山田くん
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この港に流れ込む川の源流、M岳付近のジャングル。
そこにメェドゥギがいるとわかる。
問題はどうやってそこまで行くのか、だ。
電動車椅子と下肢義足のコンビである。
結局答えが見つからないまま、ここまで来た二人。
二階建てプチホテルといった外観の旅館。
正面玄関からエレベーターまではスムーズに移動。
エレベーター内は少し狭く電動車椅子では向きを工夫しないと乗れない。
ハルトの操縦テクが唸りをあげる。
「ごめんねー。ウチで貸し出してるミニの車椅子ならいけるんだけど」
部屋はバリアフリー対応のハルト部屋とミキナ部屋。
二つ取ってある。
一旦、互いの部屋で休憩する事にした。
ミキナは義足を外すとベッドに寝そべり旅館の天井を見つめる。
「疲れたー」
ハルトに右足が変だと思われないよう、ずっと気を張っていた彼女。
別に義足自体は知られても全然構わない。
ただ男子に回転形成術の事を知られるのは抵抗がある。
真野大輝とのトラウマについて女子とはカタを付けた。
でも、男子と関わるのはまだ少し怖いのだ。
ザ・コマンドというスキルを手に入れた今でも。
いつの間にか彼女は眠りに落ちていた。
***
「よー来たな。二人」
メェドゥギの前にミキナとハルトが立っていた。
彼も眠ったという事か。
そう、ハルトも『立っていた』のだ。
ミキナは既に泣いていた。
自身の右足で立てているから。
泣いている彼女を見てオロオロし出す彼。
「今からこっちまで来て。場所わかるやろ」
「あーッ、僕車椅子なんですけど……」
号泣している女子に変わって頑張る男子。
「ハルト。力の使い方間違えてんで」
「えッ……皇帝の黄昏の事?」
「その皇帝なんちゃらやけど。一メートルの空気の球? 全ッ然ちゃうわ」
距離が近くてメェドゥギをかなり見上げる形のハルト。
彼は立つと百七十センチはあるのだが。
「違うの?」
「ちゃう。お前が操ってんのは空気やなくて山田くんなんや」
「や、山田ッ!」
ハルトが喰い付いた。
これには流石にミキナも「?」となる。
「この世界に満ちてる山田くんを使わんと。一メートルやなんてセコい事言うてんと、わしのおるトコまで山田くん繋いで。それでミキナと移動して来たらええ」
何かぴんと来た様子のハルト。
口が開きっ放しだ。
「ええか。高速のオートウォークのイメージやで」
「オートウォーク?」
二人は同時に目覚めていた。
数分後。
ハルト部屋で作戦会議が開かれる。
この部屋は介助人も泊まれるツインルームなのだ。
「オートウォークって何?」
座位を保つのが難しいハルト。
ベッドに寝転がった状態で訊いてくる。
足の装具は着けたまま。
もう一つのベッドに腰掛けて初めてテンガロンハットを被ってない彼を見たミキナ。
何故か前髪が気になり出す。
「えと、動く歩道。平らなエスカレーター、みたいな」
「なる……そっか」
口が開いているハルト。
凄く考えている風。
彼の発言を待つミキナ。
「山田くんて。何?」
「これはハルトくんの方がイメージしやすいと思う。何かさ、この空間にあるエネルギーみたいな感じ?」
「空間……エネルギー?」
黙り込むハルト。
また待ってあげるミキナ。
「どゆ事?」
思わず前髪ぽんぽん。
「えと、例えばだけど。何でハルトくんは自分のスキルがさ、一メートルの空気球を操る事だと思った?」
「あーッ。何かぎゅってしたら丸くなって」
「それ。メェドゥギが言ってたのは丸くした球じゃなくて丸くした周りのパワーそのものを使えって事じゃないかな?」
再び黙り込むハルト。
この展開にも少し慣れたミキナ。
次の瞬間。
「あ、そっか!」
そう叫ぶや否や、彼は皇帝の黄昏を発動。
ベッドに寝そべった状態のまま、天井までゆっくりと浮き上がって。
部屋の中をくりくりと回り始めた。
それではまた…




