなことはなく、それでいて目立つような欠点があれば、身びいきにも熱が入るというものだ。

「うちのご領主はあれさえなけりゃ、文句なしなんだがね……」

 と、溜息交じりにこぼれる愚痴が、かすかに誇らしげに響くように。

 そして世の領主、あるいは高貴なひとびとと呼ばれる手合いには、大なり小なりの差はあれど、なにがしかその手の欠点を持ち合わせているものだった。

 ウィンチェスター公爵ミオを除いては。

 かくて、貴族院議会の開かれる時節、議会に出席するために王都に入るミオの(とも)に選ばれた召使いたちは、他の領主に仕える召使いたちの愚痴とも自慢ともつかない話を、毎回、拝聴することになる。

 たとえば、(まご)うことなく男でありながら、公式の場ではつねに紅いドレスに身を包むカーチェスト大公爵。

 百年以上もともに暮らす領宰(りょうさい)ですら、いまでもときどき取り違えることのあるほど、容姿の似通ったエルザス公爵リナと、その姉ルカ。

 ほかにも、女性であればそれが生まれたての赤ん坊であろうと杖をついた老婆であろうと、年齢、種族の区別なく親切であるにもかかわらず、男性には社交辞令すら面倒くさがって領宰を困らせるアンフェル伯爵。

 無類の歌謡好きで、創世の記念祭と豊国の祝祭日に合わせて独唱会を開き、知人等々を招待するのはまあいいとしても、いっこうに実力がついてこなくて周囲をうんざりさせるメガイ侯爵。

 真面目で領地の運営もまずくない……というよりは子爵領という母体の小ささが災いして、あまり目立たないけれども、領地経営の手際と判断力は伯爵領、あるいはそれ以上の領地の運営も可能ではないかとうわさされているものの、領宰兼領地付き魔道一位として当代一いいかげんで柄の悪い魔法使いを雇っているため、なにかにつけて騒動に巻き込まれているイズミル子爵。

 そして……数十年前、恋をした少女を(うしな)って以来、まえにもましてどこか(うれ)いがちになったカナン王子。

 ちかく王位継承式が()り行われることが決定していることからも、自薦他薦(じせんたせん)を問わず、彼の(きさき)に、と望む者はあまたおれど、いまのところ具体的な話にはいたっていないのは、やはり、かつての少女を忘れられないのだ、と憶測されている。

 どれもこれも、うわさ話を好む者にとってはよい話の種であった。

 ことカナン王子の話など、甘やかな恋物語でもある。

 一昔前のまえのエルザス公爵シオンとルカの恋物語同様、恋に恋し、高貴な者たちとの運命的な出逢いに憧れる召使いの娘たちにとっては、またとなく甘美な物語であろう。

 この色恋沙汰にまつわる話もまた、欠点とおなじようにウィンチェスター公爵ミオには欠けている話題であった。

 (よわい)百八十七歳にして未婚であるのは、平均年齢がおよそ千年近い祈族(きぞく)であれば驚くには当たらない。

 が、この歳に至って浮いた話のひとつもない……というのは、珍しいことかも知れない。

 なにごとかみずからに課していることでもあるのか、こころの奥底、ひそかに想うひとでもいるのか。

 そのあたりは本人のみぞ知ることであったが……ともあれ、他家の愚痴話に付き合わされるだけのウィンチェスター公爵家の家臣たちにとっては、あまり面白くないことではあった。

「今年の議会は退屈でしたわね」

 初夏の風が萌える緑の香りをのせて吹き抜ける新緑の庭。

 真夏の薔薇を想わせる深紅のドレスに身を包むカーチェスト大公爵シスは、向かい合わせに座る青年に声をかけた。

 王宮の西、王立魔法院付属の小さな庭園内、よく手入れされた四阿(あずまや)

 シスの話に耳を傾けているのは、ウィンチェスター公爵ミオであった。

「議事の進行も予定どおり。いつもなら議員発言で子爵や男爵がたの、一生懸命言い訳を作文してきました……といった(おもむき)の泣き言が聴けて暇つぶしができるのですけれど、今回はそれもなし。ご存じ? 議長のエルザス公爵まで閉会宣言のときにはあくびを噛み殺しておりましてよ」

 やや大柄なことと女性特有の胸のふくらみに欠けることに目を(つむ)れば、どこを取ってみても女と見紛うばかりである。すこし低めのかすれた声も、聞きようによっては官能的と言えなくもない。

 しかしカーチェスト大公爵シスは紛うことなく男性であった。

 いつも紅いドレスを身につけているのは、余人にはうかがい知れぬ深遠なる美意識に裏打ちされた……性的倒錯というよりは、趣味のたぐいであるらしい。

 それが証拠に、ちまたのうわさでは大公爵の寝室に呼ばれるのは、蕾みほころぶ妙齢の娘ばかりであるとか。

 ともあれ初夏の庭、新緑の蔦も麗しい一角にまみえるふたり……(あで)やかな美女と謹厳な面持ちの美貌の青年との逢瀬にしか見えない。

 もっとも、そうならばふたりと同席しているシスの弟にしてカーチェスト大公爵領領宰リオンの、不機嫌や不愉快を通り越した無表情の説明がつかないのであるが。

 「そのエルザス公爵だが、議会の途中で姉君と入れかわっていた。あくびをしていたのは姉君のほうだ。あそこの領宰殿は口やかましいから、いまごろ嫌味のひとつやふたつ、言われているだろう」

 さすが、誠実と有能が服を着て歩いているとまで言われている公爵である。

 眼前の同僚の趣味が、世間の常識から多少、かけ離れていても困惑したりはしない。

 怜悧(れいり)な眼差しを穏やかな表情でくるんで、シスの振った話題にのっている。

 まあ……見慣れてしまっていまさらどうこう言う気も起きないのかもしれなかったが。

 定例議会の日程がすべて終了したあとの数日は、貴族にとっては社交の日々であった。

 つねは領地を離れることのできない領主たちは、この数日間で領地を運営するに当たって必要な商談をまとめ、懸案の解決策を模索(もさく)し、余力があれば旧知(きゅうち)との再会を楽しむ。

 ときには唐突に恋に落ち、必要なことが手につかず近仕(きんじ)の者たちが慌てふためく……という喜劇が演じられたりもする。

 が、この会談はそのどれでもなかった。

 議場を出る際、カーチェスト大公爵がウィンチェスター公爵に「せっかくですから世間話でもいかが?」と持ちかけたのである。

 むろん、知らぬ仲ではないものの、会って世間話を楽しみたくなるほどの親しい間柄でもない。

 たがいにこれからの数日、半刻刻みで予定を立てねばならぬ身である。のんびりと茶飲み話をしている暇などないのだ。

 ウィンチェスター公爵が、カーチェスト大公爵の不可解な誘いにのったのは、ほかでもない、その不可解さゆえであった。

「しかし、やっかいごとは少ない方がよい。王位継承もちかいことだ。議会が荒れればクアス陛下の御心を悩ますことにも繋がろう」

 ウィンチェスター公爵は四阿(あずまや)の椅子に背を預け、溜息をつくように大公爵に答えた。

「どこぞの男爵領の家督相続(かとくそうぞく)が上手くいかないだの、領地の運営に失敗して難民が自治都市に流出しただの、よくある問題でいまさらあの陛下がお悩みになられるとは思えないのですけれど」

