ドラえもん転生、お断り
女神様が差し出した転生先一覧を眺めていて、思わず手が止まった。
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ドラえもん。
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転生先でのミッションは一つ。
野比のび太が未来に莫大な借金を残さない程度に、更生・成長させること。
「楽勝じゃん。」
僕は笑った。
原作は全巻読んでいる。映画も全部見た。未来に何が起きるか知っているし、秘密道具も頭に入っている。
ジャイアンにいじめられる前に助ければいい。
ママに叱られる前に注意すればいい。
映画の敵も、事件が起きる前に止めればいい。
未来なんて、いくらでも書き換えられる。
そう思っていた。
……
試しに、脳内シミュレーションしてみる。
のび太は失敗しない。
宿題も忘れない。
しずかちゃんとも仲違いしない。
ジャイアンにも勝てる。
映画の危機も、始まる前に終わる。
完璧だ。
……完璧すぎた。
のび太は、何も学ばない。
考えない。
工夫しない。
「ドラえもんが何とかしてくれる。」
それだけを覚える。
僕は気付く。
あれ?
これ、のび太を幸せにしているんじゃない。
僕が、のび太の人生をコントロールしているだけだ。
原作のドラえもんは違う。
未来を知っている。
万能の秘密道具も持っている。
それでも毎回、少し失敗させる。
少し悩ませる。
本当に取り返しがつかなくなる直前だけ助ける。
読者には「またドラえもんが失敗してる」と思わせながら。
のび太には「自分で頑張った」と思わせながら。
あのポンコツロボットは。
いや。
あのポンコツを演じ続けた教育者は。
誰にも気付かれないまま、何十年も、原作者が亡くなった後もずっと、のび太を育て続けていたのだ。
未来を知ることより。
未来を変えることより。
人を育てるほうが、ずっと難しい。
僕は転生先一覧を閉じた。
ドラえもん。
難易度、SSS。
……この転生先は、僕にはちょっと荷が重い。




