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異世界もの

フレイム・ファンタジー

作者: ケン

 いつも通りの日常、学校に行って友達と駄弁り、好きな女の子が来れば緊張しながらもぎこちない会話をしてその様子を友人に笑われる。

 そんなクソ平和な日常が俺は大好きだった。

 だからこそ思う



 ――――――どうしてこうなった。



 ―――――――☆―――――――

「こっちだ!」

 ローブを身にまとっている赤い髪の女の子の手を引っ張り、後ろから迫ってくるティラノサウルスのような二足歩行の巨大な化け物から逃げる。

 その瞬間、後ろから熱風を感じ、女の子の手をグイッと引っ張ってその場に伏せた瞬間、俺の頭上を大きな火球が通過していき、少し前で爆発を起こす。


「トカゲの癖になんであたしの魔法が効かないわけ!?」

「話は後だ! とりあえず逃げるんだ! 早く!」


 怪物に杖を向け、火球を放ち、怪物に直撃して大きな爆発を起こすが相手には一切ダメージが通った様子はなく、むしろ元気になっている。

 怪物が空に向かって咆哮を上げている間に再び走り出し、少しでも距離を開ける。

「っ! 待って! あそこ!」

「洞窟か。あそこに入るぞ!」


 女の子と共に洞窟の中に入り、出来るだけ奥の方に入っていると外から地響きのような足音が聞こえ、口に手を押し当てて呼吸を殺し、過ぎ去るのを待つ。

 ドン! ドン! という音がこちらへ近づくごとに徐々に音の感覚が縮んでいき、その感覚がゼロになると同時に足音がしなくなった時、二人の緊張が最大にまで膨れ上がる。

 相手が去ることを願っているときに足音が洞窟内に響き、もうだめかとも思ったが徐々に足音の感覚が長くなっていき、やがては遠くへと消えていくように小さくなった。


「…………ふぅ」

「し、死ぬかと思った」


 二人同時に大きくため息をついてホッと一息つく。

 どうして俺はこんな怪物がのさばっているような場所にいるんだ……確か俺は奏ちゃんに呼び出されて学校の屋上に行ったんだ……。

 はっきりと記憶があるのはそこで強い風が吹いて奏ちゃんのハンカチが飛んだからそれを取ろうと柵から身を出した時に勢い余って落ち、もうだめかと思ったときに目の前に光の球体が現れてそこに飲み込まれるように飛び込んだら何故か森の中だった。

 そして一番最初に視界に入ったのは今一緒にいる女の子の驚いた表情だった。


「教えてくれ、ここはどこなんだ」

「ここはエリオセダン王国にある王立ビブリオール魔法学園の中にある森よ」

「なんで学校の領地の中に怪物がいるんだよ」

「元々、魔物はいるって言われていたんだけどまさかあんな上位の魔物がいるなんて思わなかったわ……ところであんたはどこから来たのよ」

「……はっきり言えるのは俺は異世界から来たことだ」


 俺がいた場所には魔法や魔物とか言う怪物はいないし、それ以前にこんな広大な森が都会にあるはずがないから異世界であるということは容易にわかる。

 ただ問題なのはどうやって異世界の存在である俺がこの世界へやってきたのかだ。


「恐らくだけど必要としたのよ……それが偶然、貴方だった」

「そんなことで異世界の存在を呼べるのかよ」

「あり得るわ。召喚魔法……もとい魔法っていうものは使用者の想いが強く反映されるのよ。だから時々、予想外のことが起きることだってあるからあり得ない話じゃないわ……何でこんな奴なんか」

「……ちょっと待て。まさかお前が」


 彼女の方を見てみるとぷいっと視線を逸らし、あからさまに不機嫌そうな表情をする。

 不機嫌な顔をしたいのはこっちだ。明らかにあの雰囲気だと告白してくれる感じだった……しかも相手は俺が好きだと自覚している奏ちゃんなんだぞ……あれ絶対告白だって!


「あたしは周りの奴らを見返せるような強い奴が欲しいって言ったのに! それなのに……平民の人間を呼び寄せるなんて……あたしの人生終わったわ」

「いや、勝手に終わらせるなよ。お前何才だよ」

「はぁ? 先にあんたが言ったらどうなの?」

「俺は十七。名前は広野優斗」

「ヒロノユート? ま、いいわ。あたしも十七よ。平民に名のる名は無いけど」


 同い年か……それにしては背丈は小さいな。あ、でも胸は標準以上……ま、ぺったんチビじゃないだけマシじゃないか。


「十七だったらまだ人生やり直せるだろ」

「はぁ? あんたバカ……ってそういえば他の世界から来たんだったわね……この世界ではね、どれだけ魔法を使えるか、どれだけ地位が高いかが重要なのよ。地位が低ければ、魔法が使えなければ底辺の生活しかできないのよ」


 この落ち込みようを見る限り、こいつは平民じゃなくて貴族っぽいな。さっき平民に名乗る名前は無いって言っていたくらいだからそうだろう。

 でも魔法か……二次元の産物だったものが実際に存在する世界に来てしまうとは……でもあれは絶対に告白だったね。あ~今頃告白受けて彼女になってキスしてたんだろうな~。


「底辺の生活でも生活出来ればいいじゃん」

「そういう問題じゃないのよ……平民ならそれでもいけるけど……貴族、特に上位貴族はそうはいかないのよ。常に実績を求められ、両親の目に敵う実績を出さないとすぐに失敗作扱い」