 わずかに肩を(すく)めてシス。

「でも、たしかに希少価値はありますわね。有能で慈悲深く、しかも絶世の美貌の大公爵が、事前に用意させた答弁文書を読み上げたあとは退屈で死にそうだった議会なんて、滅多にないことですもの」

 庭園のうららかな光景とはうらはらに、無表情にリオンは手にした小瓶から、ウィンチェスター公爵とカーチェスト大公爵の(さかずき)に、真紅の飲み物を注ぎ分けている。

「どうぞ」と、シスがミオに勧めた。

「ここにはわたくしたちしかおりませんから、こういうものをお出ししてもよろしくてね?」

 婉然(えんぜん)とした笑みを頬に、大公爵。

「今年の春、わたくしの側仕えになった女官の血ですわ。甘くていい香りがしましてよ」

 そう言って自分から先に(さかずき)に口を付けた。

 ミオもそれにならって(さかずき)()す。

「たしかに、いい香りだ」

 卓子(テーブル)の上に(さかずき)を置いて、ミオは微笑んだ。

 祈族(きぞく)はひとまえで食事をすることはまずないと言ってよい。

 その唯一の(かて)が、ひとの血であるがゆえに。

「このために身体を損ねていなければよいのだが」

「ご心配なく」

 微笑み返してシス。

「みな、わたくしの気紛れには慣れておりますもの」

「ただでさえすくない人数でこちらに参っているのです。兄上の気紛れ如きで、ひとり仕事を休ませたら、ほかの召使いが迷惑致しますよ」

 眉ひとつ動かさずに給仕役を務めていたカーチェスト大公爵領領宰リオンが、間髪入れずに呟いた。

「今回連れてきた女官長はとても気が働くでしょう? 新米の女官がひとり貧血を起こしたぐらいで、どうにかなったりするものですか。だいたい、人数がすくないのは、貴方が予算を削るからじゃないの」

「そういう問題ではありません。『民を(あわ)れみ、身を慎み、安寧を祈り、万計を尽くす』。領主たる者のこころがけの問題です、兄上」

「わたくしがその『初源の王の言葉』にふさわしくないとでも? だいたいね、リオン。さっきから兄上、兄上って、この格好で兄上って呼ばれる身にもなりなさい。恥ずかしいじゃない」

「恥ずかしがるのはそこではありませんでしょう? 兄上。恥ずかしいならそんなドレス、着なければいいんですよ」

「そんなドレスとは失礼ね。これはこの定例議会に出席するために新しく仕立てさせたのよ。王都の流行りの曲線が男のわたくしでも着こなせるよう、特別に型紙から作らせたんだから」

「ですから!」

 そういう問題ではなく……と、さらに抗弁(こうべん)しようとしてリオンはミオの視線に気づいたらしい。

 はっとして口を(つぐ)み、瞼を伏せる。

「失礼致しました」

 謝罪の言葉はミオに対してだ。

 万事において疎漏なく、有能極まりないと世評も高いカーチェスト大公爵領領宰リオンも、兄の女装趣味だけはなんとかしてほしいと思っているらしい。

「気にすることはない、領宰殿。兄弟仲がよいのは羨ましい限りだ」

「仲がいい……ですか」

 この状況を評して仲がよいと言われるのは心外だったのだろう。

 眉を(ひそ)めるリオン。

 しかし、それ以上はなにも言わず軽く頭を下げた。

 ウィンチェスター公爵には兄弟はないが、母方に従弟がいる。

 特権階級意識を剥き出しにしたような青年で、自尊心が強く、ファラカイト侯爵家を継ぐことが決まっている身の上ながら、それは自分に見合った地位ではないと、公言して(はばか)らない。

 そう、自分にふさわしい称号はウィンチェスター公爵である、と。

 ミオの母は現王クアスの娘のひとりであり、現ファラカイト侯爵もクアスの子が臣籍に(くだ)って爵位を相続していたので、ミオもミオの従弟も、血統的には等しく王孫である。

 しかし、公爵家と侯爵家では、王宮の序列にはそれなりに差があった。

 自尊心の強い従弟には、それが理不尽に思えるのかも知れない。

「それはともかく、堅苦しいばかりではありませんでしたのね。うわさでは、ずいぶんと隙のない方だと聞き及んでおりますけれど」

「どうだろうね? 自分としては、できることを精一杯やっているだけのことなのだが……隙がないと評されるのは、つまるところ余裕がないと言うことだろうな。公爵位を負って立たねばならぬ者が……恥じ入るばかりだ」

 溜息交じりにミオは応えた。

 これは社交辞令でもなんでもなく、本気でそう思っているような、憂いが眉間に刻まれる。

「ほんとうに、わたくしとしてはウィンチェスター公爵閣下がお話の分かる気さくな方だと分かっただけでも、じゅうぶんに今日の収穫ですけれども、それでは、公爵閣下が詰まらなくてね」

 シスがミオに笑みかけた。

 男だと理性では分かっていても、ともすればこころ惑う蠱惑(こわく)の微笑。

「ひとつ、わたくしの問いに答えて欲しいの。もし真摯(しんし)に答えてくださったら、それなりの見返りは用意してございますわ」

「それがわたしをここに誘った本題……というわけか」

「そう考えていただいて結構ですわ。わたくしとしては世間話をして楽しくお別れしたいのですけれど、そうもいかなくて。……まったく、大公爵なんて面倒ごとばかり」

「……知らぬことは答えられぬし、知ってはいても答えられぬこともなかにはあるが、それでもよければ」

「充分ですわ」

 ミオは(うなず)き、おもむろに話を続ける。

「最近、旅賊(りょぞく)に変わった動きがあるのはご存じね?」

「知っている。三年前、ガイダル族に新しい(おさ)が立ち、その直後からガイダル族は近隣の旅賊をつぎつぎに併呑(へいどん)し始めた。いまでは四部族が姿を消し、その分、ガイダル族の勢力圏は広がった」

 旅賊とは、ウィンチェスター公爵領の北に広がる砂漠地帯を根城にする遊牧部族である。

 (たてがみ)のような純白の髪、人馬一体とも賞される騎馬の技術に()けた種族であるが、もっとも顕著な特徴は砂漠地帯を転々とする一方で、定期的に南下し、街道を行く商隊を襲い金品を収奪し、女子供を(さら)って身代金を要求、身代金が取れない場合は奴隷にする、その戦闘的かつ他種族と相容れない閉鎖性にあった。

 よって、旅『賊』と呼称される。

「これまで突出した部族がなかっただけで、互いに仲がよいわけではありませんから、内部抗争の結果といえばそれまでですけれど。でも、どうしていまになってひとつの部族が突出しはじめたのか……興味がありませんこと?」

