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ヒロイン志願ですけど、男同士の恋愛(ボーイズラブ)を応援しますわ!  作者: 石月 主計
第1話:想いは口にしないと伝わらないですわ!

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16.帰りはよいよい?

帰りは嘘のように何も起こらず、一行は順調に森を抜けようとしていた。


「そろそろ、あの石像が見えてくる頃だね」


「アンタがペチペチ触るから、大変な道中になったじゃない」


「逆だよ。なでなでしてあげたから、月影の記憶に導いてくれたんだよ」


ね、そう思うでしょ? と同意を求めたキャサリンが振り返ると、テオドールとエリオットの姿が消えていた。慌てて、二人は今来た道を引き返す。


その頃、エリオットは獣道の外れに向かって歩き出していた。テオドールが訝しげについていくと、大きな樹の下でふと腕を引かれる。抱き合いながら太い幹にもたれかかる形になった。


「ど、どうしたんだ?」


テオドールが慌てる。


「いや……ちゃんと言おうと思って」


そう言って、エリオットはテオドールの耳元に唇を寄せる。


「帰ったら、オレんとこ来てくれる?」


「……いいのか?」


「ああ。朝まで、ずっと一緒にいたい」


テオドールが頷こうとした時、後ろの草むらがガサガサ動いた。慌てて二人は体を離し、武器を構える。しかし、現れたのはキャサリンとエンジェルだった。


「……ったく、ノズルクまでもうすぐなんだから自重しなさい」


「フフフ、せっかちさんだね」


テオドールとエリオットは顔を赤らめる。そんな二人を見て、キャサリンとエンジェルはクスクスと笑った。



リベレストの集落にたどり着き、一行は井戸の周りで腰を下ろした。冷たい水が冒険で疲れた喉を潤してくれる。


キャサリンは月影の記憶を取り出し、まじまじと見つめる。


「本当に不思議なブローチだね」


太陽の光を受けても、満月の夜ほどは輝かない。まるで眠っているようだった。


「ちょっと貸して!」


と横からエンジェルが奪い取る。


「想いを届けてくれるブローチなら私だって……」


そう言って何かを念じる。どうせ、“推し”だろうと誰もが思っていた。


しかし、何も起こる気配はない。


「どういうこと!?」


エンジェルはキャサリンへ投げつけるように月影の記憶を返す。


「満月は終わったからね」


キャサリンは面白そうにニヤニヤと笑った。



「どうしたの? お父さん」


セレスティーナが遠くの空を見つめるマスターに声をかける。


「いや、何だか胸騒ぎがするんだ……」


「胸騒ぎ? 誰かが噂しているのかしら?」


「……あの魔法使いかもしれないな」


そう言って、マスターはブルッと体を震わせた。

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