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スカイタワー

毎日22時更新します…

九月二十八日。

土曜日。


ミキナはハルトの地元商店街へ打ち合わせに来ていた。

車椅子でも利用しやすいオムライスの旨い喫茶店。

所謂(いわゆる)『ふわとろ』ではなく昔ながらの『巻き型』オムライスを出す店で、彼女も気に入ったようだ。


昼食を終えてコーラを飲みながらテーブルにあるスマホ二台を指差すハルト。


「コレ。メェドさんから全然かかって来ないよねー」


黒Tにカーディガンを羽織ったミキナは彼をじーっと見ている。


「自分らで何とかしろって事なのかな? ね、KiNAちゃん」


黙ってハルトを見つめる彼女。

彼はいつもの白Tではなくドロップショルダーの長袖Tを着ている。

色はベージュ。

眼鏡もテンガロンハットもやめたらしい。


「……何かイメチェンした? 君」

「今さら? してないよー。痛車(いたしゃ)は卒業したけどぉ」


十数秒間、少女の視線に耐え切った見せた少年。


「……こないだ言ってたアレね、成功したよ。ハルトくんて意外と策士じゃん」

「うん! 戦略立てる為には情報収集が必要です」


何度目かのビデオ通話会議でハルトが立てたプラン。

警察の持っている千件に及ぶ大量連続殺人事件の内部資料をミキナのスキル、ザ・コマンドで手に入れようと言うものであった。


二人はとりあえずテレビの記者会見で見た事のある関係者を(まと)に選んだ。

警視庁の刑事部長。


一、 警視庁に電話をかける。

二、 スキルで、刑事部長に繋げと命令。

三、 刑事部長にヒットするまで繰り返す。

四、 繋がったら資料を渡せと命令。


手に入れたUSBデータをドヤ顔で渡すミキナ。

ハルトが持参したノートパソコンで確認を始める。


「ハルトくんパソコン強いんだね」


メロンクリームソーダを突っつきながら「喫茶店ぽいこの店〜」と辺りを見回す十七歳女子。


「あった、コレ」


ハルトが向けてくれたパソコンを覗き込む。

そこには様々なグラフがひしめき合っていた。

直ぐに目を背けるミキナ。

苦手分野らしい。


「件数が多いから専門家が色んなアプローチで分析してるね」

「そなんだ」


(しばら)くデータに釘付けになっていた彼の顔色が曇る。

またパソコンを彼女の方に。


「ここ見て。殺害方法のその他のトコ」


その他の円グラフ。

件数が二十六。

その内の八件を指差す。


「〝顔面及び胸部と局部の変形〟ってあるでしょ。コレ画像」


クリックすると数百枚の鑑識写真が出て来て思わず目を(つむ)るミキナ。


「あ、ゴメ……いや。えと、口で説明するとね。この変形ってのが見た目そのものを変えるレベルみたいで。データでは検死でも理解不能だってなってるけど」


ミキナも気付いた様子。

ハルトが(うなず)く。


「目的はわかんないけど。メェドさんが降らせた雪。あの複製スキルなら出来ると思う」


目の前のスマホ二台も複製スキル作。


「つまりアレだ。林正徳(はやしまさのり)は私達にはない強力なスキルを持ってるってコトね」

「うん。他の殺害方法もチェックしてわかった。KiNAちゃんのザ・コマンド、僕の皇帝の黄昏(たそがれ)もアイツ使えるよ。三点セット」


こないだのビデオ通話会議でザ・コマンドの呼び名はバレた。

少し赤面するミキナ。


「じゃあメェドと変わりないじゃん!」

「レベル1のメェドさん、みたいな…」


押し黙る二人。


ミキナは腹が立っていた。

こんなの相手にどうやって何とかすればいいのか。

しかも林正徳は対人使用によってスキルアップを図っている節がある。


いわば〝神の(ごと)き力を持った〟殺しの専門家なのだ。


対するこちらは殺し合いどころか喧嘩すらした事なし。

戦いはゲームの中だけの話で人を傷付けようと考えた事など人生で一度もない。


普通の十七歳なのに、と。


重苦しい雰囲気の中。

突然、テーブル上のスマホ二台が鳴った。


チャ、チャ、チャララララ♪


「ジェンカかよ」


一斉に電話に出る二人。

馴染みのある甲高い声が響く。


「ハルトー。店のテレビ点けてみ」


直ぐに反応して皇帝の黄昏発動。

カウンター奥にあるテレビのスイッチが入ってマスターが驚く。


《……臨時ニュースをお伝えします。只今、現場の映像が繋がりました。坂井(さかい)さーん?》

《はいッ。こちら現場、東京スカイタワーからの中継です。先程から異様な光景が広がっております。えー、ご覧いただけますでしょうか》


思わず息を飲むミキナとハルト。


テレビに映し出されている東京のシンボルとも言うべきスカイタワー。


逆さまに立っていた。

それではまた…

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