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本城君  作者: ボア
長谷川昌(はせがわあきら)の場合
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5章 大人になってもずっと・・・

5章 大人になってもずっと・・・


本城君には親がいない。

本城君が2歳ぐらいのときに海の事故で2人とも死んでしまったらしい。

今は大人のお兄さん2人と高校生のお兄さん、涼君と2歳の弟の兄弟6人で暮らし

ていて、家事は本城君の担当らしい。


みんなどこかしら問題があって、1番目はお酒を飲みすぎる、2番目はタバコを

吸いすぎる、3番目は部屋に引きこもってゲーム三昧(うらやましい!!)、

涼君は食欲が強い、6番目はわがまま。


そして一番ムカつくのが

何か言えば「お前の仕事だろ?」

態度を注意すれば「今やるよ」

早くやれよと急かせば「お前のせいでやる気なくした」

一瞬声が遠くなり「てめえらの行動の責任をなんで俺が取らなきゃなんねんだオラ!!」

とどこかに向かって叫んだ。


「本城君て何だかうちのママみたいだね」

「うちのママも自分の行動に責任を持てみたいなこと言ってたよ」

「文句があるなら態度で示せとか、僕の言葉は信用できないとか」

「部屋が欲しいならこの家を出ていくしかないね、とか」


カンカンカンという豚の生姜焼きをフライパンからお皿に移す音がする。

「ほら持って行けー」と叫ぶ声が聞こえて、ガラガラと戸が開く音と

「これだけですか?」という涼君の声が聞こえた。

さっき公園でトンカツを3枚も食べていたのにさらに豚の生姜焼きまで食べられる

なんて、凄いな・・・。

「まあ、俺は長谷川のママ派かな」

「本当はてめえの事ぐらいてめえでやれよって思うもん。2歳の赤ん坊じゃねえんだからさ」

(2歳の赤ん坊・・・)

「てめえが使ってる部屋だろ、てめえで掃除しろよ」

「てめえが飯食うために使った食器だろ、てめえで洗えよ」

「てめえが着る服だろ、洗濯して取り込まれた服ぐらいてめえで持って行って

てめえでタンスにしまえよ」

「てめえの子供だろ、父親ならてめえで面倒見ろよ」

「・・・・」


「なのに『家事はお前の仕事だろ』とかほざいてさ、マジ何もしねえの」

「大体『お前の仕事』って言うけど、いつ、だれが、どこで、決めたんだよって感じだし」

「誰が何の担当かなんて話し合った覚えないんだけど」

「・・・・」


「こっちは宿題もやんなきゃいけないのに時間ないしさ」

「せい、6番目の幼稚園のお迎えも俺が行って、その後の面倒も俺が見てんだぞ」

「朝飯作って洗濯して干して掃除して幼稚園行ってお迎え行って買い物して洗濯もの取り込んで畳んで各自の部屋に持って行ってタンスにしまってやって風呂沸かして晩飯作って6番目に飯食わせて風呂入れて寝かしてやっと自分のことができるわけよ。気づけば真夜中よ。自分の部屋なんてあっても使う暇ねえよ」

「・・・・」


「だからやめた、俺も他の奴らみたいにやりたくねえ事はやらない事にした」

「飯は気が向いた時だけ作ってやるよ」

「服は洗ってやるから乾いたらてめえで持って行け」

「掃除は共有の場所だけ週1回」

「マジひどいですよー。今朝は玉ねぎ焼いただけのもん出されましたからー」

「服はシワだらけだしな」

「いやーーーーー!!」カシャーン!!


兄弟かな、遠くで微かに声が聞こえる。

「で、何の話だったっけ?」

「とにかくさ、俺が言いたいのはさぁ」

「こっちの苦労も知らねえくせに文句だけは一丁前でムカつくんだよって話だよ」

「じゃ、これから6番目に飯食わせなきゃいけないから電話切るわ」

プッ・・・ツーーーー


僕に言われてんのかと思って胸がギュッとなった。


ちょっとだけドアを開けてママを見た。

アリサを膝に置いてパソコンを睨んでる。


いつの間にか帰ってきていたパパが鍋焼きうどんを食べていた。

そっとドアを閉めた。


(2歳の赤ん坊じゃねえんだからさ)

本城君の言葉を思い出した。


僕は3歳のアリサや2歳のせい君と同じってこと?

自分で自分の面倒も見れない赤ん坊・・・。

ママがいなきゃ何もできない赤ん坊?

大人になってもずっと・・・。

下手したらおじいちゃんになっても・・・。

何それ怖っ!!


「ママ!!どうしよう僕、赤ちゃんになりたくない!!」

「パパどうすればいい!?」

ドアを勢い良く開けてリビングに出た。


「「・・・はあ?」」2人とも訳がわからないという顔をしている。


今の本城君との電話の話をして僕は赤ちゃんじゃない!!と訴えたらママは

「私の苦労をわかってくれる子がいた!!」と泣いた。


パパは「hhhhhhhあ」という変な笑い声をあげている。

アリサは鶏の絵を描いている。


「そうか、担当なんて誰が決めた、か」

「確かにそうだよね」

「パパは外で働く、昌と有咲は学校と幼稚園に行って勉強する、私は家で働いて、家のことをする」

「そんな感じの役割だと思ってたけど」

「私は“家で働く“と”家のことをする“の2つの仕事があるんだよね、ちょっと不公平じゃない?」






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