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90.【番外】それは、死亡フラグだったのです。

今回は、ミオのクラスメイト、玉名さん視点です。

 アタシがそいつを見たのは、移動教室から戻ってきたときだった。


「やばい、やばい、オレが死んだら骨は拾ってくれ……あぁ、でも、死にたくねぇよ。どうすりゃいいんだよ、恩田ぁ」

「俺に言われても困るって! 俺なんかに羅刹をどうにかできるわけねってばよ!」


 なんか知らないけど、諏訪っちが恩田になんか縋りついてた。何あれ、ホモってんの? このクラスにはすっごく腐ってる天瀬がいるんだから、そういうのって天瀬に対するゴホービってやつにしかなんないんだけど?

 あぁ、ほら、やっぱり天瀬がチラチラと二人を見ながら、ノートに向かってる。アタシ知らないからね。


 それにしても、3年に上がってから、クラスの離れた諏訪っち見るの久々かも。一応、声かけとこっかな。


「ちょっと、オンダも諏訪っちも何ホモってるワケ?」

「玉名ぁ!」

「えぇい、こっち来んなっての! アタシは彼氏一筋なんだから抱きつこうとかすんなって!」


 迫ってきた諏訪っちの手を振り払うと、何故か潤んだ瞳で見られた。正直、オトコが涙目で睨んでも可愛くもない。


「あー、玉名。諏訪のやつ、めっちゃ弱ってるからさ、気ぃ遣ってやってくれってばよ」


 どこぞの忍者みたいな語尾のオンダがウザい。マジウザい。どうしてこいつとまたクラス同じになっちゃったのか。ミオと同じクラスなのはいいんだけどね。

 ミオは日本史の授業、アタシは世界史の授業、と別れていたから、クラスにはまだミオの姿はない。一緒に世界史とろうと思ってたんだけどね。


「無理なのです! 私と世界史の相性は最悪なのです!」

「えー? でも、人名とか画数少ないし、いいじゃん」

「やたらと『ス』で終わる名前のオンパレードではないのですか! それに『中国で~な頃、ヨーロッパでは……』みたいな同時進行に耐えられないのです!」

「そう?」

「そうなのです!」


 こんなカンジで猛反対されちゃったから、ま、仕方ない。


「で、何があったってワケ?」

「玉名……、もう死亡フラグ立ったからさ、後は骨拾ってくれよ、ふ、ふふふ……」

「いいから話しなさい」


 自分の不幸に酔ってる諏訪っちの頭を容赦なくシバく。授業と授業の間の休み時間は貴重なんだから、そんなことで無駄にすんなって。


「……さっきさ、移動教室のときに、須屋とぶつかったんだよ」

「そんだけ? 別にそんぐらいで羅刹に殺されるわけないでしょーよ」


 そう。羅刹も同じクラス。

 これ、ちょっと作為的なものを感じるんだけどさー。教師陣が買収されてるってコトないよね? でも、クラス分けの話を振ったときに、ミオがビミョーに顔逸らしてたのがチョー気になるんだよねー。


 正直、アタシは羅刹とミオが付き合うのには反対だった。

 だって、ミオよ?

 可愛くて、巨乳サマで、まじめで、お金に苦労してたミオ。

 名前順で席が前後になったから、よく喋ってたけど、聞き上手だし、アタシの彼氏話もイヤな顔せずに聞いてくれる、ほんっとイイ子なのよ。

 羅刹は顔は怖いし、暴力振るうし、人殺しててもおかしくないし、学校にはあんま来ないし、イイとこなしじゃん? 釣り合うって考える方がオカシイでしょ。


 ただ、ミオから羅刹の話をぽつりぽつりと聞くようになって、アタシもちょっとは考えを変えたわ。

 確かに、理由なく暴力に訴えることはしてないみたいだし、頭もいいし、顔は怖いけど、滅多に来なくても、ミオに対する執着は隠さなかったもんね。学校に来た日は必ずミオと一緒にお昼食べてたし。オクテなミオを無理やりどうこうすることもないみたいだし?


 だから、諏訪っちが「殺される」なんて考えるのも筋違いでしょ。羅刹が怖いからって、ちゃんとソイツのことも見ないのはダメだわ。諏訪っちマジでダメンズだわ。


「いや、違う。違うんだ玉名。誤解だ」

「はぁ?」

「あれは不可抗力だったんだよ!」

「何が。っつーか、マジ意味不明」


 諏訪は周囲をきょろきょろと見回すと、アタシにこそっと小声で囁いた。


「ぶつかった拍子に、須屋にパイタッチ」


 一瞬だけ、視界が真っ赤に染まった。でも、それは、本当に一瞬だけ。不可抗力っていうのもあるけど、アタシが怒り狂わなくても報復はいくと確信したから。


「諏訪っち。香典包んだげるから」

「ちょ、おい、玉名ぁー」

「オンダとセットで死んでくればぁ?」

「なんで俺も!」


 分かってない。分かってないよアンタたち。


「オンダもとっくに羅刹の怒り買ってんじゃん? いつヤられたっておかしくないの自覚しなよ?」

「いやいやいや、最近は別に―――」

「ミオのノート借りたでしょ」

「あぁ、須屋のノート見やすいんだよ。だからテスト対策には……って、それで?」

「ミオっちに感謝しなよー? 羅刹にバレて、頑張って取り成したらしいからさー。そうでなかったら、とっくにオンダは土の下」

「げぇぇぇっ!」


 オンダ、その不安定な立ち方で驚くのやめなっての。オンダがやると見苦しい上に、そのうち腰やるよ?


「もういっそのこと、二人でコンビでも組めばぁ? オンダと諏訪っち、二人で『死亡フラグーズ』とかさ」

「今度の文化祭でお笑いでもするのですか?」


 ひょいっと会話に加わって来たのは、日本史の教科書一式を抱えたミオっちだった。


「違う、いや、違わない、じゃなくて、須屋、そのさっきは―――」

「あ、諏訪くん。さっきはすみません。ぶつかってしまった上に下敷きにしてしまって。……重かった、ですよね?」

「いや、いやいや、全然!」


 慌てる諏訪っちの視線が、ちらちらの自分の手にいくのが見えた。あー、下敷きになった拍子にあの手にミオっちのお胸様が当たったわけだー、サイテー。


「お帰りミオっち♪ こんなの放っておいていいんだから、思う存分下敷きにしてやんなって」

「玉名さん? そんなことできるわけがないではないですか」

「いーからいーから。ほら、次の数学の準備しよー。宿題どうよ? 大問3とか苦戦しなかったー?」


 ぐいぐいぐい、っとミオを自分の席へ押し出して、アタシはくるりと諏訪っちに向き直る。


「どうでもいいけど、そーゆーこと口にすればするほど、死亡率上がるからね」

「っ!」

「じゃねー」


 ひらひらと手を振ってミオの所へ急ぐ。在学中に同級生が亡くなるなんてことにはしたくないから、アタシは黙っとくけどさ。


―――一週間もしないうちに、羅刹に脅されたって諏訪が泣きついてきたのを見て、アタシは羅刹の情報収集能力の高さにヒヤリとしたわけだけど。

 ま、それもミオに対する溺愛の表れってコトで、あんま気にしないことにした。少なくとも、ミオに近付くヤローに対して、ってだけで、アタシやキホはもちろん、やたらとミオの巨乳を羨ましがるハナにも何もないしね。悪ノリが過ぎるハナでさえ無事なら、羅刹はそうそう女には手を出さないってことだろうし。


 とりあえず、ミオが泣かない限りは、羅刹との仲も黙認しとくわ。


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