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退屈な時間

作者: 朝霧海斗

 退屈な時間というものは、例外なく流れが遅い。同様に、楽しい時間というものは、非常に流れが速いものだ。

 僕が思うに、人の心が時間の流れに影響するんじゃないかと、根拠の無い勝手な憶測をしてみたりする。

 そんなどうでも良いことを適当に考えながら、僕は大きなあくびをひとつ。

 今は古文の授業中。

 年老いた教師が、まるでお経のような意味不明な事を言っている。僕はといえばすでに授業と古文の成績を放棄していて、ノートは真っ白。鉛筆もこの授業に入って、一ミリも使っちゃいない。

 恐らくだが、僕と古文は最高に相性が悪いのだと思う。

 日本語のくせに日本語じゃない古文は、僕に言わせてみたらすでに外国語だ。

 まるで理解出来ない。もちろん、するつもりも無いわけだけど。

 年老いた教師が、黒板に書かれた重要語句らしき言葉の説明を開始した。

 それを聞くつもりの無い僕は、視線を窓の外に移した。

 本当に、こういう時って窓際は便利だ。窓の外を眺めるという、クールな少年を演じる事が出来るのだから。そんな僕の横顔に心をときめかせる女の子が居れば尚良いが、残念ながらそれは無理な話というものだ。

 窓の外はそりゃもう、退屈なくらいに何も無かった。

 荒れた大地が、延々と続いている。

 僕はあの世界の向こう側を知らない。知ろうとも思わない。

 僕の世界はこの学び舎だけで十分だし、みんなが居る寮さえあれば僕は生きていける。

 年老いた教師が、日本語暗黒期の話をし始めた。

 僕はその時代の古文が一番嫌いだ。

 日本語が最も日本語らしくない時期の話で、勘違いした若者達が勝手に言葉を作っては、個性の無い馬鹿達がそれをマネていた時代。

 今から大体、百年前の話。

「良いですか、この――」

 年老いた教師が黒板にスラスラと文字を書いていく。とても綺麗な字だった。

 僕は気紛れから、ついつい教師の言葉に耳を傾けた。

「――チョベリバという言葉。これは、超ベリーバッドの略で、つまりは『最悪』という事になります。ベリーバッドというのは、かつて栄華を誇った米国という国の言葉です。ベリーというのが、とても。バッドというのが、悪い、という意味になります。そんな米国も今では世界崩壊と共に真っ先に消滅した国の一つで、そこら辺は歴史の先生に聞いてみてください。それでは次、そのチョベリバの反対語として、チョベリグという言葉があり――」

 生き残った年老いた教師は、生き残った僕を含めた五人の生徒達に熱弁を振るう。

 僕は思う。

 世界崩壊と呼ばれるあの大災害と同時に、つまらない歴史も古文も、生き残った数少ない国の世界史もその言語も、滅びたら良かったのに、と。




現代において、日本語というものは非常に崩れている。

英語と日本語を混ぜた和洋折衷みたいな言葉が混在し、元々存在する言葉の意味を履き違えて使ってみたり。

少し、日本語に真面目に向き合ってみよう。

……というテーマは一切含まれてません。あしからず。


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