73.それは、現実逃避だったのです。
えー、これ、絶体絶命という危機的状況ですよね。
どうして、一目散に逃げたい自分と頑張って戦って蛇と情報交換をしているというのに、新たな蛇が来るのでしょうか。
私、蛇が好きなわけでも、蛇コレクターでもないのですよ?
「邪魔だったかな、サタ?」
「いいえ。ちょうどドゥーム氏のことを話題にしていたので、そんなことは」
入って来たのはドゥームさんです。しかも職場仕様なのか、スマイルゼロ円ではなくスマイルゼロです。こんなドゥームさんを見るのは初めてなのですけど! これが噂のドライアイスですか!
「やぁ、ミオちゃん。ごめんね。キミが来てるって聞いたから」
「はぁ……」
聞いたって誰にですか? なんて野暮な質問はしませんよ。それこそ藪蛇ですから。同じ藪でも蕎麦だったら良かったのですけどね。
「ついでにサタもいるなら話が早いね。ちょっと時間をもらえるかな?」
「えぇと……」
これ、私が返事できる場ではないですよね。徳益さんにも相談できる話でもありませんし、自然とドゥームさんの次に権限のある佐多さんに視線を移してみると、……あれ、なんでしょう。この表情。やっぱりね、とか言いたげです。
『Enfin je l'ai regardé. Être pour cela ; ou à une jeune dame ?』(やっぱり目をつけていたんですね。こちらにでしょうか、それともお嬢さんに?)
『Croyez-vous que vous l'avouez ? Vous ne devriez pas sous-estimer beaucoup moi. Ne mettez pas ma fille sous le fait de griffer par son fils ?』(それを白状すると思うかい? あまりワタシを甘く見ない方がいい。自分の息子を通してワタシの娘にちょっかいかけないでもらえるかな?)
『Il n'y a pas une telle intention. En plus, parce qu'elle est une belle-fille future.』(あなたを甘く見ているつもりはありませんよ。それに、将来の義理の娘ですから)
『Complètement détestable. Puisque je suis allé être déjà entouré par l'autre homme si je crois qu'une jolie fille était capable de le faire.』(まったく忌々しい。可愛い娘ができたと思ったら、既によその男に囲われようとしてるんだからね)
えぇと、日本語でオーケーですよ? あと、徳益さんが会話の内容を理解しているのか、ちらちらとこちらを見ているのが……なんだか、笑いを堪えていませんか? まさか蛇二人でオヤジギャグの応酬でもしているとか。まさかそんなことないですよね、やだー。
少し険悪な雰囲気で謎言語での会話を終えた後、にっこりと微笑んだ佐多さんが「どうぞ」とドゥームさんに手のひらを向けました。……って、どうして私の隣の席を勧めるのですか!
「やぁ、邪魔しちゃってごめんね、ミオちゃん」
「イイエ、オキヅカイナク……」
と、隣に蛇が座ったのであります! これは、前門の蛇、後門の蛇なのです! 夏にも似たようなことがありましたが、あの時とは蛇の種類も状況も全然違います。でも、今回も四面楚歌ならぬ四面蛇歌なのです! あれ、蛇の歌って何なのでしょう。うーん、頭の中で『ガラガラヘビよ、気をつけて!』なんて警告が聞こえてくる気がします。大きくお口を開けているのでしょうか……ってシャレにならないのです。
「話していたのは、20日の件だろう? リコのいない所で、ミオちゃんと話しておきたかったんだ」
「ハァ……」
「ちょうどいいから、サタも一枚噛んで欲しいな」
「メリットとデメリットによりますね」
もっと平和的な蛇の歌はないものでしょうか? 甘くて酸っぱいヘビイチゴはいやなのです。もっと、こう、牧歌的な……
「おや、サタにとっても、アレは目障りな存在だと思うけど?」
「そうだからと言って、貴方に協力する理由にはなりません」
そうでした! チームにょろにょろの歌があるではないですか! あれならばほのぼのとしています。だっぴーニューイヤー、なんて時期には一月ほど早いですが、あの脱力するような歌ならば―――
「それなら構わないよ。それなら今すぐ退室してワタシの娘と二人にしてもらえるかな。非常にプライベートな家族の話だから、誰にも聞かれたくないんだ」
「そういう話はどうぞご自宅でなさってください。それに、元々こちらのお嬢さんと話していたところへ乱入してきて、少し身勝手なのではありませんか?」
にょろにょろにょろにょろ、チームにょろにょろー。
あぁ、この意味のない歌詞、癒されるのです。
「そう? それなら本人に聞いてみようか。ねぇ、ミオちゃん?」
「ふぁい?」
よ、横からいきない覗き込まないでください! 近い! 近いのです! 残念ながら私は金髪碧眼美青年(?)には免疫がないので、もう少し距離をとって欲しいのですよ! ……なんて、怖くてとても口にできませんが。
「このままサタと話す? それともワタシと話す?」
え……? それ、どんな究極クエスチョンですか? 転落死と溺死どっちがいい?って尋ねているのと同じですよね?
