その8
同じネタの繰り返し、偏りがそろそろ出てきそうです。
二話続けて同じようなネタがー、ということがありそう……
どうしてこうなった。
「はい、呼んでみて。お・か・あ・さ・ま。はいっ」
「え、えー……」
もう一度言う、どうしてこうなった。
「もう、恥ずかしがらないのっ」
のっ、じゃないよ。言動がウキウキしすぎだよ、可愛いよ奥さん。美人でこの可愛らしい行動とかやばいって。この人を落とした村長さんは何者なんだ……
養子の話は受ける事になった。
いや、違うな。
あ…、ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
『養子の話をされたと思ったら、私はすでに受けていた』 な…、何を言っているのかわからねーと思うが、私も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…、催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
「今日からあなたは私たちの娘よ。分かった?」
あれ? 強制? いや受ける気だったけどさ。生きていくうえで保護者は絶対必要だからね。無条件で守ってくれる親という存在はありがた、うん、やめよう。この人たちはそんな風に見ていい人たちじゃない。
「なのでまずは、呼び方から変えていきましょう」
返事どころか、私何もしゃべってすらいないよ奥さん。今ちょっと出てきた我ながらクズ過ぎる考えに泣きそうだったよ。
「私のことはお母様って呼びなさい? 母様でもいいわ、むしろそっちを推奨したいわ。かーさまーって可愛く呼んでね?」
テンション高いよ。村長さんはいいのかよ。と、村長さんを見てみると、とてもいい笑顔だった。
「私のことは好きに呼ぶといい。お父様でも父様でもとーさまでもな」
全部一緒じゃんそれ。
いやいや、嬉しいよ、実際。超嬉しいよ。でも子供扱いはやめて欲しいな。
彼が年齢の事を何も言わないのは、そっちの方が私のためになる、とでも思ってるんだろう。勘のいい奴め、もっと別な事に発揮しろ。
「あ、あの、急には難しいですから、とりあえず今まで通りでいいですか?」
「恥ずかしがらなくてもいいのに……」
む、小声過ぎて、難しいと恥ずかしいを聞き間違えられたか? 受け入れられればどっちでもいいが。
「ゆっくり慣れていけばいいわ。ふふふ、今までと何も変わっていないんだけれど、なんて言うのかしら? そう! 楽しいわ、嬉しいわ!」
美人の微笑み来ました! 綺麗です! 可愛いです! 彼もちょっと顔赤いです! 見るな! 心を持っていかれるぞ!
奥さんはその日ずっと高テンションを維持していた。猫かわいがりされた。べたべたくっつかれて、撫でまくられた。疲れるわ……
元の世界の両親と仲が悪いとかそういうのはなかったよ。いるのが当たり前で、自然に甘えてたはず。
その両親に対する思いは、実は特に何もないんだ。それよりこの人たちの子供になれたことが嬉しい。おかしいかなこれ。
安心が大きすぎるのかな? と思う。だって、まったく知らない世界でお父さんお母さんって甘えていい人たちができたんだよ?
「うだー、疲れたー……」
今日もお勉強の時間だ、疲れてはいるがしっかりしなきゃ。
お勉強の時間はしっかりもらえた。さすがに二人の時間は邪魔しないからね? うふふ、と、これまたいい笑顔で言われたのだ。うーむ、複雑だ。
「ははは、お疲れさん」
軽く笑って話しかけてきた。
「人事だと思ってぇ……」
「実際人事だしなー。でも、よかったな。あの人たちなら、何がどう転んでもお前を守ってくれるだろ」
「うん、いい人たちだよね、本当にさ……」
そんないい人たちの家族、娘として迎え入れてもらえた。本当に嬉しい。
「ニヤニヤして見てないで、少しは止めてくれてもよかったのに」
何度こっち見んな! と叫びそうになったか。
「なんだ? 止めて欲しかったのか? あんなに嬉しそうにしてたのに」
なんですって?
「嬉しそうに……してた? 私」
「してたしてた。いつもの何か気を張ってるような顔じゃなくてな? あ、それでも可愛いんだけど」
ナチュラルに可愛いとか言うな恥ずかしい。顔赤くなるよ。
「なんつーかなー。ほんとの笑顔ってのか、それをあの人たちの前で初めて見た気がするよ」
な、は、恥ずかしい! 何こいつ! 恥ずかし殺す気か貴様! ほんとの笑顔って何よ? そんなに今まで表情硬かったのか私は。まさか、今もそんなゆるいニヤつき顔でもしてるんじゃないだろうか。
うん?
「あの人たちの前で?」
という事は、あの人たちの前以外では自然な顔をしていたのか? 逆ならわかるけど……
「この勉強時間の時はちゃんと普通に笑ってたぜ? 言葉も気にしなくていいし、無意識に気が抜けてたんだろ」
「ああ、なるほどねー」
なるほどねー、なるほどねー、なるほどねー。
ん?