 不意にミオの眼差しが鋭い輝きを帯びた。

「あるな」

「答えは簡単。ガイダル族を影から支援する者がいるの」

「それはほんとうなのかね?」

「たしかよ。かりにも大公爵家ですもの、情報部もそれなりに優秀ですわ……と、言いたいところですけど、ほんとうのところは弟のお手柄。わたくしの弟のひとり、リヴンの出自はご存じよね?」

 カーチェスト大公爵家次男リヴンは、人狼族の娘と旅賊の一派、ヴェド族の(おさ)とのあいだに生まれた混血であった。

 ヴェド族が商隊を襲った際、略奪した金品と女子供のなかに、リヴンの母がいた。

 奴隷のとなり、(おさ)の女となってリヴンを生んだ娘は、ウィンチェスター公爵とカーチェスト大公爵の合同討伐隊による旅賊掃討のおり救い出され、リヴンとともに故郷に帰ったのだが、そこでリヴンが温かく迎え入れられるはずもなかった。

 紆余曲折(うよきょくせつ)ののち、(さき)のカーチェスト大公爵アリエに見出されたリヴンはみずからの出自を捨て、現大公爵の弟となって現在に至るわけだが……その特異な出自から、他種族に対してきわめて閉鎖的な旅賊にも、一定のつながりを持っているらしい。

「商人や自治都市の一部が、自分たちの商隊をお目こぼしして貰うために上納金を納めているのは、公然の秘密でしょうけれどね。この援助、どうやらそういった感じでもなさそうなのよ」

 ミオは、なにごとか考え込むように黙ったまま、シスの言葉に耳を傾けている。

「たとえば商人たちが積極的に旅賊の一派に肩入れするのは考えられないでしょう? そんなことをしたところで、自分たちの益にはならない。商人たちは旅賊が内部で延々と小競り合いを繰り返してくれていた方がいいに決まっているもの。だから、だれがなんの目的でガイダル族を援助しているのか……具体的なことになると雲を掴むような話で、さすがにリヴンでも分からなかったわ」

 シスはここで言葉を切って、ミオを眺め遣った。

「九つの頭に別れている旅賊の本体はあってないようなもの。叩いても叩いてもしばらくすると勢力を盛り返してくる。この本質が変われば旅賊が根絶できる……と考えたひとがいたとするわね」

 ミオの顔から、いつのまにか表情が消えている。

 シスの覗きこむような視線を退(しりぞ)ける、鏡面の如き無表情。

「ガイダル族の(おさ)、ピドゥ・ダル・ガイダルは、ひとかどの人物のようね? ガイダル族の内部もよくまとまっていると聞くわ。彼がもし……旅賊をまとめ上げたとしたら、そのとき、旅賊はきっと『本体』を持つことになる。そして、その『本体』を叩くことができれば」

「危険だな」

 シスの言葉を絶つように、ミオが言った。

「わたくしもそう思いますわ。二重の意味でね」

「二重?」

「ひとつにまとまった旅賊は、いまとは較べものにならないくらい強いわ。負けることはないとしても、勝つためにはどれだけの犠牲が出ると思って?」

「いかにも」

「そして、もうひとつ。旅賊に恨みを持っている者はおおい。とくに、その勢力範囲のほとんどを背後に抱えているウィンチェスター公爵領の領民の恐れと恨みは、ほかの領民の比ではないでしょう。もし、旅賊を裏で支援していることが明るみに出ることがあれば……その支援者がウィンチェスター領ゆかりの者だったとしたら……間違いなく失脚するわ。それがだれであってもね」

 ミオは応えなかった。

「で、わたくしから公爵に質問したいことなのですけれど。よろしくて?」

 ミオの無表情を覗きこむように、小首を(かし)げてシスは続けた。

 ミオが頷く。

 ……言葉もなく。

「もし、公爵にその機会があるとして……公爵は旅賊をどうなさりたいのかしら?」

 あたたかな初夏の風すら、凍りつかせる沈黙。

 カーチェスト大公爵はあることに気がついている。

 そう……それは……

「……旅賊が略奪を行うのは、それ以外に生計を立てるすべを持たぬからだ。それは不幸なことだ。もし叶うなら、わたしは旅賊もまた、我がウィンチェスター領の民として、安らかに暮らせるようにしたいと願っている。そのためには……そういう話し合いを持つためには……おおくの部族が互いにいがみ合っているよりは、ひとつにまとまった部族を相手にする方がいい。……そしてピドゥ・ダル・ガイダルは損得の分かる男だ」

 揺るぎなく大公爵を射る視線。

 喉の奥から絞り出したかのような重い声音。

 ミオの回答に、シスは華やかに微笑んだ。

「やはり今日、ウィンチェスター公爵とお話しできてよかったわ」

「さようでございますね」

 シスの言葉にリオンも頷く。

「カーチェスト大公爵領の一部の商人たちのあいだで、ガイダル族を支援しようとする動きがあるの。まったく、近頃の商人ときたらなにを考えているのか分からないけれど……まあ、カーチェスト大公爵領はそちらと違って、旅賊の直接の被害はおおくないし、商人たちにもなにか商算があるのでしょう。わたくしはそれを最終的に旅賊を根絶させるのに利用するつもりでしたけれど、公爵のお手並みに期待するのも悪くはなさそうね」

 それは、カーチェスト大公爵もまた、内密にガイダル族を支援する予定であることをほのめかす内容であった。

 表向きは商人たちがやっていること……ということにしているが、それを影から先導しているのはカーチェスト大公爵の息のかかった者であろう。

 そしてそれは、目的はどうあれ旅賊を支援することによって失脚する可能性の高いウィンチェスター公爵の代わりをする用意がある、と言うことであった。

 そう、いま、ガイダル族の勢力伸長を隠助しているのは、ほかならぬウィンチェスター公爵であったのだ。

 だれが考えても困難なことを、自身の信念に従い、やり遂げるために。

 ミオはにこやかに微笑む大公爵の真意を測るかのようにシスを見詰め、ややあって、「……感謝する」と、頭を下げた。

「お礼を言われるようなことはなにもしておりませんわ、ウィンチェスター公爵。彼らと交渉の卓につくとしても戦うにしても、どのみち、苦労するのは貴方でわたくしではございませんもの」

「そうだな。だが今日、この場を設けてくださったことについての感謝は、是非受け取って欲しい」

 ミオは立ち上がり、大公爵に謝意を表す礼を()った。

 その礼を受け取ってシスも立ち上がる。

「そうね、わたくしも楽しゅうございましたわ。……あら、もうこんな時間。そろそろ次の予定が詰まってきておりますから、わたくしはこのへんで失礼致しますわね」

 ミオの立ち去ったあと、次の予定があると言いつつもしばらくその場に残って初夏の薔薇を愛でていたシスが、ふと、リオンに問いかけた。

「貴方、エルザス公爵が議会の途中で姉君と入れ替わっていたって、お気づきになって?」

「まさか。いちばんちかしい領宰殿でも取り違えるというのに。もし、ほんとうに見分けがついているのでしたら、特技だと思いますよ」

「でしょう? でも、さっきウィンチェスター公爵、さも当たり前みたいにあくびをしたのは姉君の方だと(おっしゃ)ってたわ。ほんと、どうやって見分けたのかしらね?」



Chapter2「ごく平凡な少女がさる屋敷で職を得た経緯」


 アルマの家は貧しかった。

 父親は家具職人だったが酒癖が悪く、飲んでは暴れ、家族を理不尽に殴った。

 アルマの母親は二年前、夫に殴られて倒れ、卓子(テーブル)の角に頭をぶつけたはずみで半身不随(はんしんふずい)になり、半年後、病苦と夫に(おび)えながら息をひきとった。

