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毎日22時更新します…

部屋の一角に『聖域』と呼んでいるコーナーがある。


本棚、ではなくて三段のカラーボックス。

除菌ウェットティッシュで手を拭いてからボックスのDVDを大切そうに取り出す殺人鬼林正徳(はやしまさのり)


「今日も可愛いです。桃ちゃん」


パッケージのタイトルは『異世界転性/魔法少女のチートSEX/鐘崎桃(かねさきもも)

小柄で可愛らしいルックス。

細身なのにバストもしっかりあるコスプレ女子が、あられもない姿で男性と絡んでいる。


アダルトビデオ、AVだ。


正徳は人生において一度も女性と肌を合わせた事がないので、シモの処理は自家発電のみで(まかな)っている。


彼にはこだわりのルールがあって、それは〝推しの女優さんの作品以外は絶対に観ない〟というモノだ。

貧乏性だからルールには忠実にやっている。


三十年近いAVユーザーとしてのキャリアの中でお気に入り女優はたったの五人。

決してカブる事はないから正確には五代目、か。

その五代目が人気セクシー女優の鐘崎桃。


AV界のアイドル。

様々なメディアで活動する桃の為、正徳は二年前に一大決心をしてスマホを購入。

SNSのフォローや配信のチェックまで行うようになっていた。


ただ、予期せぬ事が起きてしまう。

SNSで距離が近くなった分、これまでにはなかった感情を抱くようになったのだ。


「桃ちゃん大好きです」


週イチで必ず励む事、毎日パッケージを(まな)でる事。

これが彼の決めたルーティン。

本気だった。


(ゆえ)に苦しむ事になる。

惚れた女性は大人気セクシー女優。

AVでは毎回何人もの男達とまぐわう売れっ子さん。

鬱々(うつうつ)とした気持ちを抱えたまま、特に何が出来るという訳ではなかった正徳だが。

モーフェートを手に入れた今、やるべき事は一つ。


「桃ちゃんとSEXした男優、ぶっコロ」


対漫画業界以上の殺意を(もっ)て。


去年、最大限の勇気を振り絞って写真集発売のイベントに初めて参加した正徳。

その時はどうしていいかわからず顔すら見れなかったものの、(かろ)うじて握手だけは交わしていた。


その時の手のイメージは決して忘れる事はない。

生まれて初めて触れた恋い焦がれる相手のそれ……

今回彼は新しいスキルの習得に挑もうとしていた。


愛しい人の手。

それだけで彼女と繋がってみせる。


探索マン、と命名した。


SNSで今日は撮影があると確認済み。

桃を探し当てて周りにいるであろう男優達をぶち殺す。

復讐、もとい嫉妬殺人の続きを始めるのだ。


***


一月二十日の昼。


コーポの六畳間に立つ正徳。

窓からは冬の穏やかな日差し。


エアコンの暖房を消して超感覚を展開する。

あの日の手の温もりだけを想い同時にプラーナを辿(たど)る。

彼女の元まで。


非常に繊細な作業だった。

()いて言うなら細い糸の先に蝶々を結び、どこかにある花弁まで飛ばすような。

そんな時間が五分、十分と続いた。

珍しく諦めない正徳はその後二十分、三十分と探索を続ける。


彼女に会える、そう思うだけで心踊る。

彼が燃やす唯一明るい情熱の炎。

一時間

二時間

三時間

時が過ぎ、やがて部屋が赤く染まり出す頃。

その瞬間は、いきなり訪れた。


急に視界が一気に広がり、正徳は撮影現場の真っ只中にいたのだ。


どこかの洋間の寝室。

スタッフが十人程いる。

監督と(おぼ)しき人物に、ADだろうか。

あとカメラマンが二人に照明や音声。

スチールカメラを持った男性。


そして。

ベッド上では鐘崎桃が男優三人を相手にしていた。


そこにいる全ての人間の感覚が正徳の中に入ってくる。

スタッフは勿論、桃や男優のソレまで。

運がいいのか悪いのか。

丁度フィニッシュシーンに出くわしてしまう。


それら全てを受け止める形となった。


パニック。

正にパニックに(おちい)ってしまう。


「あぁああぁーッ!」


理性が弾け飛ぶ。

彼は生まれ初めて絶叫していた。  

その場にいた全員を引き裂いてのフィニッシュ!


愛しい桃までバラバラの肉塊。

血の海となった寝室に一人(たたず)む。


余韻。

この時間はとても大切だな、と思った。

賢者タイムに突入する正徳。

とても静かでいい雰囲気だったが。

色んな臭いが立ち込めてきたので後ろ髪を引かれる思いで感覚をコーポに引き戻す。


いつもの見慣れた部屋に立っていた。


電気が点いていなくて少し暗い。

正徳は部屋着のジャージを着ていたが、ふと違和感を覚えてインナーの中に手を入れる。


射精してなかった。

それではまた…

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