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ドーム

毎日22時更新します…

魔人桃は都内のあちこちに出現した。


人々の集まる場所、イベント会場。

SNSに画像や動画が上がる。


「……何か私とセンスカブってる。この女」


ミキナがビデオ通話で不貞腐(ふてくさ)れていた。

小柄でメンズライクな着こなし、という点では確かにカブり気味だと思われる。


「KiNAちゃんの方が可愛いです」


空気を読むハルト。

確実に成長している。

少し機嫌の良くなるミキナ。


「で。やってんの? ハルトくん」

「やってる!」


そう言うとスマホを宙に飛ばす。

ドローン状態となったスマホから映像が送られてくる。


そこは何処(どこ)かの山奥。

一目見て人の手が長年入っていない事がわかる廃村で、ハルトはプカプカと浮いていた。


「見てて!」


そう言うと物凄いスピードでカクカク飛び回り始める。

まるで室内を右往左往する蝿の(ごと)く。

目で追えない程の動きだが、彼がスキル操作するスマホカメラは何とかその姿を捉えていた。


そして急にピタと止まると、今度はカメラが()ちた民家の方へ。


草木に埋もれていた木製の電柱がぐぐっと持ち上がる。


これがグリングリン回転し出した。

聞いた事のないような風切り音を発しながら、凄いスピードで空中をすっ飛ぶ電柱。


バトントワリングの様に上、下、右、左。

最後は割り箸みたく縦にパキンと真っ二つ。


「……すご。マジびびったぁ」


嬉しそうなハルト。


「スピードスターって呼んで下さい!」

「何言ってんのかわかんないけど。ファーストアタックで全てが決まるから。これで準備は整った感じだね」


あの災厄(さいやく)の日。


魔人桃のスキルを見てから逆にYエナジーの可能性に気付いた二人。

ハルトが分析したデータを元にミキナがある作戦を立てていた。


「まずハルトくんのスキルで私を連れてあの女の(ふところ)に飛び込むでしょ。そこで私のスキルを決めて戦闘不能状態にすんの」

「コンボ技かぁ。いいね!」

「初めての不意討ち作戦」

「えーッ、不意討ちは……何かヤダな」

「は。何言ってんの? あんな怪物とまともにやり合ったら何されるかわかんないよ」

「……不意討ちかぁ」

「フ・イ・ウ・チ。やるからね!」


実戦経験のない割には極めて合理的な一手に辿り着いたミキナとハルト。


「コレが決まらなかったら戦闘になる」


その時はやるかやられるかだ、とミキナは思う。

ただ、自身でもわかっている。

戦った事のない二人には、殺意を向けられる事よりも己の刃を敵に向ける事の方が怖いのだ。


だからザ・コマンドを使う。

ハルトに攻撃はさせない。


彼女は心に誓っていた。


***


体育の日。


ドーム球場で行われていた格闘技の一大イベント。

波多野(はたの)タイゴは近くの出版社から球場に直行していた。

一階アリーナ席後方。

久々の観戦で心が踊る。


爽やかな2ブロックが似合うイケメン風の好青年。

普段から〝いい人〟を演じている反動か、見た目とは違い格闘技好きのミリタリーオタに仕上がっている。


サラリーマンではない。

四コマ専門誌で五ページの連載を持つ四コマ漫画家。


連載作家と言っても月刊誌一本だから、普段は高齢者施設の職員を本業として生計を立てている。

一見バランスの取れた生活。

しっかりとした生業を持ちつつ副業レベルで好きな事をやれていると。


しかしタイゴは専業作家希望なのだ。


三十を前にして、このまま売れなくても何とかなる状況に甘んじていいものか。

葛藤(かっとう)の日々を送っていた。


「女子の試合もエグいなー」


全十五試合中、前半の第三試合。

リング上では女子のMMAが行われており、初回から打撃戦が展開。

まだ昼の三時で観客もフルハウスには程遠いが、熱戦に次ぐ熱戦で場内はそれなりに盛り上がっている。


一ラウンド終了。

インターバルの間、上を向いて目を閉じるタイゴ。


ラウンドガールへの歓声。

重低音の音楽が鳴り響きドーム内を巡る。

ここは非日常の空間なのだ。


少し頭がとろけかけたタイゴの耳に、ある不協和音が飛び込んで来た。

一部の観客がざわついているらしい。

彼は視線をリング上に戻す。


ざわ……ざわざわざわ…………


その小さなざわめきはリングサイドから徐々に広がり始めて。

会場の大型ビジョンに小柄な女性が映し出された時、ピークを迎えた。


際どい黒のコスチュームに身を包んだ二人のラウンドガール。

の小さい方。


「……あれ、魔人桃か?」


アリーナ後方のタイゴもようやく気付く。

一瞬、静寂(せいじゃく)が訪れるドーム内。


「何してんだ…………」


皆、どう考えていいのかわからない。

タイゴは思う。

狂気の大量殺戮者が突然ボードを持ってリングインして来た。

試合を楽しんでいたところに。


突然、客の一人が野次を飛ばす。


「人殺しーッ」


誰もが直接言いたかったこの一言。

この一言がホットな集団心理に火を点けた。


「殺した人達に()びろ!」

「この外道が!」

「調子こいてんじゃねぇゾ」

「テメーが死ねッ」


やがてその声は一つとなって。

数万人の怒りを込めた大コールとして結実し、場内をこだまする。


「死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、60 死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね、死ーね」

それではまた…

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