 アルマは母親の死後、母方の兄弟の家に引き取られた。

 両親は人狼族で、兄弟のおおい種族だったが、みな貧しく、彼女を引き取ろうと申し出たのはそこだけだった。

 だが、その家はアルマをただで扱き使える労働力としか見ていなかった。

 ろくに食事も与えられないまま朝夕なく働かされたアルマはその家を脱走、父親のもとに戻った。

 彼女が酒浸りの父親のもとに戻ったのは、父親に愛情を抱いていたからではなく……ほかに行くところがなかった、それだけのことだった。

 戻ってきたアルマに、父親は酒を飲んでは容赦なく暴力を振るった。

 夜昼となく酒臭い息を吐き散らしながら不機嫌に部屋をのし歩く父親の目に触れないよう息を殺して暮らしつつ、アルマは職を得て家を出ることを決意した。

 そして。

「ベルサテ職業紹介組合の紹介で来た者です」

 アルマの住む自治都市ベルサテの町はずれ。

 丈の高い雑草と灌木(かんぼく)の茂る沼のそばに、その館はあった。

「こんにちは。だれかいますか?」

 ひとまえに滅多に顔を出さない老いた資産家の住む屋敷だった。

 すこしでも自分の気に入らないことがあるとすぐに使用人を罵倒(ばとう)し杖で殴る。

 かっとなって解雇する。

 偏屈(へんくつ)で横暴な振る舞いが目に余ると評判で使用人が居着かず、ベルサテの職業紹介組合の募集掲示板では求人の貼り紙がはずされた日はないと言われる常連。

 字も読めず、力仕事もできず、取り立ててこれといった技能もないアルマがその屋敷の使用人の仕事に応募したのは、仕方のないことだった。

 これまでも十件以上の仕事に応募し、ことごとく門前払いを受けていたのだ。

 ほかに雇ってくれそうなところと言ったら、娼館くらいしかない。

 それだとて男を歓ばせるための技量などなにひとつ身につけていないアルマでは、最低の扱いしか受けられまい。

「ベルサテ職業紹介組合から来たアルマ・ダットです!」

 呼び鈴を鳴らしてもいっこうに姿を見せず、もしかしてお年寄りだから耳が遠いのでは……と声を張り上げたそのとき、屋敷の扉が開いた。

 扉の向こうにいたのは、若い男だった。

 氷結の蒼い瞳が、無感動にアルマを見ている。

「使用人を(つの)った覚えはない」

 とりつく島もなくひとこと、男が言った。

 そして、扉を閉めようとする。

「で、でも、あたし組合の紹介で来たんです」

 自分があまりに頼りなさそうなので、(はな)から相手にされてないのかも……心細くなるのをこらえて、組合の紹介状を男に手渡そうとあわてて(ふところ)から出す。

「そんなものを見る必要はない。おまえを雇ったかもしれない者は、もう、ここにはいない」

 少女の見せようとしているものの察しがついたのだろう、淡々と男は言い、(きびす)を返した、そのときだった。

 男の動作が不意に止まった。

 少女を振り返り、ちいさく溜息をつく。

「我が(あるじ)が会ってみようと(おお)せだ。入るといい」

 アルマの顔が輝いた。

 しかし、不可思議な状況であった。

 蒼い目の男と少女は、しんと静まりかえった屋敷の二階を歩いている。

 ひとの気配のない静寂。

 男は二階の奥の部屋を目指しているようだったが、そこと玄関とはかなり距離がある。声を張り上げても聞こえるかどうか。

 行き着いた先に男の(あるじ)がいるとして、アルマに会ってみよう……という意志をどうやって男に伝えたのか?