「えぇと、ドゥームさん。やっぱり20日の件は、何か企んでいたりするのですか?」
「……」
切実な質問だったのに、どうして目だけで笑って答えてくれないのですか。というか、普通は口だけ笑って目は笑わないってものじゃないですか!
え、えええええええ、エスオーエス! えすおーえす!
今日もまた誰か、というか私が乙女のピンチなのです!
「さ、さっき、お母さんに内緒で、と言いましたよね? あの人相手に、何かをする予定なのでしょうか?」
「……」
ふ、ふふふふ、お願いですから、少しぐらい表情に何かを出してください。私の予想が当たっているのか外れているのか分からないではありませんか! それとも、私、何か試されているのですか? どこまでドゥームさんの考えを推測できているのか、試験ですか? だったら、解答例を教えて欲しいのですよ!
とりあえず、頑張ってなけなしの頭をフル回転させるのです。
ドゥームさんが、佐多さんのいる前で、私を家族だと言い切ったからには、もうお母さんと再婚していることは公開情報だと思ってよいのですよね? その上で、佐多さんに協力を求めたという流れでしたよね?
思考はちょっとあっち側に逃避していましたが、会話を聞いていないわけではないのですよ。そこまで危機管理ができていないミオさんではないのです!
「佐多さんの行動如何によって、お母さんの安全度が変わるというのなら、えぇと、情報を公開して、協力を仰いだ方がよいの、ですよね?」
「……」
あ、あれー? この答え、間違ってました? 国語の記述式問題は得意な筈なのですけれど。あ、物理の記述は嫌いです。
「……ミオちゃんは、本当にいい子だよね」
「ハァ……」
先生! 質問です! 私はどうしてこの隣に座る義理父に頭を撫でられているのでしょうか? このあと丸呑みコース行きですか……?
「ということなんだ、サタ。こんな健気な未来のオヨメサンのために、障害を一緒に取り除く気はないかな?」
「……なるほど、そういう手段を取りますか」
そういう手段って何ですか! というか、未来のお嫁さん確定なのですか? 確定ではないのですよ?
否定はしたいけれども、私がここで口を出すとややこしいことになりそうなのです。私は貝。貝になるのです。私の口から嫁発言を否定も肯定もしないことが、きっと未来での逃げ道を作るのです。そう信じているのです……! あ、しょっぱい水は嫌なので、淡水希望です。シジミになっても良いですか?
「まぁ、貴方相手に簡単に貸しを作れるとも思っていませんでしたから、協力の内容次第、と答えておきましょう」
「ははは、さすがサタだね。簡単に転がってくれないな」
隣の蛇が笑っているような、笑っていないような。真正面の蛇も笑っているような、笑っていないような……。斜め前の狐は「あっしは何も聞いていやせん」て顔でただそこに座っているだけなのですね。私もその立場になりたいのです。気配を消す技能とかあれば良いのですけど。
ドゥームさんは背広の内ポケットから白い封筒を差し出しました。受け取った佐多さんは、少しだけ眉を顰めてそれを受け取ります。えぇと、小切手とか現金的なアレでしょうか?
