殺人鬼
毎日22時更新します…
二十代の頃から着ているお気に入りの白いカッターシャツをGパンにイン。
颯爽とコーポを後にする林正徳。
まずバスでS線の駅へ移動。
そこから電車で十数分、目的地に到着した。
空を飛んでも良かったのだが彼は貧乏性なので。
常に楽ではない道を選ぶ。
駅から徒歩五分、閑静な住宅地の一角。
とある豪邸の前で立ち止まった。
センスのいい三階建ての家だが、やたら高い塀に敷地が覆われている。
「ここが武見先生のおウチかぁ。やっぱ大御所はスゴいな!」
出版社に電話をかけて住所を特定していた。
勿論『操りマン』を使って。
毎年正徳が応募しているシナリオコンテストの審査委員長で日本を代表する漫画原作者。
業界のラスボスとも称される武見幸生の仕事場兼住居がここだ。
「超感覚発動」
別に言う必要もないのだが小声で呟いてからアスファルトの地面に手をぺたとつけた。
地下の仕事場でスタッフ二人とソファーに座っている先生を発見する正徳。
一人は編集らしい。
打ち合わせ中のようだ。
「セレブ先生は昨日ハワイから帰って来て本日が仕事始め……お疲れ様なこってす」
躊躇なく、その心臓を止めた。
「一丁上がり!」
何事もなかったかのように駅へと踵を返す人殺し。
今日は忙しい。
まだ他に五軒、回らないといけないのだ。
***
その日の十九時頃。
彼はコーポの部屋で炬燵に寝転がり、テレビニュースに見入っていた。
生まれて初めての心地いい疲れに身を委ねながら。
《本日十三時頃、漫画原作者の武見幸生氏が心臓マヒで……》
《同じく人気漫画原作者のGAYA氏が》
《……亡くなった六人は何れも心臓マヒ》
《各々シナリオコンテスト審査員を務めており》
《また、編集長も心臓マヒで……》
《警視庁が捜査を始めたとの事です》
満足そうに仰向けになると蛍光灯の丸管をじっ、と見つめる正徳。
「……ウフフ。三十年に亘る戦いに、ついに終止符を打ってやりましたわ!」
もう、これでシナリオに人生を賭ける必要も無くなる。
清々しい気持ちで人生の第一部を終了する中年男。
これから第二部の幕が上がるのだ!
生まれ変わったつもりの彼は少し空腹を覚えたので皿とフォークを用意した。
「複製マン」
最初にモーフェートだのプラーナだのと気張ったネーミングで疲れたらしい。
『マン』シリーズでスキルを統一している模様。
皿の上には大好きな店のナポリタンが再現されていた。
***
その後も正徳は漫画関係者を殺した。
業界で活躍中の原作者のみに飽き足らず、漫画家や作画家まで毒牙にかけていく。
コンセプトが『復讐』から『嫉妬』にシフトチェンジしてしまったらしい。
本人的には筋が通っているようなのだが。
「アンタらは一生分の運を使い果たしてんだからもう、いいでしょ?」
売れっ子の作家達は戦々恐々とした。
海外に逃げ出す者も出る始末。
しかし、それはある日パタと止んだ。
「単行本の売り上げトップ30まで」
これにて正徳の漫画業界への復讐、もとい嫉妬によるミッションは終了。
計画は次の業界へのそれに移行した。
それではまた…




