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病院のベッドの傍ら、イスに座っている。


目の前に眠る愛しい彼はあどけなく、規則正しい寝息を立てている。


その唇に自分のそれを重ねてしまいたい欲求に駆られる。


「…ダメ。」


その胸元に頬をすり寄せ、赤く痕を残してしまいたい欲求に駆られる。


「…ダメ。」


その体に全部舌を這わせ、高ぶる彼に抱かれてしまいたい欲求に。


「…ダメ、ダメ。」


そう、ダメ。私はもう彼の一部を手に入れちゃったんだもの。


綺麗な宝石、貰っちゃったんだもの。


小さな瓶に入ったそれは、今も私の手の中にあるの。


小さく、彼の瞼が震えた。


彼が起きる。


またいつものように寝ぼけ眼で起き上がって、私を見る。


優しい笑顔で、優しい声で、言うの。










おはよ、茜…って。












気が付くと、俺は病院のベッドに寝転がっていた。


あの歪んだ世界から帰って来たんだ。


猫が言っていた通り、徐々に体の痛みが蘇ってくる。


俺が横たわる傍らには、茜がいた。


「おはよう、葵。ぐっすり眠ってたね…よく眠れた?」


そう言って俺の体に伸ばされる手を、俺は弾いた。


「…っ……!?…ど、どうしたの…?葵?」


「…なぁ、茜。」


俺は小さく呟いた。













「茜、【目狩り屋】って知ってるか?」








茜の顔が強張る。


「…知ってんだな。」


「し、知らな…なに、何言って…葵、ねぇ…」








「俺の目、持ってるんだろ。」








茜は一瞬息を呑んだ後、病室から逃げ出した。









「…良かったのですか、これで。」


病院の中庭で、俺の傍らに座る猫が呟く。


茜はあの後病院の屋上から飛び降りて死んだ。


遺体は小さな空の瓶を握り締めていたらしい。


俺の目は完璧とは言わないまでも奇跡的に視力が回復し、今はぼやけた世界が映っている。


茜が俺の目を奪ったと知った後、俺は猫に一つ依頼をした。


「…死猫。」


「…承知しております。」


猫が死猫と呼ばれる理由、考えれば簡単だった。


死を司る猫だから、死猫。


猫は全ての死を操ることが出来、魂を自在に扱うことが出来た。


だから俺は、依頼をしたんだ。


































「愛する女の命、確かに貴方様へ捧げましょう。」













今、俺の手の中には一つの玉がある。


覗き込むと、中には茜がいる。


苦しみにもがき、ここから出してほしいと泣き叫んでいる。


その涙は美しく、俺は笑顔になる。


いつの間にか猫の姿は無く、俺は俺を探しに来た看護婦に連れられ病室に戻った。










「ほら、また勝手に病室を抜け出して!お姉ちゃんはこんな所にはいないわよ、戻りましょ…あら?なぁに、その薄汚いゴムボール…」


大分昔に書いたものなので稚拙ではありますが、せっかく発掘したのでリサイクルです。

感想などありましたら書いてくださると泣いて喜びます。

あんまりホラーじゃないかも:( ゛゜'ω゜'):

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