深海魚使いのドミノ技師
さて、ここで俺がしでかした罪を確認しなければならない。ハッキリ言って、良い結果で終わるなんてことは微塵も思っていない。
文歌のことだ。
親父に会いに行くと言って、文歌をパパラッチ二人に預けたことは、大きな罪だろう。文歌の親父に土下座せんばかりの腹のくくりようだ。
あの二人の事だ…………一体何をされることやら。まぁ、何はともあれ文歌に何かあったらあの二人の出席簿の改竄でもして遅刻を大量に増やしてやる。
そんな罰ゲームを考えつつ俺は二人の待つ第三理科室の戸を開ける。
「あかん!そりゃあかん!無理だ!!」
戸をあけた瞬間、照亜樹の限界を告げる声明が第三理科室に充満していた。そいつを視認してみるとまるでツイス○ーでもやっているかのように足場の無い場所に手と足をつかせていた。
足場となる地面は木製で出来た長方形の物体、縦5cm横3cm程度の物体で埋め尽くされていた。いや、照亜樹の周りだけが埋め尽くされていたと言った方が語弊がないだろう。
「そっち!ちゃんと支えとけ!」
さらに、隣を見ると鬼軍曹の形相をした町丘君が居た。
戸を開けた音で照亜樹がこちらに気づいたのか、
「おお!大路!丁度いいところに、こっち手伝ってくれ!」
気づかれてしまった。
「何してんだ?」
「平森君!彼の指導をきちんとしてくれたまえ!なんだあの軟弱な生物は!まだ軟体生物を駆使したほうがちゃんとした動きをする!」
「ええ!?俺結構がんばったよね!ねぇがんばったよね!」
確かに照亜樹は軟体生物より役に立たないかもしれないが、その事実はまだ心の奥底に仕舞ってやれなかったのだろうか町丘よ。
「ま、まぁ照亜樹が深海魚より役に立たないことはさて置いてこの現状は一体どういうことなんだろうか」
「あんた絶対さっき盗み聞きしてたこと怒ってますよね!ごめんなさいね!」
「今更許さん」
「この人怖い!」
盗み聞きする奴のほうが怖いという、言い草をしていたらいつまでも続きそうだからここらで止めておく。そんなやり取りをしている間に、町丘君はすでに仕事に取り掛かっていた。
それよりも、いまだ一言も発することも無くただ目の前で起きたことを享受するだけの状態である文歌が気になる。さっきから、第三理科室の教卓の目の前で車椅子に座り微動だにしていない。
「大丈夫か?」
プルプルと震えながらまだツ○スターをする照亜樹から踵を返し、文歌の方へと向き直る。様子を見るに楽しんでいるようでよかった。もし、怯えていたらパパラッチの遅刻回数は著しく増えていたことであろう。
「ええ、町丘君も来てくれてドミノで遊んでいたところなんです」
「これが?」
一応振り返ってその有様を再確認。
6つの席ずつに分けられた机の隙間を走行するようにそのドミノは綺麗に鎮座している。その合間を縫って機敏に動く町丘君と、軟体生物のようにくねくねと避けていく照亜樹。動きの違いは一目瞭然で、実力の伴う鬼教官とは町丘君のようなことを言うんだろう。しかも普段は朗らかな笑顔をしていて周りを和ませる町丘君。ポテンシャルの高さは計り知れない。
「これはですね、二人がドミノを倒すので私がどのルートを辿ってドミノが倒れたか当てるゲームなんです」
「へぇ~、意外と町丘のドミノ魂は役に立つんだな…………やっぱ、あいつの本職なんじゃね?」
そのゲームが面白いのか否かを問うのはやめておくことにしておいた。
「へ?」
本職とはなんでしょう?と言った含みを感じる声が返される。
「いや、こっちの話だ。さっき白帆先生は呼んでおいたからたぶんそろそろ来るとおもうんだが…遅いな。というか、渦子は何処に消えたんだ?」
最初の壮絶な叫び声で脳裏から消え去っていたが今更思い出してみる。
周りを見回してみるがどこかで、ドミノの手伝いをしている気配も無いし、パパラッチ男が居る所で盗み聞きをしても仕方あるまい。
「あ、渦子ちゃんならさっき用事があるって言って出て行きました」
「それもそうだよな、元々あいつは学校の見回りでここに来たんだからドミノなんかやってる暇もないだろう」
嘆息していると、第三理科室の扉が開かれて白帆先生が現れた。
理事長室であの後どのような会話が繰り広げられたか分からないが、後夜祭中止の企てに加担していたらしいし少しぐらい落胆の表情を浮かべていて欲しいものだ。がしかし、俺の希望も淡く非常に元気な表情で入ってきた。
「お前ら何やってんだ!さっさとドミノ作るぞ!」
「なんでだよ!早くこいつらどけろよ!」
「ん?なんでだよ、ドミノ倒しやらずにまずは何すればいいんだ?」
…………………凜とした表情なのがまた潔い。
根負けして俺は、椅子を文歌の隣に持ってきてこの遊びが終わるのを待つのであった。
深海魚、もとい照亜樹の体力ステータス値が上げる様はまるで懐かしのゲームにあるトロカ○ンEXを使っているようで申し訳なさが少しした。だが乱用するのが町丘。
一年ぶりの更新です。
いやぁ、久しぶりにみたら意外と毎日アクセスがあるようで驚きました
ほかの作品は基本的にはアクセスがないのにびっくりです。
一年ぶりに執筆したのですが、基本構想が自分で固定していたらしく再構築なく出来たのでさほど変更要素はございません。
ってわけで、町丘君降臨。
やっぱ、町丘君は僕大好きです。