……というのは、私の浅い考えだったようで、中は折り畳まれた紙でした。残念ながら裏側からは内容は分かりませんが、万年筆独特の青っぽいインクで何かが書かれているようです。
「……なるほど。だが、これは―――?」
ぶつぶつと呟きながら内容を吟味していた佐多さんは、ふと顔を上げてドゥームさんを見つめました。
「いつから、計画を立てていたんですか?」
「……答える必要性を感じないね」
ひっ。
思わず声が漏れてしまいそうになりました。なんですか、この極寒地獄! -273℃、0Kの世界へようこそ、って誰も来たくて来ているわけではないのですよ?
落ち着くのです。こういうときは素数を数えるとよいって誰かが言っていました。2、3、5、7、11、13……えぇと、次は、17?
「本当に、これを実行に移す気ですか」
「そうでなければ、こんな計画書を作るわけがないだろう?」
ぎゃ! 何か意味ありげな視線が! 佐多さんからアイコンタクトが! 無理なのです! 私には蛇との意志疎通なんてできないのです。だから例の組分け帽子からは「スリザ○ン!」なんて言われないのです。
ふ、ふふふふふ、恐怖も臨界突破で、頭がおかしくなりそうなのですよ。
「ミオさん」
「はい」
仮面です。私は仮面を被るのです。あのバイトを初めて1年半以上経つのですから、仮面の強度もガラスよりはレベルアップしているはずなのです!
さすがにオウランやエリムーの仮面は被れませんが、平静を装う仮面ぐらいは被れるはずなのです!
「ドゥーム氏は、貴女を囮にするようだけど、貴女はそれでいいのかな?」
「はい」
そこは予想の範囲内なので、構いません。お母さんに聞かせたくないと言われた時点で、たぶんそうなんだろうなぁと思っていましたよ。
私の即答に佐多さんが目を丸くしました。あれ、徳益さんもこっちをガン見してます。
「もちろん、それであの人を完全に駆除、じゃなかった、駆逐、でもない、排除できるなら、という条件で、ですよ?」
隣に視線を向ければ、なぜかまた頭を撫でられました。あの、ぞわぞわするのでやめていただきたいのですけど。囮役を承諾するので、撫でるのやめてください。
「もちろん。リコのためだし、ミオちゃんを何度も危険に晒すことはしたくないからね。一度でちゃんとセンメツするよ?」
……あれー? 私の言葉選びも不穏でしたが、もっと不穏な言葉が隣のガイジンさんから飛び出た気がするのです。えぇと、聞き間違い、ですよね? 幻滅とか言ったんですよね?
「そんなわけだから、サタも協力してくれるよね?」
あ、の、お願いですから、いい加減に撫でるのやめていただけませんかね。本当にぞわぞわするのです。
「ん? ミオちゃん、寒い? 空調の温度設定変えようか?」
「イエ、ダイジョウブデス……」
こっそり腕をさすったところを見られていたのか、ドゥームさんに尋ねられてしまいましたよ。そんなことより、そろそろ撫でるのやめてください。
「……ミオさん。本気でうちのトキトに嫁に来てくれないかな」
「あの、そういうのは本人の口から言うものですよね?」
「もう求婚してると聞いてるけど?」
「えぇと、そういうのは本人同士で納得した上で、親御さんに報告にいくものですよね?」
「うちは姑もいないから、条件は良いと思うんだ。来てくれるよね?」
こ、これは、言質を取ろうということなのですか? 未来の嫁という言質を取らないと協力いただけないということなのですか?
できれば明言を避けたいのですが、どう逃げたらよいのでしょう?
