その16
別キャラ視点のお話は完結後に書く予定です。
このキャラのあの時何を考えていたか、などありましたら、感想か活動報告のコメント欄ににお願いします。
か、勘違いしないでよねっ! 感想を書いて貰いたいわけじゃないんだからねっ!!
…………失礼しました。
「あらやだ、見つかっちゃった、じゃなくて、ね? ええとね? ……そう! そうそう! 心配だったのよ!」
それでごまかされるのは村長さんくらいですよ……
しかし、慌てる奥さんも可愛いな。よし、許した!
「怒ってませんから大丈夫ですよ。心配して残ってくれてたんですよね」
この素敵素晴らしい人のことだ、実際本当に心配して残ってくれていたんだろう。うんうん、きっとそうだ、そうに違いない。
「いや、絶対楽しそうに聞き耳立ててただろこの人」
うるさいな、こんないい人を疑うとは……。絶対に許しませんよ! 許されざる角度で言う、のはやめておこう。
「失礼な事言っちゃだめよ。奥さんがそんな事するわけないじゃない」
「はうっ!」
「おい、反応してるぞ」
締まらないなぁ……、人が信じようとしたところでこれだよ。
……にやり。
「気のせいよ、聞き違いよ、他人の空声よ。私は……、お母様を信じているわ!」
「あうっ!」
「……ねえお母様? お母様はそんな、盗み聞きなんてしませんよね?」
「はうあうあっ!!」
「その辺でやめてやれよ……」
「何をよ? ねぇ、お母様? ただ、たまたまドアの近くにいただけですよね?」
「ああぁ、やめて……。そんな可愛い顔で、キラキラした眼差しで見つめないで……。心の汚れた私を見ないでー!」
しまった、やりすぎたかな。いやしかし、楽しいなこれは。
「ごめねごめんね。初めは本当に心配だったから外で待ってたんだけど、ついつい会話が気になっちゃってね。出来心なのよ、初犯なのよ、許してね?」
「ふふ、最初から怒ってませんよ」
この人に他人を怒らせるようなことができるとも思えない。
「そ、そう? ホントに嫌われちゃうかと思って焦ったわ……。でも、ふふ、ふふふ」
でも? また意味深な笑い方を……
「冗談とはいえ、お母様って呼んでくれたのは嬉しかったわ」
「あう……」
やりかえされた。うう、凄い笑顔だ。ホントに嬉しそう。
「そうよ、これを機に呼び方変えちゃいましょう。早く慣れて欲しいわ」
ちいいい。まさかこんな流れになるとは。いや、でも、うーん。
「そうだなー。いい加減ちゃんと呼んであげろよ」
人事だと思って乗っかってきたな……
「まだ恥ずかしいですよ……」
「恥ずかしい事なんて何もないのに……」
「そうだよ、簡単だろ?」
くそう、またこれか! 私一人狙い打ちか!
「そうよね、簡単よね。だからね」
奥さんはここでクルッと彼に向き直り。
「貴方も母さんって呼びなさいね?」
「しまっ! こう来るか! 油断してた!」
ふはははは、ざまぁ。あなたも道ずれよ、死なばもろともよー!
「さあ、さあさあ、二人とも? 早速呼んでみなさーい」
笑顔でじわじわ攻めて来る奥さん。どうする……
これは、あれだね、私の家に代々伝わる伝統的な戦いの発想法を使う時が来たね。
キッと、彼にアイコンタクト。
コクッと、頷く彼。
よし、逃げよう! 逃げるんだよォ!
「あ、俺ちょっと村長さんのところ行って来ますね!」
「私も行って来ますね!」
じゃ、闇系の仕事が今からあるからこれで。
「あん、もう。逃げなくてもいいのに……。ふふ」
「一応村長さんのところ行こうか……」
疲れてる彼。そうだね、疲れたね…、プロテインだね。プロテイン?
「そうしよっか。どの辺りにいるかな」
逃げ出す時のセリフがセリフだ、一応は会いに行くべきか。
村長さんは朝食後すぐに出かけてしまう。
村長さんの仕事は、村全体の管理だ。壊れてる柵を見つけたら人手を回して直したり、足りない農具やそのほか必要なものをまとめて、行商の人に頼んだり、その行商の人との取引、商談などなど。まだ他にも沢山あるだろう。
あれ? この人凄くね? 家で奥さんと一緒にのほほんとしてるところしか見た事無いよ。奥さんを落とせたのも納得か?
家庭に仕事は持ち込まないタイプの人らしく、家ではのほほんとしたいいおじさんにしか見えない。
「村長さんってさ、お仕事多いんだよね、確か」
「あー、やっぱ迷惑になるか……。やめとくか?」
あ、そっか、邪魔になっちゃうかな。
「奥さんにああ言った手前、顔を見るだけはしに行きましょうか。それに、どんな風に仕事してるか気になってきちゃって、ね」
「それは確かに気になるよな。あの人がテキパキ人に指示出してるところは想像できないな……」
「ねー。商談とか絶対だまされてる光景しか浮かばないよ」
二人して失礼な事を言ってる気がするが、本人の家での生活態度を見てしまっているのだからしょうがない。
「うー、どんどん気になってきたわ」
「ははっ、ひどいな。あ、それじゃさ」
「うん?」
「明日、村長さんについて行ってみるか? 仕事手伝いますってさ」
お? それはいい考えじゃないの。たまにはいい事言うねこいつも。
「うん、そうしましょうか。ふふ、楽しみになってきた」
「よしっ。今日は普通に別れて仕事行くか! 明日が楽しみだな」
どうせ逃げる理由に使ったことは奥さんも分かってるんだ、今は本当に会いに行かなくてもいいだろう多分。
「帰ったら聞いてみようね。駄目って言われるかもしれないしね」
「お前が頼めば断られる事はまず無いと思うけどな」
いやー、どうだろ。確かに駄目って言われる想像はできないが……。でも、少しでも渋るところを見せたら即座にやめよう。
少しでも渋るっていうのも想像つかないわ……
まさかこんな軽い気持ちでの行動が、あの悲劇を生むことになるとは、え? 悲劇(笑)? 喜劇?
やっぱり締まらないなぁ……
さて、やっとお話が進みそうです。進むといいな……
恐らく完結まで続く一日一話更新。これからもよろしくお願いします。