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いもけんぴ  作者: 十奥海
9/13

日常に鬼は住まう

今回はヒロインである水本文歌は脇役になっております。

その代わり新キャラ二人登場

「怪しい」

 教室で自分の席に座って教科書の整理をしていると、机に顔を乗せてクラスの情報通の女子がやってきた。

「うむ、いと怪しけり」

 左側にさっきの女子、右側にパパラッチ男が追加された。

 俺は机の両側に顔だけ乗っけた二人を少し不気味がって椅子を引く。

「なんなんだ、お前ら」

 ばっ

 左側の女子が顔を机に乗せるためにかがませていた膝を一気に伸ばして、俺を見下す形に入った。

「いやぁ、昨日と言い今日と言い、先生に水本さんの介護を頼まれているのを確認してわいるのだがね、今日も一緒に登校してくるところを確認すると、実に怪しい」

 顎に手を添えて探偵っぽいしぐさをして何かを言及しだした。

 いきなりでまったく理解不能であって、俺の顔はハテナマークが付いたような顔をしているだろう。

 だが、まだ言及は終わらないようだ。

「そう!じ・・あいた!」

 ガガン!

 テルも情報通の女子と同じように立ち上がろうとしたが、テルの方は後ろの机との距離が近かったためケツをぶつけていた。

 実にバカらしい。

 しかも、その隣の机の主は。

「あっ!・・・僕の・・1時間の苦労の結晶が・・・」

 前の授業から気になっていたが、授業をそっちのけで教科書も出さないで机の上に、小型ドミノで何か文字をつくろうとしていたらしい。

 そしてその苦労の結晶はテルのケツによってさようなら。

 力なく小型ドミノの残骸に顔を伏せる隣の席の町丘君。

「ああ、すまない町丘。でも今はそれどころじゃ・・・」

 ぶわっと顔を上げる町丘君。鬼の形相とはこのことか。そして鬼の目にも涙もこれのことか。

「なにしてくれてるんだー!」

 普段からやさしい町丘君が声を張り上げてなよなよしいパンチを振りかぶる。

 そのなよなよしい町丘君を見て平手を前に向けて軽く受け止めようとするテル。

 刹那、町丘君の顔色が変わった。

 純真な目からは深い煌きを宿した眼光。足はがっちりと地面を捉え、軽く振りかぶられたはずの拳はドスンと重い音をさせてテルの腹に向かって鋭い軌道を捉えた。

「まじ・・・かよ・・」

 バタン

 前に向けていた手をそのまま伸ばしてテルは倒れこんだ。

 普段やさしそうな人ほど怒らせると怖いと言うのは本当のようだ。

「はあぁぁ・・・・次の時間がんばろう」

 深いため息をつき、町丘君は自席に戻り小型ドミノを袋に戻して机に顔を伏して睡眠に入った。

 てか、前回の授業も次の授業も受ける気は無いらしい町丘君は。恐るべし町丘。

 ・・・・

「んで、何がそんなに怪しいんだ渦子」

 情報通の女子の名前は音傘おとがさ 渦子かこ。短髪で校則ギリギリに髪の毛を染めてきて先生の反応を見て楽しんだりしている、右下に転がってる男と同じ部活に所属す変態の同族である。

