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4話 魔女と襲撃

ヒヒィンーー!

耳をつんざく馬の(いなな)きと同時に、車体が激しく揺れ、急停止した。


「あら……意外に早かったですわね」


ラヴェルナはカーテンをわずかに開き、車窓から外の様子を確認した。

窓越しから見える限り、馬車を取り囲むように数名の男たちが立っている。

申し訳程度の武装で身を固めているが、男たちの服装には統一感はなく、手にしている武器もまちまちだ。

下世話な笑みを浮かべる姿は、ほぼ間違いなく盗賊だろう。


そのうちの一人が、馬の手綱を乱暴に切り落とした。

弾かれたように馬は前方へ駆け出し、馬車だけがその場に取り残される。


御者台では、切り離された手綱を握りしめたままの御者が竦み上がっていた。

そこへ盗賊が近づき、乱暴に腕を掴んで地面から引きずり落とす。

 

「ヒッ!」


短い悲鳴を上げた御者の目の前で、短剣が振り上げられた。


だが――


キィーン!


甲高い金属音が響き、刃は青白い膜に弾かれた。

 

御者の身体を包み込んだ防御膜が、攻撃を完全に防いだのだ。

盗賊がよろめいた隙に、御者は腰が引けたまま必死に立ち上がり、来た道へ向かって一目散に駆け出した。


「何をしている!追え!」


フードを被った男から命令が飛ぶ。

盗賊の数名が慌てて後を追っていった。


「彼にも防御膜を張っておりますから……街まで“もつ”でしょう」


窓から視線を外しながら、ラヴェルナは背もたれに身体を預けた。


「どうなさいます?」


カルロッタが淡々と尋ねる。


「そうですわね。――とりあえず、お茶でも飲みましょうか。冷める前に」


ラヴェルナの提案に、カルロッタは静かに頷いた。


馬車の外では怒号と金属音が響いている。

だが車内には、優雅な紅茶の香りが満ちていた。




     ―――    ―――




複数の金属音が重なり響く。


「ちっ!」


刃こぼれした短剣を、盗賊は忌々しげに投げ捨てた。


「これじゃ、キリがねぇ!」


「おい、あんた魔導師なんだろ、何とかしろよ!」


盗賊たちの視線が、一斉にフードの男に向けられる。


「……」


顎に手を当て、それまで静観していた男の口がようやく開いた。


「一点集中で攻撃をしてみろ」


そう指示をすると、盗賊たちは一か所に集まった。


「広範囲の防御膜だ。――局所的な防御より強度は落ちる」

 

フードの奥で、男は薄く笑った。




     ―――    ―――




「……」


紅茶に口をつけていたラヴェルナは、ふと窓の方へ視線を向けた。


“金属音は、まだ止んでいない”。


「カルロッタ……頃合いのようですわ」


「わかりました」


カルロッタは静かに立ち上がる。


「ある程度、体力は消耗させているはずですけど……お気をつけて」


「はい」


次の瞬間、カルロッタは扉めがけて大きく蹴りを叩き込んだ。

轟音と共に吹き飛んだ扉が、外にいた盗賊数名を巻き込み、地面へ叩きつけられる。


「なっ……!?」 


「女!?」


動揺の声が上がる。 


馬車から悠々と降り立ったカルロッタは、両腿に忍ばせていた細い短剣を抜いた。

逆手に構えた双剣が、氷のような鈍色の光を放つ。

色素の薄い水色の瞳が、呆然と棒立ちになっている盗賊たちを無機質に見据える。


その姿はまるで、“氷の妖精”。


次の瞬間、カルロッタは地を蹴った。

扉の下敷きになった盗賊の背を踏み抜き、そのまま駆け抜ける。


「ぐへっ!?」


足下から悲鳴が漏れた。

次の瞬間には、最も近くにいた男の喉が裂かれる。


返り血が噴き上がるよりも早く、カルロッタは低く身を屈めてその足を払った。

体勢を崩した男は背中から地面に叩きつけられ、目を見開いたまま動かなくなる。


瞬く間の出来事だった。

盗賊たちは成す術もなく立ち尽くす。 

 

“速すぎる”。


「……」 


カルロッタはゆらりと姿勢を戻し、氷の刃のような視線で周囲を見渡した。

見据えられた男たちは、慌てて武器を構え直す。


「舐めやがって!」 


棍棒を振り上げながら、一人の男が突進してくる。

カルロッタは倒れた男の手から短剣を拾い上げると同時、それを横薙ぎに振った。

男の横腹が裂け、鈍い音を立てて崩れ落ちる。

残った盗賊たちは思わず喉を鳴らした。 


「……」


次の瞬間には、カルロッタの姿が視界から消えた。



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