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5話 魔女と遅れた騎士

血飛沫が舞う。


盗賊たちは何が起きたか理解する間もなく、次々と地面に崩れ落ちていく。


あと一人。


フードの男へと狙いを定め、カルロッタは瞬時に間合いを詰めた。


その時だった。

足元の地面が淡く光る。


「…!」

 

次の瞬間、絡み取られるような重圧が脚にかかった。


“動きが鈍い”。


それでもカルロッタは表情を変えず、フードの男を見据え続ける。


不意に、男が両手を突き出した。

両掌からほぼ同時に、二つの火玉が放たれる。


一つを首を傾けるようにかわす。

だが、もう一つの火球が面前へ迫っていた。

カルロッタは奥歯を嚙みしめる。

 

その瞬間、視界に煌めく刃が割り込んだ。

火球を真っ二つに叩き割るように、長剣が振り下ろされる。

刃先に触れた瞬間、火球は霧散した。


「ちっ!」


フードの男は、思わず舌打ちをする

割って入ってきた男が何者なのか、瞬時に理解した。

 

“魔法が通じない男”。

 

それでもフードの男は、連続して火球を繰り出す。

だがどれも、男へ届く前に霧のようにかき消えていく。


そして、不意にフードの男の動きが完全に止まった。

身体だけではない。

声すら奪われたように、まったく出ない。


(これは……)


フードの男はようやく、自分が魔法によって拘束されていることに気づいた。


「――遅かったですわね」


静かな声が響く。


サイラスが視線を向けると、馬車の傍らにラヴェルナが立っていた。

両手を前に添えた優雅な姿勢のまま、穏やかに微笑んでいる。


「申し訳ございません。“伝令”から聞いた場所が曖昧過ぎて、探すのに手間取りました」


わずかに嫌味を含んだ口調だった。


その返しに、ラヴェルナは一瞬目を瞬いた。

そんな皮肉を言うような男だとは思っていなかった。


だが、それはそれで面白い。


――ふっ…。


ラヴェルナは内心で微笑む。


「あら…それはそれは――」


首を傾げ、片頬に指を添える。


「お手を煩わせたようで。それが遅くなった原因でしたら謝りますわ」


そう言って、軽く頭を下げる。


「まあ、元を辿れば――貴方がいらっしゃったら、このような状況には至らなかったのですけれど」


ラヴェルナがそっと目を伏せながら言った。


「それは――」


サイラスは言葉に詰まる。


「まあ、カルロッタがこうして無事でよかったですわ」


ラヴェルナは、カルロッタへ視線を向けた。


もちろん彼女にも防御膜を張っている。

あの程度の魔法では破られない。


――ならば、なぜそんな言葉を投げるのか。


カルロッタは主の意図を察した。


「もし、カルロッタに傷一つでもつけられていたら……」


ラヴェルナは底冷えするような視線を、サイラスへ向ける。


「わたくし、この森一帯を焼き払っていたかもしれませんもの」


ふわり、と笑う。


――サイラスへの、ささやかな嫌味返しのつもりだった。


だが、【オプスキュリテの魔女の再来】と称される彼女のその言葉は、あまりにも現実味があった。


サイラスの顔から、一気に血の気が引く。

カルロッタだけが、悪趣味な冗談に深いため息をついた。 



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