「佐多さん……」
ミオさんの顔筋、頑張るのです! 今こそバイトで鍛え上げた演技力が物を言うのです!
「あまり干渉が過ぎると、息子さんに嫌われてしまうのですよ?」
できるだけ邪気のない顔でにっこり、できたと思うのです!
それなのに、どうして真正面の蛇は満面の笑みを浮かべるのですか! 怖すぎるのです!
「これは、トキトに頑張ってもらわないとね、徳益」
「えーと、隊長。何げにミオちゃんは難易度高いと思いますよ」
「そうだね。確かに、この年齢にして、ここまで逃げ道を作るのに長けていると、トキには崩し難いだろうね」
もしもーし? あの、本人を目の前にして、何を二人で話していらっしゃるのでしょうか? 難易度高いとか、初めて言われたのですが。いえ、下手にチョロイン扱いされるよりは何百倍もマシだとは分かってますよ? 分かってますけど……っ!
「まぁ、そこはトキトに期待することにしよう。……ドゥーム氏、協力するのは吝かではありませんが、少し計画の修正を進言しても?」
「もちろん。サタの得意分野だろう? リコに危害が及ばないなら、多少の修正は構わないよ」
「3日、いえ、2日時間をいただけますか。その間に段取りを詰めます」
「分かった。―――ということで、ミオちゃん。詳しい話はその後でね」
「あ……、はい」
詳しい話、というのは、私がいかにして囮になるかという話でしょうか。
「あ、当日の服装は、もうリコが選んでいるから、その日はちゃんとバイトは休むんだよ?」
「え? でも、パーティは夕方からって―――」
「着飾る準備があるからね。その日は朝から予定を入れてあるから」
朝? 6時間以上も何をするというのですか?
「せっかくワタシの新しい家族のお披露目だからね、リコも張り切ってエステとヘアメイクの予定を入れていたよ」
はぁ?
何をしているのですか、あの脳内お花畑は!
「さて、それじゃワタシは仕事に戻るね。あ、そうだミオちゃん。今度、ユキミナベが食べてみたいんだけど」
「あ、はい。……はい?」
ちょ、鍋って……、下準備だけでいいのですよね? 一緒に鍋を食べようというニュアンスではないですよね? 直前に鬼おろしで大根をすりおろすとか、……お母さんに任せても、大丈夫な作業ですよね?
混乱している間に、ドゥームさんは颯爽と退室していってしまいました。
「本当に別人みたいだね、徳益」
「あの人のマンションにお邪魔したときは、あんなもんじゃなかったですよ、隊長」
は! いけません。まだ目の前に蛇が残っているのです。ここで気を抜いたら試合終了なのですよ。
「貴女から見て、義父はどういう人なのかな、ミオさん?」
「……たまに砂を吐きたくなるほど、うちの母を溺愛している人、というイメージです」
嘘は言っていません。本当なのです。
それなのに、どうして目の前の蛇が嬉しそうに笑うのですかね! もう私もここから帰りたいのですけど、いいですか?
「あぁ、唐突な質問にもこっちの意図を分かっていながらぼかすなんて、トキトにはもったいないぐらいだね。どうだろう、わたしの妻になるというのは」
「大変申し訳ありませんが、ここまで年齢が離れた人とそういうことを考えたことがないので、辞退させてください」
するするとお断りの言葉が口を突いて出ます。いや、だって、普通に考えたら同級生の父親と結婚とかおかしいですよね? 年齢差どれだけになるのですか!