 かくも悲しいかな俺は何故か学級新聞部の人と関わりが深く渦子ともなんだかんだで仲が良かったりする。

「う~ん・・・」

 しばらく探偵ポーズを続ける渦子。すると、いきなり腰をおろして顔を俺の顔の高さにして顔を近づけてきた。

「な、なんだよ?」

「噂その一、大路と水本さんは付き合っている」

 ・・・・

 冷静に俺は反論すると逆に変に思われるだろうからスルーして噂その一と言うぐらいだからその二を聞くことに。

「噂その二、大路は水本さんの家に行ってピー、なことまでしている」

「ぶほっ!」

 突飛な噂に思わず吹いてしまった。

「ふむ、反応あり」

 これはあれか、何か反応したら事実無根であっても事実にされてしまうっていう拷問かなにかか。しかも、水本宅に行ったことがもしかしなくても学級新聞部に知られている。

 そんな推測をしていると、渦子の顔越しで奥に見える文歌が何か動きを始めた。

「言っておくが文歌の家に行ったのは認めるがただ送って飯食って帰ってきただけだからな」

「既に、家に上ていると!」

 飯食ったまで言う必要は無かったかもしれないな・・・失態か。

 そしてさっきから気になっているのだが、なぜ渦子はこんなに顔を近づけたまま動かないのだろうか。

 その顔越しには、文歌がおどおどと教卓まで一人で歩いていた。そして教卓で何かを模索している。

「ふむふむ、まあまずまずの情報は得られたわね」

 近づけていた顔を戻して普通に起立の状態に戻して、渦子はメモ帳を取りだした。メモされた・・・

「やはり噂その一も怪しいっと」

「さっきから怪しいってそのことだったのか?」

「ええそうよ。それ以外何があるってのよ」

「知るか!もともと何がなんなんだかわけがわからねぇんだよお前らは」

 とりあえず、右下に転がっている残骸も含めて複数形にしておく。さっきからピクリとも動かない状態を見るといつ起き上がるか分からないが。

 そして、まだ教卓を模索し続ける文歌。何をしているのやら。

「ふっへへへー、学級新聞部は情報を手に入れるためならどんな手段でも取るのだからね~。そのためにちょっと心理テスト状態を作らせてもらったのよ。そのおかげで大路が考えてること丸わかりになっちゃったんだから」

 「はぁー」っと小さくため息をついて俺は時計を見る。10分休みの5分をこいつらに持っていかれてしまったらしい。俺は残りの時間で次の授業の支度をしておこうと黒板の横に張ってある時間割表を眺めてみる。

 すると、次の授業を体育。

「うわっ!次の授業移動じゃねえか!」

「嘘!?」

 俺の事情聴取に気を取られて渦子は、次の授業が何か忘れていたようだ。

「んあ!」

 ついでに絶望に打ちひしがれていた町丘君も俺の言葉に反応して顔をあげていた。

 残念ながら次の授業は小型ドミノで遊ぶことはできない・・・もしかしたら、彼の本業か何かなのかもしれないが。

 そして、教卓をあさり続ける文歌はついに何かを見つけたらしい。

 パッパパー

 とファンファーレが聞こえそうに掲げられた手に収めれていたのは茶色い針状の形が特徴的な和菓子「いもけんぴ」だった。そういえば、朝白帆先生に没収されていたのを思い出す。

 気づくと、既に周りには俺ら5人しかいない事に気づく。どうやら俺たちは次の授業に行き遅れたらしい。渦子のせいで全く気付かなかった。

「あ、言い忘れたけど噂その三にあと一月後に迫った学園祭の後夜祭が無くなるとか」

「そんなことどうでもいいから、文歌連れて早く体育館に行けよ!」

 そう言って、俺は体育着が入っているロッカーに走り去って行った。渦子に背を向けて俺には見えなかったが、その時渦子は何かを楽しむかのような笑みを浮かべていた。

 ちなみに、文歌の細かなお世話は女子たちがしているのだ。だから、体育館に連れて行くのは女子の役割と言うわけで介護は渦子に委託。

 頭にはなまるマークを付けた様な文歌は、何やら渦子に急かされていもけんぴとおさらばして教室移動を始めていた。

 さらば、我が友照亜樹よ。君の事はきちんと先生に、食あたりで倒れたと報告しておくから任せておくのだ。

個人的に大好きな町丘君

この章を作ってる間に思いついたキャラクターだが

今後も文化祭の時とかに大いに使っていこうと思ってます

最初はモブ全開で行かせようと思ってたんですけどねw

あと、タイトルは町丘君のことですw分かり図らかったら、サーセン←


今回はギャグパートでしたが、実はこの章には案外、伏線が張られて頂きました

分かりやすかったかな・・・それとも分かりづらかっただろうか

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