 しかし、アルマはその不思議には気がついていない。

 生まれて初めて目にする屋敷の広さ、調度の豪奢(ごうしゃ)に目を見張っている。

 ただし、広いとは言っても所詮(しょせん)は田舎町の小金持ちの家だ。たかが知れている。

 調度だとて、贅沢ではあったがあまり良い趣味ではない。

 薄い壁越しに隣の部屋の寝息まで聞こえるような共同住宅住まいのアルマだからこその感嘆であった。

 予想どおり、男が立ち止まったのは二階のいちばん奥の部屋の前であった。

 二度ばかりノックし、扉を開ける。

「入りなさい。くれぐれも粗相(そそう)のないように」

 男の不機嫌な声にびくびくしながら、アルマはおずおずと部屋に入った。

 緊張のあまり視線が泳ぐ。

「あ、あのう……あたし、ベルサテ職業紹介組合の紹介で来ました……え……えと……アルマ・ダットです」

「はじめまして、アルマ・ダットさん」

 ふわりとした微笑を頬にアルマに声をかけたのは、男の(あるじ)であった。

 流れるように伸び床を()う漆黒の髪。

 輝くような白い肌。

 夜の深遠を覗きこんだかのような、闇色をした瞳。

 肘掛け椅子の片側に寄りかかるようにくつろいでいるその姿は、目の当たりにする者の魂を奪う美しさであった。

 種族によって外見年齢には差があるが、年の頃はおそらく十八から二十歳。

 男にしては優美に過ぎる身体の線、女にしては鋭利に過ぎる面差し。

 眼前の貴人の性別を類推できるすべは、身につけている衣装が男物である……ということくらいしかない。

「さきに彼から聞いたと思うけれど、君を雇ったかもしれない人はもうここにはいない」

「どこにいけば会えますか?」

 聞いても仕方のないことだとわかっていながら、思わず聞いてしまう。

「さあ? 君は、生きることに疲れてしまったひとが行くところがどこか、知っている?」

 青年の声は、穏やかで優しい。

 そして、意味が分からない。

 しかたなく首を横に振り、老人のことは諦めた。

 組合での評判を聞くにつけ、その下でどうしても働きたいと思えるようなひとではない。

 当面の問題は、これからどうするか、だった。

「わたしは召使いを雇う気はないから、君には帰ってもらうことになるのだけれど」

 どうしたものかな、とでも言いたげな口振り。

「あの」

 召使いを雇う気はないと言う青年の言葉に、もはや引導(いんどう)を渡されたもおなじだったが、アルマは簡単に諦めるわけにはいかなかった。

 手に職のない自分でもできる住み込みの仕事はそう多くはない。

 ここで引き下がれば、父親に殴られるばかりの生活が待っている。

「そこをなんとか雇ってもらえませんか? あたし、掃除や洗濯ならできます。いっしょうけんめいやりますから」

「……でもね」

 青年は曖昧な微笑を頬に、穏やかな声でアルマに言った。

「わたしの身の回りの世話は、みんな彼がやってくれるんだ」

 玄関ですげなくアルマを追い返そうとした男を差して、青年が言う。

「あたし、どんな仕事でもやります! お給金も安くて構いませんお願いします!」

 (すが)り付かんばかりにアルマ。

 青年はすこしのあいだ思案しているようだったが、やがて静かにこう言った。

「……そうだね。わたしは不在であるべき者。でも、それだからこそ、ここにいるときには僥倖(ぎょうこう)でありたい」

 それは、アルマには分からない言葉ばかりで彼女を面食らわせたが、次の言葉はアルマを舞い上がらせるのにじゅうぶんだった。

「ふたつ、約束を守ってくれるなら、君を雇おう」

「なんでも言ってください。ぜったい、守ります」

「ひとつは、わたしたちの素性を詮索(せんさく)しないこと。さすがに呼び名がないと不便だろうから、わたしのことは『お館さま(イル ドゥーテ)』、彼のことは『家宰(ミデルテ)』、それから、ときどきわたしを訪れるひとがいるけれど、そのひとのことは『お客さま(イル オスト)』と呼ぶこと」

 名前すら教えようとしない方針は、彼らの背後になにか後ろ暗いものがあることを想像させ、一瞬、アルマをひるませたが、結局、彼女は頷いた。

 青年は微笑んだ。

「ふたつめは、君の監督は(ミデルテ)がする。仕事のやり方も手順も、彼が君に教えるから、多少気に入らないことがあったとしても、言うことをしっかり聞きなさい」

 ひとつめの謎めいた約束にくらべると、驚くほどあたりまえの内容。

 是非もない。

「よろしい。では、あとのことは彼に聞いておくように。君の服は明日までに用意しておこう」

 そうして、アルマ・ダットは職を得た。

 考えれば考えるほど奇妙な出逢いではあったが……彼女にとってこの出逢いは、紛れもなく「僥倖(ぎょうこう)」であった。

 次の日から、アルマは屋敷で働くことになった。

 彼女のために召し使い用の部屋がひとつあてがわれ、お仕着せが二着支給された。召使い用の部屋はほんとうならば三人部屋だったのだか、その部屋を使うのはアルマしかいなかったから、彼女はもてあますほどがらんとした部屋と三つの寝台を独り占めできる身分になった。

 お仕着せは黒の綿(めん)でできた丈の長いワンピースで、白い襟と袖口の小さな飾り(ぼたん)が可愛らしい意匠のものだった。

 ほかの屋敷ならば襟元と袖の折り返しにはその屋敷の家章が刺繍されているものだが、アルマの貰ったお仕着せには、家章の変わりに文字が刺繍されていた。

『不変に偏在せし不在の夜』

 文字の意味するところはこうであったが、読み書きのできないアルマにとっては、なにか難解な模様にしか見えなかった。

 もっとも、読めたところで意味など分かるはずもなかったのだが。

 アルマに仕事を教えたのは、家宰(ミデルテ)だった。

 昼は掃除と洗濯。

 これまで、結局のところ掃除も洗濯もただ道具を与えられてやらされてきただけで、きちんとしたやり方を知らないアルマに、(ほうき)の持ち方、掃き方のこつ、雑巾(ぞうきん)の絞り方、洗濯ならば布地の種類によってどういうふうに洗えばいいか、洗剤はなにを使えばよいかをひとつひとつ丁寧に教え込んだ。

 アルマが失敗しても声を荒げるようなことはなく、また、「ここはあんまり使ってないし、(ほこり)もたまってない」「手順がややこしいからこれでいいや。仕上がりもたいして違わないし」という言い訳で適当に切り上げる彼女の手抜きを見つけても怒りもしなかった。

 ただ、なんどでも呼び出し、失敗したり手を抜いている部分をきちんとやり()げるよう言いつけた。

 それは彼がアルマに対して同僚の親しみを持っていたり、年端(としは)もゆかない彼女が家を出て働かねばならない境遇に同情したりしているわけではなく、彼女に仕事を教えること……それが自分に課せられたことだからやっている、というのは、氷のように無表情に、かつ淡々と指導する彼の態度を見れば明白であった。

 が、たとえ彼の内心でそう割り切っていたとしても、お世辞にも要領のよい後輩とはいえないアルマを指導するその忍耐強さは、驚異的であったろう。

 もっとも、アルマにしてみれば、隠しておいたはずの失敗や絶対分からないはずの手抜きをことごとく見つけ出し、眉ひとつ動かさずに「もういちどやっておくように」と言いつける家宰(ミデルテ)の存在は、怖ろしいばかりだったが。

 そして、夜。

 就寝の前にアルマは家宰(ミデルテ)に読み書きをならうことになった。

 読み書きと簡単な算数ができなければ、炊事をするための重要な要素である買い物ができない、というのが彼の言い分だった。

 アルマにしてみれば、読み書きができなくとも知り合いのおおい街で買い物をすることくらい簡単だと言いたかったが、それで納得してもらえそうにないのは言わずとも分かることであった。

 しぶしぶといったていで席に着き、帳面を広げて羽筆(ペン)を握るアルマに、家宰(ミデルテ)は翌日の献立の材料を読み上げ、ひとつひとつ、綴りを教えながら彼女に書き取らせた。

「鶏肉……は、きのう教えました。書けますか? ……よろしい。鶏肉はその日のうちにつぶした新鮮なものを購入して、数日熟成させる。塩と香味を擦り込んでおくのを忘れないように。塩は岩塩を使うと旨味が増す。春菜……これは初めてですね。わたしが綴ってみせるとおりに三度書きなさい。……よろしい。これは葉が黄味のかかったもののほうが柔らかく、あくもすくなく美味しい。新鮮なものをさっとゆがいて油で炒める」

 とまあ、こういったふうに。

 言うまでもないことだが、アルマが手伝っても手伝わなくても、炊事、洗濯、掃除、お茶の入れ方から髪結い、衣装の支度に至るまで、家宰(ミデルテ)は完璧にこなすことができた。