「酷い話しだな。俺の両親なんかテストで二十点とかとっても今度頑張れって励ましてくれてたぜ?」

「それはただ単に諦めてたんでしょ」


 まぁ、高校に入って色々と遊んでばかりだったからな。これでも一応は中学時代は君は天才だって言われるくらいの学力は保持していたんだけどな。

 家が貧乏でとてもじゃないが奨学金が借りられない状況だったから名前を書くだけで入学できる高校に進学して主席特別待遇でほぼタダ同然で行ってたのも原因の一つだな。


「はぁ。夏休みの間に使い魔を作らないといけないのにこんな状況じゃ使い魔どころの話しじゃないわ。あ~あ。なんで炎の龍(フレイム・ドラゴン)とかウルフェン族最強のウルフマンとかじゃなかったのかしら。一応、才能はあるのに」

「その使い魔を呼び出すのってさ、魔法使うのか?」

「もちろんよ。召喚魔法(サモン)で呼び出すの。呼び出せる魔物や精霊は使用者の才能が大きく反映されるのよ。中には天使を呼び出した人だっているんだから」


 天使ね~……そういやこっちの天使ってどんな感じなんだろうな。やっぱり美人で頭の上に光のわっかがのっかてるのかな? 流石に天使がブサイクだったらなんかイメージが崩れる。

 ま、事実は小説よりも奇なりっていうし。


「ま、もう一度召喚魔法を使えばいいんだけど」

「……で、いつ俺を戻してくれるんだ?」

「さあ?」


 洞窟の狭い中にそんな声が響きわたる。

 さあって……今こいつさあって言った!? まさかこっちに呼び出したのはいいけど向こうの世界に戻すことができないなんて言う話じゃないだろうな!?


「勘弁してくれよ!」

「うるさいわね! あたしだってあんたみたいなよわっちい奴を呼び出す気なんてサラサラなかったんだから! 第一、平民が貴族のあたしに楯突くな!」

「貴族も平民もするかボケ! 早く俺をもとの世界に返せ!」

「バ、バカ!? 今あたしのことをバカって言ったわね!? エリオセダン王国の中でも長きに渡り存在しているこのアリエストス家の次女であるこのあたしをバカ!?」

「あぁ! バカだよ! バカバカバーカ!」


 直後、赤い髪の少女は片をぶるぶるふるわせながら杖を握りしめ、それをゆっくりと上に向けると鬼のような表情で俺を睨み付ける。


「ま、待て。何をするきだ」

「馬鹿な平民には……お仕置きよー!」


 眩い光が杖から放たれたかと思えば凄まじい爆音とともに爆風が俺を襲い、背中から地面に叩き付けられたかと思えば上から瓦礫の山が降り注いできて腹やら顔やらにぶつかる。

 さっきまで感じなかった眩しい光を感じ、目を開けてみるとなんと洞窟の天井にぽっかりと大きな穴が開いている。


「こ、これが魔法けほっ」

「ふん! 分かった? 金輪際、あたしにバカなんて言わないことね」

「う、うっす。ごっほっ」


 服についた砂を払い、立ち上がろうとした時、奥の方で何か光ったように見えたので洞窟の奥の方へ進んでみるとさっきの爆発で開いた穴の中に剣が一本、突き刺さっていた。

 試しに剣を抜いてみると刀身は今までに何度も人を斬ったことがあるのか赤黒く汚れており、持ち手の部分も若干、黒ずんでいる。


「何よそれ」

「埋まってた」

「……多分、大戦時に使われていた剣ね」

「戦争が昔あったのか」

「ええ。三十年ほど前に停戦協定が結ばれたけど今でも小競り合いはあるわ。ここも学園が立つ前は戦場になっていたって聞いたことがあるわ」


 つまりこの剣はもう二度と剣は握らないっていう事を込めて埋められていたってわけか。

 と、その時、今の今まで降り注いでいた光が急に消え、洞窟内がうす暗くなったので何気なく顔を上げてみるとそこには大きな目をギョロギョロ動かして俺達をジーッと眺めているさっきの怪物がいた。

 …………オーノー。


「「ギャァァァァァァ!」」

 二人して叫びながら洞窟から脱出し、走り出すとそれを追いかけるように怪物が大きな口を開けてこっちへと向かってくる。

 こいつが魔法使ってあの洞窟を爆破してなけりゃあいつに見つからずに済んだっていうのに! あーもう! 何で今日はこんな不運なことばかり起こるんだよ!


「なんとかできねえのか!?」

「……一つだけあるわ」

「どうすればいい!?」

「あんたがあたしの使い魔になるのよ」

「つ、使い魔になればこの状況から抜け出せるのか」

「ええ。使い魔になれば身体能力は飛躍的に上がるわ……でもあんたなんかと」

「今生きるか、死んで後悔するかだったら生きようぜ」


 そう言うと少し考える素振りを見せるが決心したのか急に立ち止まったかと思えば足元に魔法陣が浮かび上がり、そこから赤い輝きが放たれる。

 彼女が俺の手を軽く引っ張った。


「っっっ」


 彼女の顔がドアップで映るとともに唇に柔らかい感触が広がった瞬間、足元の魔法陣からまるで濁流のように炎が噴き出し、怪物を一瞬で飲み込み、周囲を炎の海と化する。

 草木は一瞬にして燃え尽き、周囲はどこを見ても炎が燃え盛っている。


「……い、良い? これからあんたはあたしの使い魔よ。一生……あたしことを護りなさい」

「お、おう」

 炎の中、恥ずかしそうに頬を赤くしながらそう言う彼女は美しく見えた。

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