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過去

この小説はAI補助が行われています。不快感を感じる方は閲覧をオススメしません

――あの子が死んだ日、世界の色が変わった。


雨が降っていたかもしれない。あるいは、晴れていたかもしれない。だが私の中では、世界が確かに音を失ったのだ。ひとつの命を守れなかった罪悪感。


あの子の笑顔を、もう二度と見ることはできないという現実。私の何気ない一言が、あの子の背中を押してしまったのかもしれないと、何度も何度も繰り返し、脳裏に問いかけていた。


私「私なんかが、誰かを導こうとするなんて、おこがましかったのかもしれないね」


声に出すことはなかった。誰かに聞かせるための言葉ではない。私の内側で、泡のように生まれ、沈んでいった独白。


人としての寿命を全うする前から、私は強く、強く願ってしまった。


――やり直したい。


もしもやり直せるなら、今度こそ、守りたい。 その願いは、形を変えて叶ってしまった。


それが、この「身体」だった。


息はできる。食べられるし、眠ることもできる。だが、それは“機能”に過ぎなかった。


生理は止まり、脈拍も極めて低く、温度はほとんど感じない。胸も腰も、何かを象るには足りず、「女」という枠組みにも「人間」という分類にも、限りなく曖昧に存在している。


ただ、生きているふりをしているだけの、必要最低限の器。


私「代償としては、充分過ぎると思わないか?」


鏡の前で笑ってみせても、それはとても乾いていた。

それでも私は、願った通りに彼のもとへ行ける。 転生したあの子のもとへ――


姿形が変わっていても、名前が変わっていても、私は見つける。目を合わせた瞬間に分かるのだ。


それが、罰だった。


いつか死ぬ子を見守ること。毎度、新しく出会って、関係を築き、愛着が芽生える頃にはもう、別れの時がすぐそばに迫っているという現実。


忘れられることにも慣れた。どんなに想いを重ねても、死ねばそれはリセットされる。少年はまた別の名前で生まれ、私はまた「お姉さん」として近付く。


私「なんて滑稽な話だろうね」


ジョーク混じりに笑い飛ばさなければ、きっと壊れてしまう。


私は弱い。誰かを救いたいなんて思いながら、救えなかった。それでも、救いたいと、まだ願ってしまう。

きっと私は、人を導くような存在にはなれない。 ただ――隣で笑って、困った顔をして、時々デコを弾いて。


そんなささやかな存在に、なれるのなら。


それだけでも、救いになるのかもしれない。


だから私は今日も、新しく生まれ変わった彼を探しに行く。


私「さて、今回はどんな“少年”なのかな」


空を見上げる。永遠に近い時間を抱えて。 それでも私は、何度でも繰り返す。


それが、私に課された罰であり、願いであり―― そして唯一の希望なのだから。

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