 一方、「お館さま(イル ドゥーテ)」は、アルマの知る限り屋敷を出ることはなかった。

 なにをするでなく、ひがないちにち本を読んだり楽器に指を滑らせてみたり。

 変化と言えば、ときおり、どこからともなく「お客さま(イル オスト)」が訪れ、短いときには一言二言、長いときには一刻ほども話し込んでいくくらい。

 訪れる客はいつもおなじで、燃えるような銀の髪、蒼い目をした女だった。

 おどおどとお茶を運ぶアルマの存在には気がつかないとでもいうように、ひとことの言葉を交わすでなく、不意に訪れてはいつのまにか立ち去ってしまう。

 その屋敷に勤めて、奇妙なこと、納得できないことはたくさんあった。

 しかし、それはアルマが生まれて初めて味わう、暴力のない暮らし。

 給金も組合の掲示板に張り出されていた額、十日ごとに支給された。

 本来ならばたいした仕事をしていないアルマに、それだけのお金を渡す必要などないはずなのだ。

 その日その日を生きることで精一杯だったアルマはようやく、自分の将来に思いを馳せられるようになっていた。

 それは、このうえもなく幸せなことだった。

 そんな暮らしが、一年も続いただろうか。

 やがてアルマは買い物を任されることになり、屋敷と街を数日にいちど、往復するようになったが、父親に会おうとは思わなかった。

 会えば、なにをされるか分かったものではなかったからだ。

 昔からの知り合いから漏れ聞く父親の消息……まえにもまして生活が荒んできたという彼に会って、なにを話していいのかも分からない。

 会わなければ大丈夫。

 父親がどんどん悪い方向に向かっているのを知っていながら、知らぬ振りをしているのは寂しく、胸の痛むことであったが、いまのアルマにはどうしようもないことだった。

 だが、破綻(はたん)は不意に訪れる。

 幸運のおおくが日々の努力の結果掴み取るものであるのと違って、不運はいつも唐突に姿を現し、ひとを翻弄(ほんろう)するものだ。

 ある日、アルマはいつものように夕食のための食材を買いに街へ出た。

 そして……帰らなかった。

「明日香さま」

 窓辺。

 夜明け前の星を眺めながら月琴を爪弾(つまび)(あるじ)の背に、蒼い髪の男は声をかけた。アルマがいなくなってから、三日が過ぎようとしている。

「わたしに、あの娘の探索をお命じ下さい」

「探してどうするのかな?」

「我が(あるじ)の慈悲に報いることなく逃げ出した罰を、ひとの子は受けねばなりません」

 明日香と呼ばれた黒髪の(あるじ)は困ったような表情を頬に、蒼い髪の従者に向き直った。

「その言葉はいつもどおりだけれど。……どこかいつもの君らしくない。ながくかかわり過ぎたのかもしれないね、凍夜」

「そうかもしれません」

 凍夜と呼ばれた男は、否定しなかった。

「いいだろう。けれど、そう時間をかけているわけにもいかない。今日の蒼樹(そうじゅ)の話では、光の御方、冥府の王……わたしがここにいることを嗅ぎつけた者がいるらしい。あと十日も保てばいいけれど、早ければ明日にもここを引き払わねばならない。でないと、このあたりのひとに迷惑がかかってしまう」

「では」

「『目』を使う。わたしを探している者たちには、わたしがここにいることを旗を振って教えているようなものだけれど。どのみちここは長くないからね」

 明日香はそう言って、目を閉じた。

 そして、静かに瞼を開く。

 両の目ではない。

 (ひたい)を縦に切り裂き見開かれる、深紅の第三眼。

 創世の神々のみが持ち得る、その瞳。

 明日香の表情が険しくなった。

「君にも、見えているね?」

 溜息をつくように、呟く。

「はい」

 凍夜の表情にもまた、変化があった。

 研ぎ澄まされた(やいば)の如き怒り。

 さきほどまで微塵も感じられなかった殺意が、凍夜の白い頬を染め上げている。

「処分はいかがなさいましょう?」

「……任せる。好きにするといい。だが、彼女の父親は放っておくことだ。彼は自分から幸せに生きることを放棄してしまった。……ひとの子である彼女には、それだって辛いことだろう」

(かしこ)まりました。……我が(あるじ)に連なりし者を(おとし)めた者たちに、死を(ねが)わずにはいられぬ天譴(てんけん)をくだして参ります。闇の神名()において」

 言うなり、男はその場からかき消えた。

 一陣の風が室内を吹き抜け、明日香の黒髪を揺らす。

 額の瞳はもう跡形もなかった。

 明日香はどこか疲れた眼差しで窓の外を見遣り、そしてもういちど両の目を閉じる。

 幽かな、溜息とともに。

 ここに連れてこられて、何日経ったろう。

 アルマは熱っぽくぼんやりする頭で考える。

 食事の数から考えて、多分、三日。

 身体の節々が痛み、怠い。

 あの日、市場の出口で父親に会った。

 相変わらず酒臭い、だが、一年会わぬうちになにかが変わってしまった父。その目は(うつ)ろで、狂気の光が宿っていた。

 ……たぶん、阿片か……もっとたちの悪い麻薬。

 逃げだそうとして、殴られた。

 そして、ここにいる。

 気を失っているうちに運び込まれた彼女には、ここがどこだか分からなかったが、自分がどうなってしまったのかはよく分かっていた。

 まわりには、(よど)んだ目を宙に彷徨(さまよ)わせる少女、痛みに呻く少女……五人ほどが押し込まれている。

 そして、耳を澄ませばこの部屋のそとからも、呻き声や叫び声が聞こえてくる。ここと同じような部屋が、いくつもあるのだろう。

 泣く者はいない。

 泣いたとてどうしようもないことはみな、分かっているのだ。

 市の公認の娼館では買えない快楽を求める者がいる。

 まだ女にすらなっていない少女を犯すことに悦びをおぼえる者。

 柔らかい肌を薄く切り裂き、血の匂いに酔いながら女を犯す者。

 娼館で女を買うよりはよほど高い金を出さねばならないはずだったが、それでも、おのれの歪んだ欲望を満たさずにはいられない者は存在する。

 そしてここは、その悦楽のために少女を殺してしまったところで、追加料金を払えば済む……そういう場所であった。

 もちろん、合法の商売ではない。

 アルマがここに連れてこられてすぐ、彼女のすぐ近くでうずくまるように震えていた少女は、部屋を連れ出され、帰ってきたときには指の骨を全部折られ、喉をつぶされていた。

 そして、その晩、死んでしまった。

 アルマにもまた、きのう、客がついた。

 彼女にとって幸運だったのは、その客が同族ではない処女を犯すことを嗜好にし、ほかにおかしな性癖がなかったことだ。

 手首を縛られ、男が自分を貫く痛みに声をあげるたびに殴られ、その跡は痣になって残っていたが、いのちにかかわるような傷ではない。

 非合法なこの場所が、商品である少女を集める方法は簡単だった。

 身寄りのないこどもを捜し、連れてくる。

 あるいは……子を売りたい親から、買い取る。

 どうしても商品が足らなくなる場合を除いては、誘拐などの強引な手段は取らない。こどもを奪えば両親は必死に探し、官憲に訴える。足がつけばなにかと面倒だった。

 そして、貧しい家庭はたくさんあった。

 ……商品には困らないほどに。

 アルマは、父親に売られたのだった。

 おそらく、酒と麻薬を買う金のために。

 自分が父親に愛されているとは思っていなかったアルマだったが、それでも、自分をこんなところに売った父を思うと悲しい。

 そして、もうひとつ。

「お館さま……家宰さま……心配してるかな」

 買い物を任された召使いがその金を持ち逃げし、行方をくらますことはよくある話だった。

 だから、信頼の置ける者にしか買い物を任せることはない。

 はじめてひとりで買い物に行くよう家宰に言われたとき、アルマは天にも舞い上がるような嬉しさをおぼえたものだったが、金銭を持ち逃げした上での失踪……自分の失踪があのふたりにそういうふうに誤解されているかもしれないと思うと、アルマの胸は痛んだ。

