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ヒロイン志願ですけど、男同士の恋愛(ボーイズラブ)を応援しますわ!  作者: 石月 主計
第1話:想いは口にしないと伝わらないですわ!
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2.サファイア先生、現る

片付けが終わった後、キャサリンはお礼にとエンジェルにお茶を振る舞った。


エンジェルは「そんな余裕あるの?」と口先だけの心配をしたが、好きなお茶を出されて、黙って飲み始めた。


「う~ん、今日もノズルクは平和ねぇ」


そう言ってキャサリンは気持ち良さそうに背伸びする。


工房の窓からは、朝の通りを行き交う人々の声が聞こえてきた。洋服屋の娘が歌いながら店を開け、鍛冶屋の親父が鉄を打つ音が遠くから響いてくる。


ノズルクは、北方の大地にひっそりと広がる小さな街。大都市ほどの活気はないが、四季の巡りと人々の暮らしが、穏やかに息づいている。


「平和すぎて、こっちは退屈よ。刺激がほしいわねぇ」


「また恋に落ちる予定でもあるの〜?」


「無いわよ、そんな簡単に相手が見つかるわけないでしょ」


エンジェルは小さく肩をすくめ、お茶をすすった。


その時、表で馬車が停まる音がした。キャサリンが誰だろうと窓の外を覗こうとした瞬間、扉が勢いよく開いた。


「サファイア先生!」


そこに立っていたのはアカデミーの教師、サファイアだった。腰に手を当ててキャサリンを睨みつける。


「キャサリン・グレイスウッド!」


「は、はいっ!」


「課題の提出は今日の九時までと言ったはず。何を暢気にお茶など飲んでいるのですか!」


「そ、それはその……」


まとめられた銀色の髪。メガネの下から覗く眼差しは、針のように鋭く冷たい。


「アタシが飲みたいって言ったのよ」


「エンジェル……」


「どっちみち調合に失敗したから、間に合わないんだけどね」


サファイアは目を丸くする。再びキャサリンに向き直ると説教を始めた。


「庇ってくれるんじゃなかったの~?」


そんなキャサリンの悲鳴は誰にも届いていなかった。

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