その3
れ、恋愛……?
今回は異世界要素がないです。
私それでいいのか……
各話1000~2000字程度にまとめていく予定です。
今日も私は村の奥様方のお手伝い、平均より少しだけ、ほんの少しだけ低めの身長が幸いし可愛がられている。ホントダヨ? そこまで低くないヨ?
彼は男手なので力仕事が主になる。人手が足りないところへ毎日行っているみたい。何ヶ月かしたらムキムキ村人になるんじゃないだろうか。将来私と一緒になってもらう予定なのであまり筋骨隆々にはなってほしくないのだが……まてよ。
いくら小さい村とはいえ若い女性もいるんだ、そこにやってきた未来の筋肉イケメン。
やばい、取られるんじゃないか?
順応性も社交性も高めでそれなりに、そう、それなりにイケメンな彼だ。すぐにこの村で若い女性や奥様方に人気になってしまうんじゃないだろうか。そして誰かと結婚、家を立てそちらへ。となると、私は生涯独身、村長さんのスネかじり虫となってしまう。そして村長さん夫婦が亡くなったら遺産をもらい一人で、じゃない何を考えてるんだ。
別に彼のことを特別好きというわけではないが、私の心の安寧のために彼という同じ世界の理解者が必要だ。どうする、どうするよ私、考えるんだ!
うんうん唸って考えていたら心配された。あぁ、そんな優しい目で私を見ないで……
そうだ、こちらの奥様にちょっと聞いてみますか。
「うん? ああ、村長さんのところに一緒にいるんだっけ彼。いいわよねー あの子。うちの人も褒めてたわよ? 最初はどうなるかと思ったが、覚えもいいし力もある、明るくていい少年じゃないかってね。あんな息子が欲しいなとも言ってたわ」
うおおお、やばい、何だこの超好印象は、何やってるんだあいつは、くそうイケメンめ、無自覚イケメンめ。そうなるともう、時間の問題か……
「そんな彼ともう結婚の約束までしてるんでしょ? みんな羨ましがってるわよー」
と、ニヤニヤしながら突っついてくる。いやんくすぐったい。
なん……だと……
いかんいかん、動揺してしまった。落ち着け私、落ち着いて聞き返すんだ。大丈夫だ、まだ慌てるような時間じゃない。
「い、いったい誰がそ、そんな事を?」
「あれ? 秘密だったの? 村長さんなんだけどね、言ってたわよー。毎日毎晩、ずっと一緒にいようね、なんて愛を語り合ってるとかなんとか」
うおーーーい、村長さん何してはるんですか。確かに一緒に頑張ろうとはほぼ毎日言ってる気がするけど、あ、言ってるわ、愛の語らいにも聞こえない事も無いわ。ぐぬぬ……結果オーライか?
「もしかしてこのことは……」
「もちろん村中知ってるわよ」
なにそのいい笑顔。
とにかくこの誤解を誤解のままとしておかなければ。彼は誰にも渡さないわー。聞こえはいいけど物的な感じでね。
いや、誤解ではなくいっそ真実まで昇華してしまえばいい。そのためにまず何をしたらいいか……
「どうしたの?急に彼のことなんて聞いて。あ、心配?モテそうだもんねー彼」
そう! そうなんですよ! 頭良すぎでしょこの人、結婚して!
「は、はい……」
内心早くしろよと思いつつ急かさずに話を続ける。私は無口系美少女なのだ。
「大丈夫よ、大丈夫。安心していいわよ? 彼あなた一筋で他の子なんて眼中に無いっぽいから」
これまたいい笑顔で言われた。
ほほう、美少女でよかった。私の可愛さにメロメロであるか。この分ならそう焦る事もないだろう。だが彼も若い、ヤリたい盛りの男の子だ、村の若い可愛い子に目が移る可能性が無いことも無い。っていうか絶対移るよ。私背低いし、胸無いし、腰無いし、くびれ無いし……泣きたくなってきた。ちっちゃくないよ! の、ポニテのウェイトレスも胸はあったのにね。もげろ。
「え、ちょっと!? 泣かないで! 大丈夫、大丈夫だから、誰も取ったりしないって、もう……」
泣き出した私を抱きしめて、背中をポンポンと優しく叩いてくれる奥様。
この涙は自虐から出た涙なんですがね。
私の涙に心打たれたのか、彼には手を出すなと村の女性陣に釘を刺しておいてくれるらしい。女性陣にはもちろん若い奥様方も含まれる。
ふむ、これで半分は解決したと思いたい。しかしもう半分、彼が誰かに手を出すという、半分どころか九割以上を含めてるんじゃないかという問題がある。あれ? あんまり解決になってないな……
そうだよ、そう! 彼が手出すじゃん、最初からそっちの心配しかしてなかったじゃん私。うおー やばいぞー まったく解決してないぞー。
彼がいくら私の魅力にメロメロとはいっても、やはり何もできない美少女より、それなりに簡単に落ちるそれなりに可愛い子だろう。誰だってそーする、私だってそーする。
何もできない……?
そうか! 何かさせればいいのか!
「って、できるかーい」
無口系美少女はノリツッコミもテンション低く小声になるのだ。