1章 僕の悩み
1章 僕の悩み
僕の名前は長谷川昌。
今は2LDKのアパートに住んでいる。
玄関入って廊下、左に風呂とトイレ、廊下の先のドアを開けてリビングとキッチン
奥に2部屋あって左が和室で右が洋室。
左の和室はフスマを外して解放感を出し、4人の寝室と僕の勉強部屋と3歳の妹
のアリサの遊び場になっている。
右の洋室はママの仕事部屋でママは小説家だ。
僕が学校から帰るとリビングで仕事をして僕たちが勉強しているのを見ている。
今の僕の悩みは自分の部屋がないことと、5年生になって初めてできた友達の
本城君が僕の家にだけ遊びに来てくれないこと。
本城君は僕と同じ11歳の小学五年生で、どう見ても女子にしか見えないけど男子だ。
僕以外の友達の誘いにはすぐ「いいよ」って言うのに、僕が「僕の家で遊ぼう」と
誘うと「駄菓子屋に行こう」とか「俺の家でマリオしよう」と言って絶対に家には
来てくれない。
僕はリビングのテーブルでパソコンを睨みつけているママの前に座って、足をブラ
ブラさせながらママに聞いてみる。
「僕、何か怒らせるようなことしたかなぁ」
ママはパソコンの画面を凝視したまま答えた。
アリサは僕の隣で唐揚げの絵を描いている。
「本城君?」
「ああ、あの女の子みたいな子」
「本城君、ご両親が亡くなられているから家のことも一番下の弟さん?の面倒も
ほとんどあの子がやっているって言っていたもんね」
「本当に家のことで忙しいんじゃないかなぁ」
回転する椅子の上に立って腰をひねった時の力だけで座面を回転させながら返した。
「でも他の子の家には行ってんだよ?なんで僕んちには来てくんないのかなぁ」
閃いた!
(そうだ、本城君には年子の弟、涼君がいる)
(弟に聞けば本城君がなんで遊びに来てくれないのかわかるかも)
(時間は5時43分、この時間ならまだ明るいし、この前公園のベンチに座って何か
食べてたのを見たことある)
(今日もまだいるかも)
「ママ、僕公園に行ってくる」
「今から?」
僕は何も持たずに家を飛び出した。いい考えだと思った。この時は。
「すぐ帰ってきなよ!」
遠くでママが叫んでる。