目覚め
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北アフリカの某国。
十月でも気温が四十度を越えている。
見渡す限りの平原は土地が乾燥してひび割れ。
生命の気配すら感じられない。
茶色の大地と空だけが広がる世界。
砂漠化が進んでいるのだ。
誰かが。
とぼとぼ歩いて来る。
彼女は何も持たず。
この灼熱の地を歩いて来る。
そして彼女は日本の女子高生だった。
ブレザーの制服にリボン、ミニスカートを履いている。
「……数学の宿題出てたっけか。ヤバ。忘れてたわ」
現地時間は午前の十時。
時差が七時間あるので日本は夕方の五時頃だ。
「ニャマルの村しか行けんかったーッ」
長い手足をバタバタして悔しがってみせる彼女。
モデルのようなスタイルの上に小さな顔。
どこかオリエンタルな雰囲気を醸し出す美少女だ。
所謂『水戦争』のせいでこの国は諸外国からの締め付けに加えて内紛も多く、難民が後を絶たない。
国連の支援も届かない程に難民キャンプは劣悪な状態で弱い者からその命が消えていくような環境だった。
数年前。
一人の少女が現れると、あちこちのキャンプで奇跡を起こし始める。
紛争で傷を負った人を癒し、キャンプで流行った感染症を食い止めた。
時には難民を襲う軍隊を制圧した事も。
何よりも人々が驚いたのは水。
彼女は何もない所から水を出現させるのだ。
現地で支援を行っていた国連の関係者は、以前日本に現れた悪魔『魔人桃』と同じ能力を持った彼女の事を。
親しみを込めてこう呼んでいる。
奇跡のキナ。
「待ってろ宿題ッ!」
少女は両の腕を腰にやって空をぐるりと見渡す。
それから右の手を突き上げるとショートボブの黒髪を全く崩す事なく飛び去った。
ソニックブームだけ残して。
***
ぷつんッ。
テレビの画面が『消える』ような感じで、魔人桃は意識を取り戻した。
画面は真っ暗だ。
闇の中で状況を整理してみる。
「やられちゃった……」
思い出す桃。
自分以外の能力者、あの少年少女二人組。
女子の方に操りマンを食らった。
しかも強烈なヤツを。
あの後どうなったんだろう。
彼女は小首を傾げてみた。
つもり。
「とりあえず生きてるんだ私。でもスキルが外せない……二度と目覚めんなとか言ってたからなーあの子。かなり可愛かったな。私の方が可愛いけど。ま、整形だけどね鐘崎桃。セクシー女優なんて整形ありきだから」
よく喋る、というか思考する桃。
「手を掴まれた時わかった。あの子、右足義足だった。男子の方は両足? 麻痺してたみたいだし……」
超感覚スキャンのデータを確認していて、女子の右足大腿部分に脛が逆にくっついていたと知る。
しかし、この魔人には全く興味なし。
スキルの分析に忙しい。
「アイツらニコイチだった。女子が操りマンで男子がベーシックなモーフェート使ってた。もしかしたらそれしか使えないのかなぁ……次、勝てんじゃね?」
その時だった。
頭の暗い部分にプラーナが満たされていくのを感じて少し驚く。
「あ。ガス欠だったんだ」
早速超感覚を使おうとして気付いた。
そもそも体の感覚がない。
一先ずプラーナを使って自分の体やその周りを包み込んでみる。
レーダー仕様で状態を確認。
小さな箱みたいな空間で液体の中に浮いている物体。
「小さな箱? 液体?」
十五〜六センチの手の平サイズになっていた桃。
肉体はある一つの器官のみで存在。
それが液体に浸けられている。
「ちょっと、ウケるんですけど! 私、脳ミソだけになってんじゃーん!」
それではまた…