「困ったな。これはトキトにちゃんと言い含めておかないと。―――ねぇ、ミオさん。わたしやドゥーム氏のような人間にとって、貴女みたいな人は本当に貴重なのだと分かっているかな?」
「えぇと、私みたいな人間は、意外とたくさんいると思うのですが」
いったい、平凡を絵に描いたような私のどこが琴線に触れるというのでしょう。
「おそらく、貴女のお母さんもそうなんだろう? 身内の情報を漏らさず、言質を取らせず、明確な拒否も示さず曖昧に逃げる。そのくせ、一度身内と認定したら、徹底的に甘くなるんじゃないのかな?」
「……母は分かりませんが、私がそう見えるのは、偏にあの人の存在があったからではないかと思うのですが」
私が物心ついた時には、あの人の陰がちらついていました。いえ、ちらつくどころの話ではありません。私に対して自分が父親だと言って来たり、お母さんにしつこく言い寄ったり、将を射んと欲すれば何とやらで、あの手この手で懐柔しようとしてきたり。
「なるほど。ミオさんの言う『あの人』は、方法はどうあれ、人を見る目と育てる才能はあったみたいだね。―――まぁ、収穫の見込みはなさそうだけど」
正直、私は今、自分のことを全力で誉めてあげたいです。最後の、凍てつくブリザードのような佐多さんのセリフに、それこそ冷却ジェルシートを首筋に当てられたかと思うほどの悪寒を感じたのに、珍妙な悲鳴を上げず、曖昧な笑みを浮かべたままで耐えきったのですから。
やればできるのですよ、ミオさんの表情筋! そろそろ口元がひきつりそうなのはご愛嬌なのです。
コンコン
びっくぅぅっ!と私の肩がおもいっきり震えてしまったのです。これ、既視感ってやつですよね? せっかく蛇が減ったのに、まさか、話題にしていたあの蛇が来るとかですか? 会いたくなくて会いたくなくて震えてしまいます!
「今、使用中ですよー」
「ハヤト。お前宛ての速達小包が届いてる。自分で確認して開封しろ。あと、総務から会議室を取る時は自分の部署名で予約しろと3回目の苦情が来たぞ。ついでに、隊長不在で騒ぎ出したバカ2匹シメといた」
ふわっ!?
ちょ、今、聞きたいけど聞きたくない声なのです! この状況がバレたら、絶対に怒られます! このカシオミニ(持ってませんけど)を賭けてもよいのです!
「あぁ、トキか。もう打ち合わせ終わったから入れよ」
何を言っているのですか、徳益さん!
か、隠れる場所、どこかに隠れる場所を……っ!
佐多さんが何やら面白げに私を見ているような気もしますが、そんなことどうでもよいのです! とりあえずソファの陰でもいいので、どこかに―――
ガチャリ
「打ち合わせが終わってんなら、とっとと戻れよ。まだ報告書と経費の……あぁ? なんでアンタがここにいやがる」
逃げ場を求めて中途半端に立ち上がっていた私は、不機嫌な眼光(石化効果あり)をまともにくらって、ぴしり、と動きを止めてしまいました。あはは、足も動きません。こ、困りましたね、あは、は……。
「そりゃ、ミオさんが打ち合わせ相手だからね。それじゃ、徳益、戻ろうか」
「はい隊長。……あ、トキ、送り主どこだった?」
「清一色物産てあったな」
「また麻雀ネタで偽装したか。いい加減に飽きたし別のネタにしてくんないかな。それじゃ、またね、ミオちゃん」
「あ、はい……」
助けてはくれないのですね、徳益さん。期待はしていませんでしたが。
「トキト。まだ本調子ではないだろうから、早めに上がっていいぞ。あぁ、ついでにそこの『わたしの打ち合わせ相手』を送り届けてもらおうかな」
「……あぁ」
「それじゃ、ミオさん。詳細が決まったらまた連絡するよ」
「れ、連絡というのは、佐多さんから、ですか?」
「さて? どうなるかな。あと、今日の打ち合わせ内容はトキトに話しておいてもらえるかい? 決行日には使えるようになっているだろうからね」
「え……」
「それじゃ、頼んだよ、二人とも」
パタリ、とドアが閉められました。
残されたのは弱っちい兎と、静かに腸煮えくりかえって沸騰している羅刹。
……生きて帰れるのかな?
作中の会話は仏語です。
ありがとうございます。Excite先生。




