戦闘
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いきなりの衝撃。
数百メートル吹っ飛ばされる桃。
十階建てマンションの壁に激突した。
周囲の電線に止まっていた雀達が一斉に飛び立つ。
「えふゥ!」
八階辺りの壁にめり込んだまま押さえつけられている。
動けない。
周辺住民が何事かとあちこちから顔を覗かせる中、一人の男性の姿が。
地元住民らしき四十代位の眼鏡男。
少し腹が出ていて短髪の後頭部辺りにネグセもあり。
どこにでもいる普通の中年男性といった風情。
ただし。
彼は桃の手前五十メートルまで、空を飛んで来てピタと静止してみせたのだ。
「……どーやって洗脳解いた?」
彼は両足が緊張状態だった。
「ちょっとぉ! 酷くない? オジサン」
壁にめり込んだまま、ぷうと膨れる桃。
「ハルト。町田ハルトだよッ、魔神桃!」
あの少年だ。
面影がある。
でも何故ここに?
桃は少し混乱しかけたが、状況を分析。
整理してみた。
ハルトと名乗る男。
彼はベーシックなモーフェートしか使えない筈だ。
前回やられた時はスキルの複数使いが面倒だったので、防御をコピーの透明鎧のみに頼っていた。
まさか自身と同じ能力者がいるとは思わず油断していてやられた。
なので今回はしっかりプラーナの強力なバリヤで全身を包んで挑んでいる。
だから致命傷を負わずに済んだ。
予定が逆になってしまったがハルトの方は問題ない。
先に片付けてしまおう。
「あんた、川崎に住んでんじゃないの?」
探索マンで調べをつけていた桃が問う。
「場所わかんのか……昨日は実家に帰ってましたッ」
プライベートな事情を即答するハルト。
すると、桃がめり込んでいるマンション三階ベランダから女性がひょこんと顔を出した。
「えーッ。町田さんのご主人?」
「あ。峯田さん、お早うございまーす。ちょっと急ぐんで失礼しまッス……」
ばつが悪そうに桃を連れたまま飛び立とうとする。
が、全く動かないゆるふわ女子。
「ご主人? ……あんたさ、あの女とひょっとして。一緒に住んでんの?」
「十八年前に、できちゃった婚しましたッ」
またしてもハルト。
個人情報までしっかりと答える。
『……余計な事言わないハル!』
プラーナを通して響く声。
『ま、この距離じゃお互い洗脳かけれないけどね。クソ魔人桃』
「だねー。オ・バ・サ・ン」
『ミキナ。町田ミキナだわクソ魔人!』
相当カチンと来た様子のミキナ。
『ここ来る前暴れてきたでしょ。アレがなきゃハル、間に合わなかったのにバーカ』
「いいの。どーせ殺すもん、お宅ら」
そう言うと壁からズズッと這い出て来る桃。
ハルトのパワーでは押さえ込めない。
「それにウォームアップ、必要だったし」
ブチ切れるミキナ。
『……黙れ林正徳! 何人犠牲にしたと思ってんだッ』
桃はここでまた混乱する。
何故素性を知っているのか。
一体どんな能力を使ったのか。
自分にはないスキル?
この隙にハルトが一気に仕掛けて来た。
市街戦を避ける為か、桃を上空に引っ張り上げる。
わずか三秒で高度千メートルに到達。
マッハに近いスピードだ。
しかし彼女は意図も容易くコントロール下から脱出。
距離は変わらず五十メートル。
「いつまでもキモいんだよ、オッサン!」
言い放つと突然モーションに入った。
両手を胸の前でピストルの形に組んで突き出す。
「動くなッ!」
暗示だ。
強烈なスキルに動けなくなるハルト。
「あんたが操りマン使えないのはシュミレート出来てますう〜」
両手を後ろに組んで、体を左右に揺らしながらブリブリで近づく桃。
すかさずミキナ。
『解除!』
ハルト、自由になる。
と同時にパンチを乱打した。
実際の動作が伴うとスキルは発動しやすい。
Yエナジーパンチの雨霰を食らった桃は動きが止まる。
攻撃と防御でエネルギー同士がぶつかると綺麗な光彩を放つ。
無音の中、彼女の周りだけ光輝いて美しい。
桃はまた考えている。
さっき操りマンを強制解除させられた。
自分にはないスキルだ。
手札はこっちの方が有利だと考えていたが、やはりこの二人は油断ならない。
そしてミキナが叫ぶ。
『戦闘不能にしてこっち連れて来てハル!』
「……ラジャーッ」
それではまた…




