私刑
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暫くの間、鐘崎桃と絡んだ全ての男優を殺す事に情熱を傾けていた林正徳。
殺し方にこだわってバラバラにしたり、汁男優までスキルを駆使して見つけ出し殺す徹底ぶりであったが。
これもある日、パタと止む。
「全作品の出演男優キル達成!」
AV業界へのミッションはこれにて終了。
この時点で正徳が企画したファーストプラン『復讐』
は幕を閉じた。
肝心の鐘崎桃本人も殺害してしまったのだが気にしていない様子で「世の中をひっくり返してみせた」とご満悦の様子。
ショートケーキを複製。
自身の誕生日さえ何もしない男がプチ祝賀会開催中。
炬燵に入ってテレビを観ながらケーキを口に運ぶ正徳。
ワイドショーでは日焼け顔のMCがへの字眉で番組を進行している。
《はい。それでは昨日もお伝えしましたが漫画・AV業界の連続変死事件です。続報ありますか》
《えー、二十日間にわたって続いているこの不可避の変死事件。昨日も警視庁の会見が行われておりますが進展はないようです。先日の総理の会見同様、国民の皆様に対して落ち着いて生活するよう呼び掛けがありました》
パネル前に立つ中年アナウンサーが淡々と読み上げる。
《漫画関係者の方の死因は心臓マヒ。AV関係者の方が……バラバラ殺人。世間でもコレ同一犯なのかどうかって臆測が飛びかってますよね》
《だってね、百二十七人も犠牲者が出てんのに目撃者がゼロでしょ。そりゃ、みんな不安になりますって!》
コメンテーターの漫才師が視聴者の意見を代弁。
やたら声がデカい。
《当初、組織的な犯行として警察がその威信にかけて捜査に当たりましたが手掛かり一つなし。特に三十五人もの人気作家を失った漫画界のダメージは深刻でして。政府も日本の重要な輸出産業であるコンテンツの危機と認識、出版業界への補助を検討する動きが出ています……》
正徳は満足した様子でケーキを平らげた。
この状況でセカンドプランの遂行に移る判断をする。
次のコンセプト。
それは『制裁』だ。
〝気に入らないヤツ〟に罰を与える。
ずっとやってみたかったけれど。
やれる立場が回ってきたのでやる、という事らしい。
要するに私刑だ。
早速行動を開始する正徳。
まずは身の回りで目をつけていた数人を処罰すべく、いそいそと外出した。
彼の行動範囲は非常に限られており、とりあえず思いつく中での九件が以下の通り。
夜中に大声で話しをする隣家の建築屋。
犬の散歩で糞の始末をしない婦人。
道でスレ違う度に睨み付けてくる老人。
道でスレ違う度にゲラゲラ笑う女子高生。
道でスレ違う度に唾を吐くヤンキー。
近所のコンビニでタバコを吸う中学生。
注文を三回も取りに来なかったカレー屋。
二回も職質をかけてきた若い警官。
駅前階段に座り込んでいるギャング達。
この中で公憤と呼べるモノは『犬の糞』『喫煙中坊』『ギャング』の三つしかないが。
正徳としては「私刑なんだから私憤でも構わない」という理屈のようだ。
昼の十一時。
どのケースに当たれるかわからなかったが相手の判明している『警官』と『カレー屋』の所に行ってみる。
交番にいた若い警官とカレー屋の主人は心臓マヒで殺した。
途中コンビニ前で中学生が喫煙していたので、これも殺す。
ラッキーな事にガンつけ老人も発見、やはり睨み付けてきたので少しムカついて粉々にしてやる。
何だか清々しい気分になった正徳。
ぶらりと近所の公園に立ち寄ってみる。
シナリオを書いていた頃、煮詰まるとよく散歩をした場所だ。
ふと、前から歩きタバコの中年男性が近づいて来る。
すれ違いざま副流煙を吸わされて不愉快になった正徳は、相手を百メートル程ふっ飛ばした。
公園向こうのビルの壁に『ペチャン』とトマトみたいに弾ける男性。
「これじゃキリないか……」
今後は計画外で殺さない事に決めた。
彼は貧乏性だから細かな性格なのだ。
結局、夕方まで活動して犬の糞おばさんとヤンキーにしか出会さなかった。
二人を始末した後、仕方なくコーポに戻る正徳。
晩ご飯を食べながらテレビでバラエティ番組を見ていると隣家の建築屋が大声で話し始めたので殺す。
駅前の階段は場所を超感覚でサーチ。
ギャング六人をキャッチして一人ずつ殺す。
初日は女子高生のみフック出来ず終了。
今日一日、この辺一帯は救急車やパトカーが走り回って非常に騒がしく、今もコーポの隣に救急車が駆け付けているのだが。
正徳はニュースすら見る事なく就寝した。
明日からはフリーの制裁をスタートする。
それではまた…




