復活
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確定。
これは百パーセント政府機関に捕獲、解剖されて化学薬品浸けで保存されている。
よくある設定だが彼女は「おもしろ!」と思った。
元才能なしの作家擬きなので。
「へへ。えとー、とりあえず複製マンで体を再生しよっかなー」
その前に周りの状況をチェックしておく。
先程同様、レーダー網を今度は室内全体に張り巡らす。
「何コレ……倉庫?」
三流作家のイメージ的には『どこか秘密の研究室』『厳重なセキュリティシステム』『研究員が忙しくデータ採集』『国の偉い人が視察』みたいな感じだったらしい。
しかし桃の脳ミソが入った箱は、棚の並んだ空間に段ボール箱や書籍なんかに紛れてポンと置いてあった。
「随分と雑な扱いだなー」
ため息をつく脳ミソ。
とりあえず箱をモーフェートで真っ二つにする。
ばっしゃあッ!
液体を床にぶちまけ。
脳ミソは宙に浮いたままで広いスペースに移動。
今度は複製マンで自身の肉体を再構築した。
地に足がつく感触。
真っ裸の魔人桃が何処かの資料室のような場所で今、復活したのだ。
肺に息を吹き込んでみて驚く。
「え……ウソ。やだやだ信じらんない!」
鐘崎桃の肉体に男性器が付いていた。
「何か。懐かしいコレ。私んだ」
どうやらデータが一部、混ざったらしい。
これは林正徳のソレのようだ。
特に立派という訳ではないが、形の整ったそれは彼女の股にあると妙に馴染む。
「……うん。悪くないよ。両性具有って」
気に入ったのか。
蘇った桃は股間をブラブラさせながらスチールドアの前に立つ。
施錠されていた。
ドアノブを握ったついでに建物全体の様子を超感覚でサーチする。
地上二階建て、面積約千平方メートルのビル。
一階に事務室と実習室。
二階には講義室と実習室。
と、ここが資材収納庫のようだ。
「フツーの研究所ってこんなんかな。今、夜みたい。職員一人しかいないじゃん」
複製マンで下着と服をコピー。
パンティだともっこりして面白い。
彼女は小柄なのでゆるふわ系がとても似合う。
ふんわりスカートとふわもこトップスをチョイス。
必殺の巻き髪。
「はい、カワイイ」
笑顔の桃。
スチールドアをぶっ飛ばす。
どおぉぉぉーん!
一階の事務室へ。
三十代と思しき男性がコピー機から顔を上げた。
細身で眉毛の間が広い。
「……今、何か音?」
ノーネクタイでカッターシャツのボタンを上から三つ外している。
一人で残業中のようだ。
「あのー」
桃が受付から声をかけた。
アイドル級のスマイルで顔がよく見えるように。
「お仕事中ゴメンなさい」
「えっ。あ、ハイ? ……どちら様?」
「…………」
何だか面倒臭くなる桃。
まさか魔神桃だと気付かない人間がいるとは。
少し嫌気が差したので彼女は操りマンを使った。
「ここは何の施設?」
「……構造生物学の研究関連施設でふ」
「具体的な業務内容は?」
「……研究員や学生の研修センターでふ」
「魔人桃の脳を保管していた理由は?」
「……魔人桃が解剖された際に脳に特殊な器官が発見され、世界中で研究されましたが解明には至らず。器官切除後の脳は不要となり、二年前にグループ内の当施設へ送られてきたのでふ」
二年か……桃は少し考える。
「あの強力なスキルが外れたのは脳の『器官』を切除したから。そして二年かけてその『器官』が再生。モーフェートも復活したってコトね」
辻褄は合う。
だとすれば、やるべき事は一つ。
あの少年少女二人組を抹殺する。
復讐だ。
そうすればまた、面白可笑しく暮らしていける筈だから。
ニコと微笑む桃。
「最後に。あの棚に箱を置いたの誰?」
「私でふ」
べちゃっ。
男性は床上で薄い煎餅みたいになった。
クスクス笑う。
間が可笑しかったらしい。
少し気分が良くなったので施設の屋上に出てみた。
夜風が肌寒いが割と過ごしやすい。
大好きな駅ビルのナポリタンをコピーすると柵にもたれながら食べた。
脳ミソだけになっていたせいか、食べるという行為自体懐かしく思う。
「……もう長い間、人とご飯。食べた事ないなぁ」
夜空を見上げる桃。
月もない。
新月だった。
それではまた…




