使命
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メェドゥギ先生は座った姿勢のままリビングを浮遊していた。
ふぅわふぅわ。
「これがハルトが使ってたヤツ。こうてぇ?」
「皇帝の黄昏ッ!」
ムキになる少年。
「これは空間にあるYエナジーを行使しとるんやけど……ミキナ、変顔」
メェドゥギの動きを追っていたミキナがいきなり凄いしゃくれ顔を始める。
ハルト、どん引く。
「これはミキナの脳内にあるYエナジーを行使したんやね。はい、OK」
「OKじゃねーし!」
ここに来てから突っ込みのスキルも発現している少女。
「これが君らのスキルの特徴や。ハルトは空間の、ミキナは脳内のYエナジーにしか干渉出来ひん」
少し腹立つけれど。
この先生の授業はわかりやくて面白い。
こんな先生がいたら私は学校に行けただろうか。
ミキナは思う。
リビングを浮遊しているメェドゥギが指を鳴らす。
パチン。
すると、天井付近から小雪がはらはらと落ちて来た。
驚く生徒達。
手に取るとそれは体温で解けていく。
本物の雪だ。
「Yエナジーにデータを与えたら複製も出来るんよ。これは君らにはムリ。所謂超感覚ってヤツがないとイメージだけじゃ拵られへんからな」
「神の御業……」
降り積もる雪に手を翳しながらミキナ。
女子はこういうシチュエーションだと急にロマンチックになるモノらしい。
ハルトはメガネを曇らせている。
メェドゥギが再びソファーに降臨してスノーショーも終了。
「ま、ワイらレベルになるとね。Yエナジーで繋がって世界中のありとあらゆるモンをスキャンしてね。何でも複製出来ますけど」
床やテーブル、ソファーに少し残った雪もすぐに解けて消える。
奇跡を目の当たりにした二人。
「数千年に一人二人は人間の中にも、ここまでのスキル手にするヤツおるんやけど……」
何か変な間があって
「こっからが本題」
メェドゥギが指差すとテーブルにノートパソコンが出現した。
そのディスプレイには一人の中年男性の顔写真が映し出されている。
チラホラ白髪混じりの弱々しい目付きの男。
「コイツ林正徳。五十四歳」
動画が再生され始める。
タイトルが下からスクロール。
〝人類の敵 林正徳〟
BGMも昔の無声映画のよう。
「何か古臭ッ」とミキナ。
メェドゥギはそれを無視すると芝居じみた口調で
「奇跡の力でバンバン人殺してるで、うわー」
防犯カメラの映像を何十と繋いだ内容らしい。
過激シーンのせいか、殆んどモザイク処理されていて何が何だかわからない。
テロップはやたら〝こんな事が……〟〝許されていいのか!〟〝正義は一体どこに?〟と煽ってくる。
「わー、むっちゃ悪いなコイツ」
五分程の動画が終わると。
さっきからセリフ棒読み状態のメェドゥギが目線をくりくり送りながら訴えて来る。
「……何とかしたらええやん」
「はぁーッ?」
途中から何となく意図を読み取っていたミキナ。
半ギレ。
「何で人殺しのオッサン、私達が」
「え?」
驚きを装うメェドゥギ。
「だってワイらは人類の歴史には干渉出来ひんし。オリジンがアカンて……」
「イヤ、よくある設定だけど。実際言われたら相当ムカつく!」
ザ・コマンドでハメてやろうかと思ったがすぐに考え直す彼女。
相手は神に近いスキルを持つオリジンの、四億年を生きたコピーだ。
自分なんかが到底太刀打ち出来る相手ではない。
すると、電動車椅子に座ったままのハルトが。
堂々と胸を張り右手拳を心臓の上。
決めポーズで声高らかに宣言した。
「僕らが何とかしまッす!」
「ちょ……この、片翼かぶれコラ」
メェドゥギが大きな手をパンッと叩く。
「はい、OKでーす。ハルト、ミキナ、ガンバ!」
全て消えた。
メェドゥギも家も。
ジャングルの何もない一角のみ。
安い動画で綺麗にハマったハルトと項垂れるミキナ。
彼女は前髪をぎゅううと押さえつける仕草を繰り返している。
ばつが悪そうな彼。
目が宙を泳ぐ……
まだ蒸し暑いジャングル。
ミキナは虫達の鳴き声に反応して舌打ち。
メェドゥギの顔が思い浮かんだらしい。
無言の二人の前にはスマホ二台と洗濯済みのキレイに折り畳んだ服、それとお茶のペットボトルが二本ばかり。
「熱中症には気をつけろッてか。ハハ」
何とか絞り出すハルト。
黙ったまま。
車椅子のハンドルの間に綺麗に収まるミキナ。
とりあえず行け、と言う事らしい。
「しゅ、出発進行しまーッす!」
それではまた…




