その10
新章突入! ということは特にありません。
今までとは少しだけ違う空気を感じてもらえればいいなと思って書いています。
自分で読んでても分かりにくいんですけどね……難しいです。
「あ、奥さん」
しーん。
あれ? 聞こえてないかな?
「あの、奥さん」
つーんとそっぽを向かれてしまった。なにこの人超可愛い。
「おくさーん?」
「つーん」
声に出して言うとか! 萌えた! 萌え死にそうだ!
ほんの数日でいきなり呼び方は変えれないって……。分かってよー
「ううう、おか、あさん?」
「!」
あ、こっち向いた! 嬉しそうだ! でも首を振られてしまった。えー……
「お、お母様?」
「……!」
あ、プルプルしてる、我慢してる。ええい、やるしかないか、ここで引いたら負けだ! 何の? 何かのだよ!
「かーさま?」
首をかしげ、上目遣いで言ってやる。どうだ!
「ああっ! もう駄目っ! 我慢できないわっ!」
「わぷっ」
ダッシュで抱きつかれてしまった。ふふふ、私の勝ちだ。
「ごめんね? 意地悪してごめんね? こんなお母様を嫌いにならないでね?」
何勘違いしてるんだ、まだ私のターンは終わっていないぜ!
「な、ならないです。かーさま大好きですー」
「…………!!」
声にならない叫びといったところか。
完 全 勝 利 。
勝ったの奥さんじゃね?
オイそこの二人、横向いて笑いを堪えてるんじゃない。なに笑ってんだ殺すぞ。
どうやら奥さんはこっちの可愛らしい人柄の方が地のようだ。
初めは、私のあまりの可愛らしさに超絶甘やかししようと思ってたらしいが、人様のお子さんを預かる、という理由からなるべく甘やかし過ぎないようにしていたんですって。
ちなみに彼はもっと前から知っていた。毎日私が寝てから三人で話をしていたとか。何だよそれ、教えてくれよ。
「お前体は子供だし、寝るの早いからな、俺はあの時間じゃまだまだ眠くはならないよ」
体は子供! 頭脳は女子高生! その名は! まで考えて。
「誰が子供よ、誰が」
「かーさま大好きで」
「ごめんなさい子供でいいです忘れてください」
「あはははは」
「もう……」
うん、いいね。自然に笑えてるね、私も彼も。
あれ? 周りの人、何かニヤニヤし過ぎじゃないか?
最近私は彼と外仕事に行くようになっている。農作業を手伝う彼のお手伝いだね。
日差しが強いから使いなさい、と渡された麦わら帽子っぽいのをかぶって彼の後をくっついて行って、たまに簡単な作業を手伝うだけなんだが。
他の作業してる村人の眼差しが超生暖かい、みんなニヤニヤしてこっちを見ていた。
むう、何よ。そんなに子供っぽいかな。帽子か? この帽子のせいか? くそう、脱いでやる。服じゃないよ帽子だよ!
「あ、コラ、帽子外すな」
彼に即戻されてしまった。
「んー? 疲れたか? 少し休憩しようか」
疲れるも何も、ほぼ歩いてるだけだよ。ちょっと暑いけどそれだけだよ。
「ううん、全然? 疲れるほど仕事して無いよ、私」
「いや、日差し結構強いしなぁ。無理すんなよ?」
帽子ごとグリグリと撫でられた。やめろ首が痛い、力強いんだよアンタは。
「無理はしないって言ったでしょ。疲れたときはあなたにちゃんと言うわ」
「うん、そうだったな。よしよし」
だから撫でるなってば! いい笑顔で撫でるなって、恥ずかしいんだから!
ぬ? また視線の生暖かさが増したような気配。
微笑ましい兄妹愛だうんうん、とでも思ってるのか。
しかし暑いな、首まで熱いよ、耳も熱い、帽子かぶってるんだけどねー
今回読み直しをしてて思ったんですが、私ちゃん、ちょっと暴言多いんじゃないかな、と。
もちろんネタなんですが、知らない人には暴言にしか見えませんよね……
とりあえず「何笑ってんだ殺すぞ」が危険かな……