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ドラえもん転生、お断り

作者: 十四郎
掲載日:2026/07/28

女神様が差し出した転生先一覧を眺めていて、思わず手が止まった。


-----

ドラえもん。

-----


転生先でのミッションは一つ。

野比のび太が未来に莫大な借金を残さない程度に、更生・成長させること。

「楽勝じゃん。」

僕は笑った。

原作は全巻読んでいる。映画も全部見た。未来に何が起きるか知っているし、秘密道具も頭に入っている。


ジャイアンにいじめられる前に助ければいい。

ママに叱られる前に注意すればいい。

映画の敵も、事件が起きる前に止めればいい。


未来なんて、いくらでも書き換えられる。

そう思っていた。


……


試しに、脳内シミュレーションしてみる。

のび太は失敗しない。

宿題も忘れない。

しずかちゃんとも仲違いしない。

ジャイアンにも勝てる。

映画の危機も、始まる前に終わる。

完璧だ。

……完璧すぎた。


のび太は、何も学ばない。

考えない。

工夫しない。

「ドラえもんが何とかしてくれる。」

それだけを覚える。

僕は気付く。

あれ?

これ、のび太を幸せにしているんじゃない。

僕が、のび太の人生をコントロールしているだけだ。


原作のドラえもんは違う。

未来を知っている。

万能の秘密道具も持っている。

それでも毎回、少し失敗させる。

少し悩ませる。

本当に取り返しがつかなくなる直前だけ助ける。

読者には「またドラえもんが失敗してる」と思わせながら。

のび太には「自分で頑張った」と思わせながら。


あのポンコツロボットは。

いや。

あのポンコツを演じ続けた教育者は。

誰にも気付かれないまま、何十年も、原作者が亡くなった後もずっと、のび太を育て続けていたのだ。

未来を知ることより。

未来を変えることより。

人を育てるほうが、ずっと難しい。

僕は転生先一覧を閉じた。


ドラえもん。


難易度、SSS。


……この転生先は、僕にはちょっと荷が重い。


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