 その傷みは、身体の痛みより、身体を犯された悲しみより、ずっと辛い。

 与えられたお仕着せは、アルマが気を失っているあいだにだれかが脱がせ、彼女の手元にはない。

 いまは白い布きれ一枚を身体に巻き付けているだけ。

 それがアルマにはたとえようもなく心細い。

 あの服を着てさえいれば、自分はなんでもできるようになる……彼女はそう思ってきた。

 実際、いまでは掃除も洗濯もひとなみ以上にこなす自信があったし、単語だけであったが日常使う言葉は読み書きもできるようになった。

 おつりを自分でしっかり計算し、肉屋の小狡い使用人たちに小銭をくすねられないようにも。

 炊事だとて、前菜くらいならお館さまにも自信を持って出せるものが作れるようになったのだ。

「ごめん……なさい」

 アルマはだれにも聞こえないよう、声を押し殺し、呟いた。

 これまで、失敗したり手抜きを見つけられたりするたび、家宰に謝ってきたように。

 それが、魔法の呪文でもあるかのように。

「何度も教えたでしょう。目上の者に対する謝罪は、ごめんなさいではなく、『申し訳ございません』と言いなさい、アルマ。もっとも、今回の件で貴女がわたしに謝罪する必要はありませんが」

 聞き慣れた声を背後に聞いて、アルマははっとして振り返った。

 幻でもなんでもなく、蒼い髪、氷結の瞳を持った家宰が、そこに立っている。

「しばらくここで待っていなさい。小用はすぐに済ませます。帰りましょう。お館さまも貴女の帰りを待っておられます」

 そう言ってまっすぐに部屋を出て行こうとする家宰の背に、アルマは「はい」と、頷いた。

 部屋の外には武装した男たちがたくさんいる。家宰たったひとりでどうしようというのか。

 だが、アルマは不安を感じなかった。

 ここに連れてこられて初めて、とめどもなく出てくる涙を手の甲で拭いながら、アルマは自分が救われたことを確信していたのだった。

 その明け方に、そこでなにが起こったのか説明できる者はいない。

 夜が明け、匿名(とくめい)の通報で街はずれの空き家に駆けつけたベルサテ自警団は、空き家の地下でこの世のものとは思えない惨状を目の当たりにした。

 下半身、あるいは手足、あるいは身体の右半分……心臓と頭を除く身体の一部を凍らされ、砕かれた男たちの死体。

 そのだれもの顔が恐怖と狂気に歪んでいたことから、生きたまま氷漬けにされ、そして、意識のある状態で凍って(もろ)くなった部分を砕かれたことは間違いなかった。

 その方法は、だれにも分からなかったが。

 一流の魔法使いでさえ、いちどにたくさんの人数を、しかも、それぞれ局所的に凍らせることなどできなかったからだ。

 地下室に閉じこめられていた少女たちはみな、自警団の手によって助け出された。

 しかし、だれひとりとしてその現場を見てはいなかった。

 ある部屋にいた数人の少女たちは、事件の起こる直前、自分たちの部屋に蒼い髪をした男が現れ、鍵のかかった扉をまるで精霊のようにすり抜けて、それからすぐに部屋の外で怒鳴る声や武器を抜く音、叫び声が聞こえたと証言したが、その精霊のような男の消息は、(よう)として知れなかった。

 そして、最後にもうひとつ。

 助け出された少女たちのなかに、アルマ・ダットの姿はなかった。



Chapter3「ささやかな再会」


「テーミス、次の準備は整っているの?」

「は、はい、いますぐ」

「はやくなさい……いえ、わたしも手伝うわ。もう時間がないから」

「申し訳ございません、アルマさま」

 新緑の香りを(はら)んだ風が、忙しく立ち働く女官たちの声と足音を運んでくる。

 本来ならば靴音が響くような歩き方は、はしたないこととされているが、そうも言っていられないほど急いでいるのだろう。

 王宮の一角。

 議会の開かれる期間、このあたりに部屋を割り当てられるのはカーチェスト大公爵……

 王宮にたくさんある中庭のひとつを横切りながらつぎの会見の場所に向かいつつ、ウィンチェスター公爵は思いを巡らせた。

「つぎの会見はエルザス公爵か。リナ殿かルカ殿……どちらと会うことになっている?」

 突然、(あるじ)に声をかけられ、あわてて予定を確認する一等秘書官。

 ミオの領宰は伯蛇(はくだ)族の者であった。祈化(きか)しておらず、老齢のため今回の議会には連れてきていない。

「はい、予定ではルカさまとなっております」

「そうか」

 前エルザス公爵夫人……いまは未亡人であり、現エルザス公爵の姉である者の名を聞いて、ミオは気分が浮き立つのを感じた。

 もっとも、表情には出さなかったが。

 ひとに自分のほんとうの気持ちを悟られないようにする……公爵を継ぐうえで、ミオが父母にいちばん厳しく(しつけ)られたことだ。

 と、先を急ぐ視線が見慣れぬものを捉えた。

 花壇の脇、封筒が落ちている。

 ずいぶん古ぼけた封筒で、封蝋がしてあったが、それもあまりに古いせいだろう、(ひび)が入り封筒の口が開いている。

 なんの気もなく封筒のなかに入っているものを見れば、耳飾りが一対入っているばかりだった。

 (つた)を模した銀細工を台座に、血の(しずく)の如く紅い貴石が揺れている。

 ほかに手紙のたぐいは入っていない。

 また、封筒には宛名はなかった。

 封蝋には普通、家章を刻印するのが普通であったがそれもなく、ただ、刻印とおなじ方法で文字が刻み込まれていた。

『不変に偏在せし不在の夜』と。

 なにかいわくありげなものでもあり、おそらく、ほおっておけば落とした者が探しに来るような気がしたが、ミオはその封筒を秘書官に預け、先を急ぐことにした。

 このあたりを頻繁に行き来するのは、カーチェスト大公爵の侍女たちだ。あとでひとを使ってこころあたりを尋ね、届けさせよう。

 そう、思いながら。

 一刻ののち。

 エルザス公爵の代理の者……ルカと、話し合うべきことを話し合ったミオは、会合で合意に達した内容を秘書官に筆記させたあと、その文書に署名した。

「あとで写しを届けさせます。公爵夫人」

「ルカでいいわよ、ウィンチェスター公爵。だいたい、わたしは前公爵夫人だし」

 ……ならば、わたしのこともミオとお呼び下さい……そうこころのうちで呟き、しかし、なにも言わずに微笑む。

 彼女のまえで言い出せなかった言葉を目の前に積み上げることができたなら、広大な王宮の敷地ですら言葉で埋まってしまうだろう。

 それは、彼のささやかな秘め事であった。

 彼女に恋をしたのは、彼女が前エルザス公爵シオンの婚約者であったころ。

 そして、いまもなお、恋し続けている。

 だから彼には分かるのだ。

 かつて、彼女の夫がルカとリナを見分けたように。

 彼女の夫が存命であった頃ならばともかく、いまならば、それを口にしてはいけない理由などなにひとつないのだが。

「ところで……」

 ミオが、なにか気の利いた話題でもないものかと、その方面にはいまひとつ心許ない知恵を絞りつつ話しかけたとき、ミオの背後で書類を整理していた秘書官の手元から、封筒がこぼれ落ちた。

 さきほど、中庭で拾った封筒であった。

「あら、手紙なんて珍しいわね。秘書官さん、それは貴方の手紙? それとも、ウィンチェスター公爵に恋文の代筆でもさせられてるの?」

 粗相(そそう)をして申し訳ありませんと謝る秘書官に、立ち上がって気安く声をかけ、封筒を拾い上げたのはルカだった。

「公爵夫人、それは……」

 言いかけて、ミオは息を呑んだ。

 封筒からこぼれ落ちた耳飾り。

 それを見たルカの目はおおきく見開かれ、そして、涙がこぼれ落ちる。

「公爵、これを、どこで?」

 溢れる涙にすら気がつかぬのか、ルカは耳飾りを拾い上げ、胸に抱いた。

「さきほど、中庭で拾いました。場所から考えてカーチェスト大公爵の侍従のだれかの落とし物だと思いますが。……公爵夫人、どうかしましたか?」

「いいえ、わたしは大丈夫ですわ、ウィンチェスター公爵。わたし……嬉しいの。だって、わたし……『あたしたち』が、ずっと探していたものを、ようやく見つけたんですもの」

 その夜、一日の日程を終えたミオは、エルザス公爵リナとその姉ルカの私的な訪問を受け、耳飾りにまつわる数奇(すうき)な話を聞くことになった。

 むかし、彼女たちがエルザスの姓ではなかったころ……リナの占いに導かれてエルザス領に向かう道中、野盗に襲われた彼女たちを助け、旅費を失った彼女たちに旅費の代わりになるものを与えた者がいたという。

 夜の深遠を覗きこんだような瞳と、夜の(とばり)の如き黒髪の青年。

 後年、名前すら知らないそのひとを探してふたりは手を尽くしたが、結局、その消息はつかめなかった。

 また、旅費の代わりにと与えられ、商隊に売った品……耳飾りと外套の行方も、数人の商人の手を転々としたあと、両方ともひとりの男に買い取られたのだという。

 その耳飾りと外套を買い取った男を商人が見たのは、あとにもさきにもそれ一度きりで、店に入るなり、ほかの品には脇目もふらずにそのふたつを求め、安くはない金を即金で支払ったという。

 そして、その男は蒼い髪と、この世の者ではないかのような冷たい氷の目をしていた……と。

 また、封筒の持ち主はあっけないほど簡単に見つかった。

 ウィンチェスター公爵が、大公爵に問い合わせたところ、すぐさま、名乗り出る者があったのだ。

 カーチェスト大公爵付女官長アルマ・ダット。

 髪に白いものが混じる彼女が、その封筒をある貴人から預かったのは、少女の頃。

 彼らが一年暮らしたベルサテ自治都市の街はずれの屋敷を引き払うとき、すくなくはない退職金とともに、その封筒を渡されたのだという。

「これは君が預かっておいて欲しい。渡す相手を探す必要はないんだ。いつか、君はこの封筒を失ってしまう。そうしたら、これは渡して欲しいひとの手に届くことになっているそうだよ。『お客さま(イル オスト)』がそう言うから間違いない。……彼女はそういうのを当てるのが得意なんだ」

 一年間、一緒に暮らしながら名前すら教えてもらえなかった『お館さま(イル ドゥーテ)』はそう言った。

「わたくしは、あの方々がどういう素性をお持ちだったのか、まったく存じ上げません。ただ、とても良い方々でした。いまのわたくしがあるのはひとえにあの方々のおかげです。そう……家宰さまが厳しく(しつけ)てくださらなかったら、わたくしなど、とうの昔にどこかで野垂れ死んでおりましたでしょう」

 アルマ・ダットの言う『お館さま』が闇の色をした髪と瞳を持ち、『家宰』が蒼い髪と氷の目を持っていた……そう聞いたとき、ミオのこころのうちにある種の感慨が浮かんだ。

 ……たぶん、そういうことなのだろう。

『不変に偏在せし不在の夜』

 ミオの脳裏には、封蝋の文字が不思議な存在感を持って焼き付いてる。

 エルザス公爵たちがまだ祈族でなかったころといえば、もう百年以上前の話だった。

 そして、人狼族のアルマが少女だったのは、四十年ほど前。

 そのあいだにはおおざっぱに見ても六十年ほどの歳月が横たわっている。

 そのあいだ、ほとんど歳を取らずにおなじ外見を保っていられる種族は、そうはない。

 祈族、森の民、石化獣族(ばしりすく)、龍族。

 だが、祈族を含め、彼らは種族的に数が少なく、種的な結束も堅い。

 都市を中心にして暮らす短命の種族、人狼族や麝香族、人猫族などとくらべると、その絶対数は百分の一以下だろう。

 種族を離れ放浪する者があれば、そのうわさはすぐに広まる。

 しかも、話に聞く彼らの特徴は、その四種族のどれにも当てはまっていなかった。

 ()えてちかいと思われるのは祈族だったが、祈族のことは社交の場に滅多に姿を現さない者も含め、ミオはよく知っている。

 彼らに当てはまるような者はいない。

 だいたい、祈族であればエルザス公爵だとて探すまでもなく見つけているだろう。

 そう……彼らが何者であれ。

 そのあとの感慨は、言葉にすることができなかった。

「いつか、わたしも会ってみたいものだな」

 慌ただしい一日が終わった夜。

 初夏の甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで、ウィンチェスター公爵は窓を閉めた。

 王都を離れ、自領に帰還するのは五日後の予定だった。


THE END


創世の神は滅び、代わりになる神は存在しているにも拘わらず、ひとは神を世界から放逐し、神もまた、ひとの意志を受け入れている……そういう前提が、この世界にはあります。


絶対者の不在、それは一種の理想かも知れませんが、ひとつの存在に永遠の譲歩を強いているという不安定さの行き着く先を書いてみたいな……というのが、わたしのなかにあります。


まあ、理屈はともかく、吸血鬼ものが書きたいだけなのかもしれません。


ともあれ、みんなが思い思いにずっとむかしの話をしていて、それはそれぞれに大切な思い出で、で、実は……という話を書いてみたいな、というところからこの話は始まっています。

ついでに登場した登場人物の簡単な背景紹介とか、新しい登場人物の顔見せとかも兼ねて……と欲張ってます。


個人的に、性格は全然違うのに容姿はそっくりだったり、女装趣味だったり、恋愛方面に不器用だったりする三公爵家のひとびとは、お気に入りだったりします。

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